J1主力の電撃復帰も…J2の夏補強6選 注目の昇格争い、首位に加わった“ビッグピース”

イサカ・ゼイン、新井瑞希、翁長聖【写真:加治屋友輝、Noriko NAGANO、徳原隆元】
イサカ・ゼイン、新井瑞希、翁長聖【写真:加治屋友輝、Noriko NAGANO、徳原隆元】

長崎MF翁長聖はJ1の東京Vから加わった

 今シーズンのJ2も残り15試合、中断明けから夏場の戦いを経て、終盤戦に向かって行くが、注目したいのは7月7日から8月20日の追加登録期間を利用した選手補強だ。今回はここまでの移籍で、昇格戦線にインパクトをもたらしそうな6選手をピックアップした。

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○グスタボ・シルバ(ジュビロ磐田)

ジョン・ハッチンソン監督が“アタッキングフットボール”を掲げる磐田は現在2位の千葉と勝ち点3差の7位に付けている。チームのベースも固まってきている中で、左利きのCBヤン・ファンデンベルフ、タイ代表FWポラメート・アーウィライ、技巧的なMF井上潮音に加えて、ラストピースにもなりうるブラジル人アタッカーの獲得に成功した。ブラジルの名門コリンチャンスで活躍し、今年はヴィトーリアで主力を張っていた実績はJ1にも相応しいが、言い換えれば昇格に向けた磐田の覚悟を感じさせる。

 武器はドリブルで、サイドを切り裂くだけでなく、細かいターンで狭いところを割って行く技術もある。磐田はここまで3得点8アシストのジョルディ・クルークス、5得点2アシストの倍井謙という両翼が対戦相手の脅威になっているが、ハッチンソン監督はグスタボ加入が「良い競争をもたらしてくれる」と明言する。選手たちからは「グスタ」と呼ばれており、本人も気に入っている様子で、そのままニックネームになって行きそうだ。

○イサカ・ゼイン(ジェフ千葉)

 序盤戦に首位を快走していた千葉は、5月半から7試合勝ち無しという長いトンネルに入り、現在は好調の水戸ホーリーホックに首位を明け渡している。そして7月5日鳥栖戦で、これまで右サイドの主力を担ってきた田中和樹が負傷、全治8か月という長期離脱が伝えられた。そこから千葉は迅速に動き、同じJ2のモンテディオ山形から高速ウインガーを獲得。「自分の持っている力を120%出し続けていきます」とイサカ。昨年5得点7アシストを記録しており、推進力ある縦突破からの高速クロスは千葉の新たな武器になるはず。機を見たダイアゴナルランからのミドルシュートは、これまで千葉に足りなかったオプションだ。

○翁長聖(V・ファーレン長崎)

 長崎は前半戦でよもやの低迷。下平隆宏前監督との契約を解除した長崎は、代表取締役でもある高木琢也監督が就任後に3勝1分で、8位まで浮上してきた。サイドアタッカーの松澤海斗がベルギーのシント=トロイデンに、さらに両サイドでポリバレントな活躍を見せてきた増山朝陽がJ1のFC町田ゼルビアに移籍したが、東京ヴェルディから元長崎の翁長を獲得。J1で主力を担う選手のJ2移籍は衝撃的だが、かつて大宮と長崎で共に戦った、恩師の高木監督が率いる古巣に、6年ぶりに戻るというのは彼なりの強い思いがあるのだろう。ヴェルディと同じ、3-4-2-1の左ウイングバックにそのまま入る形で、高い機動力と正確なクロスを生かせる。前体制から課題となっている守備の強化も助けてくれるはずだ。

本気でJ1昇格を狙う補強

○山内日向汰(ベガルタ仙台)

 2年目の森山佳郎監督が、攻守に強度の高いチームを作り上げている現在3位の仙台に、攻撃の最後のところでアクセントや決め手になりうるタレントが加わった。川崎フロンターレのアカデミー育ちで、止めて蹴る技術に加えて、柔軟なドリブルで相手ディフェンスの間合いを外しながら、ラストパスやミドルシュートに持ち込むことができる。川崎の強化部だった庄子春男GMの説得もあったようだが、昇格の重要なピースとして期待は高まる。4-4-2をベースとする仙台にあって、本人はインサイドのポジションを希望しているようだが、サイドハーフで起用されたとしても、どんどん中央に顔を出すような仕掛けが見られるはず。山内の特長を最大限に生かすオプションとして、4-2-3-1を導入するプランも浮上してくる。

○ミカエル・ドカ(ヴァンフォーレ甲府)

 スタートダッシュに失敗し、一時は降格圏の手前まで落ちていた甲府だが、ここ5試合で2勝3分と波に乗ってきている。ブラジルの名門サントス出身のアタッカーはオーストラリアのAリーグで実績を積み上げ、アシスト能力が高く評価されている。右ウイングが本職だが、サイドバックもこなせるドカは右ウイングバックで構想されるかもしれない。大塚真司監督は3-4-2-1をメインに戦ってきたが、前節の大宮戦ではRB大宮アルディージャを相手に、マテウス・レイリアと内藤大和の2トップを採用して、1-0の勝利に繋げた。ドカの良質なクロスを生かしやすいシステムとも見られるだけに、中断明けの山形戦からドカの起用法とともに注目される。

○新井瑞希(水戸ホーリーホック)

 現在勝ち点7差で首位を独走する水戸が、まさに昇格のラストピースとしてJ1の横浜FCから完全移籍で獲得。これまでの傾向としては若い選手を育てて、J1やJ2の強豪クラブに送り出す側だったが、このチャンスに本気でJ1昇格を狙う覚悟が見える補強だ。浦和レッズのアカデミー出身で、ドリブルを得意とする新井はシャドーのポジションを得意とするが、東京ヴェルディ時代は左ウイングで起用されるケースが多く、右サイドで躍動することもあった。ソリッドな4-4-2がベースの水戸はエースの渡邉新太と大型FW寺沼星文の2トップが定着している。間違いなくビッグピースではあるが、前節の富山戦で2得点を決めた齋藤俊輔や6月に加入した加藤千尋など、サイドにも良質なタレントが揃うところに、新井をどう組み込んでいくか。森直樹監督も嬉しい悩みになりそうだ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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