公式戦0で「続けようと思ってなかった」 J注目DF陣と対峙…186cm隠れた逸材の転機

丸岡の浦野凌輔【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
丸岡の浦野凌輔【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

丸岡高3年FW浦野凌輔、中学時代は「公式戦がなくてもいいかなと」

 7月26日から福島県で開催されているインターハイ男子サッカー。全国の予選を勝ち抜いた51校が、真夏の王者の座を懸けて激しく火花を散らすなか、躍動を見せながらも志半ばで姿を消した“敗れし者たち”にフォーカスする。

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 第2回は、1回戦で優勝候補・大津高に先制しながら逆転を許し、1-4で敗れた福井県代表・丸岡高のスーパーサブ、FW浦野凌輔。186cmのサイズと圧倒的なスピードを誇りながら、スタメンの座を掴みきれていない彼のポテンシャルと課題とは――。

 出番は、1-3とリードを広げられた後半15分(35分ハーフ)に訪れた。ピッチサイドに立った背番号15の大柄な選手。浦野はピッチに投入されると、最前線へとポジションを取った。

 投入直後、彼をターゲットにしたロングボールが届く。迎え撃つのは、Jクラブが争奪戦を繰り広げる右SB・村上慶(180cm)、左利きCB・松野秀亮(185cm)、CB・今井獅温(189cm)という大津自慢の“ハイタワー”最終ラインだ。

 1本目のロングボールは松野に跳ね返されたが、浦野はその後も動き直しを繰り返し、ボールを収めようと奮闘。動き出しやボールへの反応の速さ、身体操作の滑らかさには見るべきものがあり、わずか20分ほどの出場でも、彼のポテンシャルは十分に感じ取れた。

 それでも、なぜスタメンではないのか。チームを率いて17年目の小阪康弘監督は、「まだFWとしてのメンタリティー、思い切って飛び込む推進力が足りない」と厳しく指摘する一方で、「持っている能力は確か。経験を積んでメンタル的にも強くなってくれたら」と、大きな期待も口にする。

「チームで一番大きくてスピードもあるのに、それを活かしきれていないのは自分でも感じています。ゴール前に飛び込む迫力が足りないし、スピードも出すタイミングが悪くてチャンスにつなげることができていない。選手権までに少しでも解消して、スタートから出てチームに貢献できるようになりたいです」

 課題を自覚する一方で、彼には経験の少なさという背景もある。大阪出身の浦野は、中学時代クラブチームに所属していたものの、JFA未登録のクラブだったため、公式戦には一度も出場していない。

「正直、当時は本気でサッカーを続けようとは思っていなかったので、公式戦がなくてもいいかなと思っていました」と口にしたように、年上の従兄弟が通っていたことがきっかけだった。

プロ注目のDFたちとマッチアップ「自分の課題は明白だった」

 高校進学も当初は大阪府内の一般校を予定していたが、クラブの指導者から「(OBが進学したことのある)丸岡高校でやってみてはどうか」と勧められたことが転機となった。

「ちょうどサッカーが楽しくなっていた時だったので、チャレンジしてみようかなと練習に参加しました。もしダメだったら、大阪のサッカー強豪ではない高校に進学しようと思っていました」

 その素材感に小阪監督は即決でゴーサイン。こうして繋がれた彼のサッカー人生は、ゆっくりと歯車が回り出した。

 1年時には福井国体選抜に選出されるなど頭角を現したが、実戦経験の乏しさからか、試合感覚や勝負強さに物足りなさが残った。それでも小阪監督は彼に継続してチャンスを与え、今年初めのニューバランスカップ in 時之栖(通称・裏選手権/高校選手権に出場できなかった全国の強豪校が集まって行う大会)でついにスタメンの座を掴み取った。

 しかし、ここからという3月に足を負傷して離脱。復帰後も先発には戻れないまま、インターハイを迎えた。

「本当に悔しい思いがあります」

 それでも彼は、人生初となる全国大会のピッチに立ち、プロ注目のDFたちとのマッチアップを経験した。

「トップレベルを相手に自分がどれだけやれるかを確認できる試合でした。20分間でしたが、やっぱり自分の課題は明白だった。これを機に選手権では絶対にスタメンとして出場をしてゴールを決めたいと強く思いました」

 大学進学を目指しており、サッカーを続けるかどうかはまだ迷っているという。ただし、アスレティックトレーナーになりたいという明確な目標があり、大学は強豪サッカー部のあるところへの進学を検討している。

 この素材感と身体能力を持つ選手はなかなかいない。個人的には、ぜひサッカーを続けてプロを目指してほしいと願うが、それもまた彼自身の選択だ。

「小阪監督をはじめ、こうして僕を評価してくださる人がいるのは嬉しいし、感謝の気持ちがあるので、しっかりと自分と向き合っていきたいと思います」

 どの道を選んでも、この全国大会で得た経験と気づきは、きっと彼の人生の大きな糧になる。冬にスケールアップした彼の姿を見ることが今から楽しみだ。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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