16歳でプロ契約の逸材は「香川選手と似ている」 代表OBも唸った能力「僕にはなかった」

【専門家の目|高萩洋次郎】北原槙のプレーの魅力
サンフレッチェ広島やFC東京などで活躍した元日本代表MF高萩洋次郎氏が、16歳でプロ契約を結んだFC東京MF北原槙に期待を寄せた。自身も高校2年生の時にプロ契約を結ぶなど若くして頭角を現した“先輩”が、後輩のプレーの魅力を解説した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・井上信太郎)
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北原は16歳の誕生日を迎えた7月7日、FC東京とプロ契約を結んだ。16歳0日でのプロ契約は、スペイン1部レアル・ソシエダの日本代表MF久保建英(16歳4か月28日)を上回るクラブ史上最年少記録となる。3月1日のJ1リーグ第4節鹿島アントラーズ戦で15歳7か月22日でのJ1最年少出場記録でプロデビューを果たした逸材をどう見ているのか。
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「16歳というのを抜きにして、上手ですよね。見ていて思うのは、自分のペースでプレーできている。慌てないし、プレッシャーが来てもバタバタする感覚もないですし。普段通り落ち着いてゆっくりプレーできているのは、余裕がないとできないですから。J1のプレッシャーの速さや強度の中で、自分のペースで試合に入れるのはすごい。普通は相手が(プレスに)来ていないのに前を向けなかったり、ボールを下げちゃったりしますけど、今までやってきたことをどのカテゴリーでもできていることが一番すごいと思います」
北原は高い技術に裏打ちされた精度の高いパスやドリブルが武器のアタッカー。ポジションもトップ下やシャドーなどの攻撃的な位置だけでなく、ボランチでもプレーすることができる。現役時代の高萩氏と役割が重なる所がある。
「左右両足が使えて、遠くを見ることができて、あとはポジショニングを変えてボールを受けられますよね。若いうちだと言われたことだけやるというか、試合の中で自分のエリアから外れてボールを受けるのはダメなのかなとか、気を遣ったりしてしまう。普通にシャドーの位置からボランチの位置まで下りてきたりとか、サイドに開いてみたり、そういうのが自然にできている。しかもゴール前にも結構入っていって、シュート場面にも絡めているので、それは僕にはなかったですね。柔軟にポジショニングを取れていたり、試合の流れを読めているのかなと思いますね」
自身もサンフレッチェ広島ユースに所属していた2003年4月に、当時のJリーグ最年少となる16歳8か月3日でデビューを果たした。その年の11月には17歳でプロ契約を結び、クラブ史上初の高校生Jリーガーとなった。だがその後はなかなかレギュラーを獲得するには至らず、J2愛媛へのレンタル移籍などを経験した。
「自分はやっぱりプレッシャーみたいなのを大きく感じちゃっていましたね。そんなに感じなくてもいいはずなのに、雰囲気というか……。当時の映像を後から見て、こんなにスペースあったんだなとか思ったりしましたね。サイドバックで使ってもらった試合もあるんですけど、前向きでプレーできるから少し気は楽でしたよね。中盤でプレーするとなると、自分のペースでできなくて、相手を一人外したりというのはなかなかできなかったですね」
現在トップチームでは、5月10日のヴィッセル神戸戦を最後に出場機会は得られていない。7月7日に行われたプロ契約締結会見でも「慢心せずに努力をしていきたい」とスタートラインに立っただけと自覚している。後輩に今後期待することは。
「技術的なレベルもそうですし、あれだけの若さで、後ろにも前にも絡んでという選手はなかなかいない。柔軟にポジションを変える所は香川真司選手と似ている部分はありますよね。このまま、自分らしいプレーを続けていってほしいなと思います」

高萩洋次郎
高萩洋次郎(たかはぎ・ようじろう)/1986年8月2日生まれ、福島・いわき市出身。高校から広島ユースに入団。2003年4月のJ2湘南戦で、当時のJリーグ最年少記録となる16歳8か月3日で出場を果たした。同11月に17歳でプロ契約。2010年にナビスコ杯(現ルヴァン杯)でニューヒーロー賞を受賞。12年にはリーグ最多13アシストを記録し、広島の初優勝に貢献。ベストイレブンにも選ばれた。14年シーズン限りで広島退団後はウェスタン・シドニー・ワンダラーズ、FCソウルを経て、17年にFC東京に加入し、中心選手として活躍。その後は栃木SC、アルビレックス新潟シンガポールでプレーし、2025年1月に現役引退。日本代表では3試合に出場。