「もう思い出したくない」屈辱12失点→変貌の強豪10番 目標は鹿島内定MF「僕もなりたい」

高川学園の10番・大森風牙【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
高川学園の10番・大森風牙【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

高川学園の3年FW大森風牙、「容赦なく突きつけられた」敗戦から完全復活

 7月26日から福島県で開催されているインターハイ男子サッカー。全国の予選を勝ち抜いた51校が真夏の王者の座を懸けて激闘を繰り広げるなか、躍動を見せながらも志半ばで散った“敗れし者たち”に光を当てる。

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 第3回は、大会1回戦で前橋育英に2点のリードを奪いながらも逆転を許し、2-3で敗れた高川学園の10番・FW大森風牙。昨年から背番号10を背負い、選手権では青森山田から2ゴールを奪う活躍で金星の立役者となった。今年はU-17日本高校選抜でも存在感を示したエースストライカーが、春の屈辱的な敗戦から這い上がろうとしていた。

「人生であんなに大敗をした経験はありませんでした」

 今年3月、兵庫県で行われた兵庫ユースサッカーフェスティバルでヴィッセル神戸U-18を相手に大量12失点。大会3日目で負傷者が重なり、交代要員がほとんどいない不利な状況だったとはいえ、プレミアリーグWEST優勝候補の神戸U-18に全く歯が立たなかった。

「もう正直思い出したくないくらいショックが大きかった試合でした。『プレミア(リーグWEST)のトップレベルと自分たちではここまで差があるのか』と容赦なく突きつけられました」

 試合後は茫然自失となった大森だったが、あの屈辱から這い上がることを誓った。

「選手権や日本高校選抜があって、今の自分のままではみんなとの差が広がるんじゃないかと。一番上を知り、かつ自分たちは底を見たからこそ、ここから強くなっていこうと思いました」

 しかし迎えたプリンスリーグ中国では、期待されたエースとしての輝きを発揮できなかった。ゴールから遠ざかり、動きにも精彩を欠いていた。第6節までにチームが14ゴールを挙げるなか、大森は無得点。その原因はゴール前の仕事だけでなく、ビルドアップや周囲のサポートに意識が分散してしまったことにあった。

「僕の持ち味は前線で身体を張るプレーとワンタッチゴール。それが高校選抜で『もっといろんなことをやらないと』と思いすぎてしまっていました」

 迷いを断ち切り、再び自分の武器を発揮することに専念した結果、第7節・瀬戸内戦で待望の今季初ゴール。続く第8節の米子北戦、第9節の立正大淞南戦でも連続得点を記録し、インターハイ出場校から3試合連続ゴール。完全復活を遂げた状態で福島に乗り込んだ。

高川学園の先輩から刺激「明確な目標が身近にいることは幸せ」

 迎えた前橋育英戦。大森は前線でボールを収めて展開し、自らゴール前に飛び込む持ち味を存分に発揮し、2ゴールを生み出した。

 前半で同点に追いつかれ、後半開始直後に逆転を許すも、その後も崩れず攻め続けた。結果は追いつけなかったが、大森が示した存在感はまさにエースのそれだった。

「神戸U-18戦以来、練習で上手くいかなくなったり、静かになってしまったりした時に、『ヴィッセルの選手たちはさらに練習をして強くなっているのに、俺たちはこのままでいいのか』と言えるようになったし、高い意識を持てるようになりました。今日も前橋育英を相手に『食ってやる』という気持ちで臨んだ。ギリギリまで苦しめたという手応えを感じる一方で、まだまだ僕らは甘いんだと痛感しました」

 選手権では勝ち切れたが、今回は勝ち切れなかった。その差を彼はこう分析する。

「青森山田戦は選手全員が『勝つ』という気持ちが強くて、それが1つになったし、勝つことに対して誰も疑いを持っていなかった。でも、今回は絶対に勝ちたいという選手が全員だったのかというと疑問が残ります。もちろん勝つ気がなかったわけではなく、局面で前橋育英にビビってしまっていたシーンがあったので、そこが勝負の分かれ目になったと思います」

 勝負は細部に宿る。春の大敗から這い上がったからこそ、敗戦から学べるものがあった。

「前橋育英は基礎技術が高かったし、みんなが同じアイデアを持っていて、連携面が凄まじかった。だからこそ僕らの武器は前からのプレスをきちんと仕掛けないと、ちょっとでも隙を見せたら、1個どころか2個、3個先まで運ばれてしまう。迷っている間に先に行かれてしまう。この敗戦を機に、個人としてもチームとしてもレベルアップしていきたいです」

 卒業後は大学進学を経てプロを目指す。今年、高川学園の前10番・林晴己(明治大)が鹿島アントラーズ入り内定を決めた。

「10番になった時から晴己くんを目標にしています。明確な目標が身近にいることは幸せだと思っていて、刺激をもらっているからこそ、もっと僕も成長して晴己くんのようになりたいと思っています」

 まだ這い上がる途中だ。冬に再び輝きを見せ、次のステージに進むために――大森はギラつく眼差しで福島の地から再出発を誓った。

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