星稜10番の重み…言葉を詰まらせ「背負わないと」 1強→戦国の石川県「絶対に全国に」

星稜の10番を背負う丸山京佑(写真中央)【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】
星稜の10番を背負う丸山京佑(写真中央)【写真:FOOTBALL ZONE編集部 】

星稜の丸山京佑「これまでの先輩たちの思いにも応えられなかったのが不甲斐ない」

 星稜高と言えば、本田圭佑をはじめ、豊田陽平、鈴木大輔(ジェフユナイテッド千葉)、原田亘(柏レイソル)、鈴木大誠(奈良クラブ)ら多くのJリーガーや日本代表を輩出し、選手権優勝1回、準優勝1回、ベスト4が3回と全国屈指の強豪として君臨してきた。

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 しかし、近年は苦しい戦いを強いられている。石川県は能登半島の七尾市にある鵬学園がメキメキと頭角を現し、星稜のライバルになると、さらに2016年に星稜OBであり、元Jリーガーの北一真監督が就任した金沢学院大附属も一気に頭角を現したことで、石川県を勝ち抜くハードルが上がった。

 それでも黄色と緑の伝統のユニフォームは2020年度から2023年度にかけて4年連続で選手権に出場を果たしたが、そのうち3回は初戦敗退。昨年度はインターハイ、選手権ともに出場を逃した。巻き返しを誓って臨んだインターハイ予選。準決勝まで無失点で勝ち上がるが、決勝でライバル・金沢学院大附属の前に2-3で涙を飲むことになってしまった。

「前半の入りの悪さが全てでした。相手は自信を持って立ち上がりからパスサッカーをやってきて、自分たちのスタイルを貫いていたのに、僕らはずっと受け身になってしまって、ボールをつなぐところや前を向いて前進のパスを出す勇気が足りなかった」

 試合後、目を真っ赤にしながらこう口にしたのは、かつて本田が背負った10番を託されたMF丸山京佑。彼が口にした通り、立ち上がりからGKとDFラインでパスをつないで、そこからサイドやボランチ、インサイドハーフにボールを差し込んで、テンポよくボールを運んでいく金沢学院大附属に対し、星稜は翻弄されてしまった。

 それでもテンポが悪いなかで、「4-2-3-1」の左サイドハーフに入った丸山は、明らかに違いを出そうとしていた。彼の特徴はドリブルとパスの精度と、状況を的確に読み取って必要なプレーを選択できるインテリジェンスにある。チームの流れが悪いと見るや、積極的にボールを受けて、奪われないドリブルで周りの上がりを促したり、ラインブレイクを仕掛けて相手の守備陣形を崩したり、突破口を必死で見出そうとしていた。

 前半の最大のチャンスも彼のドリブル突破からのクロスから生まれ、これは相手GKのファインセーブに阻まれていた。0-2で迎えた44分には左サイドでボールを受けると、鮮やかなカットインを仕掛け、最後は「相手GKがファーに寄っているのが見えた」と右足でニアサイドに強烈な一撃を叩き込んだ。

 このゴールが反撃の狼煙となり、星稜は55分に同点に追いついた。だが、結果的には突き放されて2022年を最後に遠ざかっているインターハイの扉を開くことができず、涙を飲む形となった。

「前半の出来が後悔です。最初から自分たちのやるべきことを自信を持ってやり切れるか。これが相手との大きな差でした。こういった決勝の大舞台で自分たちのパフォーマンスを出せるか、出せないか。それを僕らの方ができないといけなかった」

 時折、言葉を詰まらせながら、必死で話そうとする姿に、伝統と10番を背負う重みを垣間見た。

「星稜として全国に出る。これは僕ら選手だけの目標ではなくて、スタッフだったり、保護者だったり、周りの人たちの強い思い。それを僕たちはきちんと背負わないといけない。これまでの先輩たちの思いにも応えられなかったのが不甲斐ない。特に10番は多くの偉大な選手たちがつけてきた番号で、結果を出してきた。きょうの試合はこれまで10番として積み上げてきたものが足りなかった。すぐに選手権予選が来ると思うので、夏の期間はもう一度自分にベクトルを向けて、見つめ直して絶対に全国に行けるようにしていきたいと思います」

 絶対に失ってはいけない星稜のプライド。もちろん伝統でサッカーをするわけではないが、丸山の目からは強い意志を感じ取ることができた。名門復活へ。奮闘する10番のこれからに注目をしていきたい。

(FOOTBALL ZONE編集部)

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