英国出身の帰国子女…身長186センチの逸材大学生 動体視力を鍛えたテニスとの二刀流

筑波大学の入江倫平「最初はプロテニス選手になりたいと思っていました」
第3節を終了し、関東学生サッカーリーグを2勝1分の無敗で首位を走る筑波大学。その快進撃を最後尾で支えているのが186センチの3年生GK入江倫平だ。
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筑波大のGKと言えば浦和レッズ内定の4年生GK佐藤瑠星がおり、190センチのサイズとずば抜けた身体能力で大学サッカー界の屈指の存在として知られている。しかし、佐藤がシーズン開幕前に手を負傷して離脱をしたことで入江にチャンスが巡ってきた。
安定したキャッチングと正確なパントキックを駆使し、安定したゴールキーピングを見せている彼は筑波大にスポーツ推薦ではなく、AC入試(問題解決能力を身につけた、活発的な人を選抜する自己推薦型入試、入学希望する学群・学類に必要な学習適応性が評価される)を突破して入学してきた。
「前年に瑠星くんがスポーツ推薦で入っているのもあって、僕の代はGKを獲得しない代でした。ほかの大学の練習もいくつか参加したのですが、筑波大が一番選手の意識が高くて、スタッフと選手が協力してチームを高めようとしているところに感銘を受けたんです。ここに来たら絶対に成長できると思ったので試験を受けることにしました」
AC入試には問題解決能力に因んだ論文が必要。彼は「何本も自分でパントキックを蹴って、トスのタイミングや高さ、身体との距離だったり、振り足の起動やタイミングだったり、どういう動きをした時にどういうボールが蹴れるのかという研究論文を出しました」と明かす。
合格を勝ち取ってからも日々の練習で自己研鑽を続ける一方で、興味を持ったことを率先して学ぶなど、知的好奇心に満ちた学生生活送っている。
そもそも彼のキャリアには興味があった。それは神奈川の名門・桐蔭学園に中等部から入っていることだった。そのことに触れると、彼の持つインテリジェンスの真相が分かった。
「10歳まで海外にいて、小学校の高学年で日本に戻ってきた時にサッカーを続けるならどこかのJクラブの下部組織か、兄が進んだ家の近くにある桐蔭学園中で勉強もしながらサッカーもするかの2つの選択肢があったんです」
彼はイギリスで生まれ、4歳まで過ごした。一時帰国した後、8歳から10歳までシンガポールで過ごした帰国子女だ。もちろん英語はネイティブ。「桐蔭学園中には帰国生入試があったので、英語ができるアドバンテージを生かしつつ、受験勉強もしました」と入試に向けて準備を進めた。実は当時、彼はサッカーと並行して硬式テニスもやっていた。
「大会で優勝をしたりしたし、もともと最初はプロテニス選手になりたいと思っていました。憧れはロジャー・フェデラーで、小学校の時は『グランドスラムに出たい』とも口にしていました。でも、最終的に中学に上がる時にどちらかにしないといけないなと思った時に、シンプルに自分が楽しいと思う方を選びました。そこでテニスを選んでいたらサッカーはもうやっていなかったと思います。そこでサッカーに生きると決めました」
勉強とサッカーを両立する。そう決めた彼は桐蔭学園中を受験し、見事に合格を果たした。すると、桐蔭学園中、高校ではかつて町田ゼルビアでプレーした島崎恭平GKコーチとの出会いが彼を大きく成長させた。
テニスではパワーヒッタータイプだった彼は、テニスで鍛えられた動体視力の良さと、肩の強さ、腰の回転、そして腕のパワーを生かしたセービングのスキルが武器。島崎コーチはそこを磨きながら、基礎的な部分を丁寧に教え込むだけでなく、プロを目指すために必要なことを教えてくれたという。
「中学の頃は本気でプロサッカー選手を目指すということが、どのような犠牲を伴うのかを理解できていなかった。でも島崎コーチは厳しさやどれくらい人生をサッカーに捧げないとプロになれないのかを1から教えてくれた。技術だけではない大切なものを教わった」
高校3年時には神奈川県1部リーグを制し、チームをプリンスリーグ関東に昇格させるなど、歴史を作ってから筑波大に飛び込んできた。
「瑠星くんは彼よりいいGKを見たことがないくらい素晴らしい選手。でも、リスペクトの気持ちは持ちながらも、僕としてはあくまで対等な競争相手。お互いを高め合える存在だと思いますし、僕のスタンスとして試合に出ていようが出ていなかろうが変わらず、自分の将来のために今に全力を尽くすのみなので、試合に出られていることに安心することなく、1つずつ積み上げて、チームのために力を発揮できる存在になっていきたいです」
常に広い視野と問題解決に対する意欲、自分の将来を切り開くために必要な根気強さを携えている入江は、壮大に広がる未来に向かって、必要な努力をコツコツと積み重ねていく。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。




















