国内で起こる監督の審判批判 海外では厳しい処分も…Jリーグに必要な“明確スタンス”

スキッベ監督は「審判が罰を受けるべきだ」などと発言した
Jリーグは明確に説明すべきときが来ている。そして審判はもっときちんと判断を下していい。J1リーグ第11節、名古屋グランパス対サンフレッチェ広島の試合後、広島のミヒャエル・スキッベ監督は怒りを隠そうとしなかった。
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事の起こりは後半、カウンターで抜け出そうとした前田直輝を永井謙佑が止めた場面だった。足を滑らせた永井はそのまま手をかけて前田を止めた。前田は負傷退場を余儀なくされ、永井にはイエローカードが提示された。
スキッベ監督はスポーツチャンネル「DAZN」のフラッシュインタビューで「この審判ではほんとにいいサッカーやろうとしてもうまくいかない」「むしろこの状況の中で審判が罰を受けるべきだ」「ああいう審判のもとでプレーしなきゃいけない。こういう状況で勝ちにいかなきゃいけないっていう状況は非常に難しかった」と語っている。原語のドイツ語では「カタストロフ」という表現も使っている。
この監督の発言に対しての感想を聞かれた日本サッカー協会審判委員会の扇谷健司委員長は「フラッシュインタビューに関しては我々が関与するところではない」「日本のサッカーがどうよくなっていくか、いろんな話はしていかなければいけない」と明言を避けた。(※4月24日時点。その後、規律委員会はスキッベ監督に2試合のベンチ入り停止処分を決定した)
今、監督と審判に関する問題は2つある。まず、監督がここまで言っていることをどうJリーグが考えているかということだ。
スキッベ監督は明確に審判を否定している。しかもDAZNではこの発言もしっかり残されている。オフィシャルブロードキャストに残っているということは、Jリーグも審判に問題ありと考えていると言うことではないだろうか。
日本では監督からのこのような発言が放置されているということは、Jリーグはこの監督の意見に同意しているということだろう。だったら、レフェリングをどう改善すべきか、審判委員会ともっと密に連携を取るべきだ。そして何より、「監督の言うとおりだと思っている」と表明すべきことだろう。曖昧にしておいていい話ではない。
海外ではより厳しい処分も
もっとも、海外のいろいろなリーグやサッカー連盟では審判批判に対して厳しい処罰が下されている。たとえば現在、トルコのフェネルバフチェで指揮を執るジョゼ・モウリーニョ監督は、これまでイングランド、イタリア、そしてトルコで審判批判を繰り返してきた。そしてそれぞれのサッカー協会やサッカー連盟からたびたびベンチ入り禁止の処分を受けている。
また、選手に関しても国際大会の日本に関係することであれば、2015年アジアカップ・オーストラリア大会のパレスチナ戦後に本田圭佑が審判の判定について「バスケットボールのようだった」と語ったことで、アジアサッカー連盟から5000ドルの罰金を科せられている。
つまり、それぞれのサッカー協会や連盟は審判擁護の立場を取ってきたということだ。なぜなら元々サッカーでは、審判は「両チームから依頼されて、判断を任されている」という立場だからだ。
だが、日本ではこういう発言を放置し、そのまま時が過ぎ去ってみんなが忘れるのを待っているように見える。審判を擁護するにしても改善を促すにしても、どちらでもいいのがJリーグはこの問題から目を避けているように思える。世界のトップリーグ入りを目ざすのなら、見逃していい点ではないはずだ。
2番目は、審判はベンチからの抗議にもっと厳しくあっていいということだ。
J1リーグ第11節、湘南ベルマーレ対柏レイソルで、前半終了間際に柏が先制点を奪ったかに見えた。だがVARが介入し、得点の前に攻撃側のハンドがあったとして取り消された。そこからハーフタイムまでリカルド・ロドリゲス監督はずっと審判に抗議し続けた。VARが入り、何人もの目でビデオ判定が行われたが、監督は納得できなかったのだ。
ここでは直近の具体例を示すためにロドリゲス監督の名前を挙げたが、同じようなことは他の監督の場合でも度々起きている。そしてそのずっと続く抗議に対して、いつも審判はなだめるばかりだった。だが、もしもそこまで抗議が続くようだったら、毅然とイエローカードを出していいのではないか。
たとえばACLなどの国際大会では、判定に抗議して選手やスタッフがベンチから飛び出しても警告の対象になる可能性が高くなっている。まして主審が抗議を続けたらもっと厳しい処罰が下ってもおかしくない。執拗な抗議に対して主審が警告するのはルールどおりなのだから。だがそこで警告せず、流してしまうことがさらに抗議を生んでいるように思えてならない。この問題について「沈黙は金」だとは思えない。
(森雅史 / Masafumi Mori)

森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。




















