45キロを行ったり来たり…課題だらけのオペレーション ビッグイベントへ改善必至、サウジの大会運営

ACLEファイナルズ会場の1つとなったプリンス・アブドゥラー・アル・ファイサル・スタジアム【写真:Getty Images】
ACLEファイナルズ会場の1つとなったプリンス・アブドゥラー・アル・ファイサル・スタジアム【写真:Getty Images】

貧弱な交通インフラ

 AFCチャンピオンズリーグが大会のフォーマットを変え、AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)として実施された初回大会が終わった。準々決勝からの7試合はACLEファイナルズとして、サウジアラビア第2の都市ジェッダで集中開催。今後、2027年にAFCアジアカップ、2034年にFIFAワールドカップが行われるサウジアラビアの大会運営を現地で取材した記者が振り返った。(取材・文=江藤 高志/全3回の2回目)

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 ジェッダ市は南部にある旧市街地と、北部に建設された巨大な国際空港に挟まれたエリアが市街地として開けた都市だ。

 この都市の二つのスタジアムでACLエリート・ファイナルズの試合を実施した形。一つが、準々決勝の2試合と、準決勝、決勝を開催したキング・アブドゥラ・スポーツシティで、これは空港の北部にある。また、川崎と横浜FMの日本勢の準々決勝が行われたプリンス・アブドゥラー・アル・ファイサル・スタジアムは南部の旧市街地にほど近い場所に位置していた。

 横浜FMも川崎も準々決勝試合前日の会見は、プリンススタジアムで。その後、夕方からキングスタジアム内の練習場で公式練習を実施するというスケジュールを強いられた。この日程のため、横浜FMが準々決勝でアル・ナスルと対戦した4月26日は移動が大変だった。

 まず午前中にプリンススタジアムで川崎対アル・サッドの試合前日会見が行われ、夕方にキングスタジアムで、川崎の試合前日練習を冒頭15分のみ取材。その後、プリンススタジアムに移動して、横浜FMの準々決勝を取材するという日程を組まざるを得なかった。なお、横浜FMの試合についてはキックオフが現地時間の午後10時30分という時間で、試合開始と試合終了で日付が変わる変則日程だった。

 なお、キングとプリンスの両施設の距離はだいたい45kmほど離れており、直接移動するにはタクシーを使うしかなく、また交通渋滞も甚だしいため、移動に時間と費用とを使いつつストレスを溜め込まざるを得なかった。

オペレーション面で課題…ユーザー目線に立った運営を

 決勝を開催したキングスタジアム内にはビジターの各クラブのための練習場も用意されていたが、広大な敷地内をどう動くのが正解なのか、警備職員の誰も正確には把握していなかった。衛星写真で見ると近く見える施設ではあるのだが、実際には広大で、一つゲートを間違えるだけでかなりの距離を移動する必要があった。AFCからは案内のメールが届いていたが、その指示通りに動いたところ、結局無駄足を踏まされることとなった。このあたり、オペレーション面で課題があったと言わざるを得なかった。

 アジアのチャンピオンクラブを決める大会を開催するのだから、大会を取材するメディアに対しては大会にまつわる情報を一元管理するメディアセンターや、メディア向けのホテルを指定したり、市街地とスタジアムとを結ぶメディアバスなどの運行もあって良かったのではないかと思う。国際大会ではそれが当たり前に行われているからだ。今後サウジアラビアではサッカーに関わる主要な大会が連続して行われるのだから、もう少し取材者に対し、取材しやすい環境を整えてほしいと感じた。

 ちなみにメディアのアクレディテーションパスについては本人確認がない状態で配布されていて驚いた。通常こうした国際試合ではパスポートなどの公的な身分証と引き換えにメディアパスを受け取るものだが、今大会では取材パスの束の中から自ら探し出すよう、担当者から言われたとのこと。

 このくだり、伝聞になっているのは、先に入国した別の取材者に受け取りをお願いし、実際に受け取ってもらえたため。誰か知らない第三者が身分を偽り取材パスを受け取ったとしても、彼らの仕事ぶりを見るに、パスの再発行などの救済措置はかなり面倒だったのだろうと思いつつ、そうした事故が起きずに済んだことに対し胸をなでおろしているところだ。ちなみにメディアパスの受け渡しに指定されたホテルが市の中心街から南方に外れた場所にあり、非常に不便な場所にあったようだ。

 せめて空港や、キングかプリンスの両スタジアムにて配布するなりすれば良さそうなもので、そうしたユーザー目線に立たない大会運営は残念に思った。今後、ビッグイベントが続くだけに、今大会で出た反省を生かして、改善することを願うばかりだ。

(江藤高志 / Takashi Eto)



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江藤高志

えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。

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