森保ジャパンで株上昇…J→渡欧27歳がエースへ名乗り 評価高騰した“日本の5人”【コラム】
2024年の森保ジャパンで評価を上げた選手5人をピックアップ
日本代表は11月シリーズでアウェー2連勝を飾り、2024年の戦いを終えた。1年間の成績は13勝1分2敗で、上々の結果と言える。2敗は言わずと知れたアジアカップのイラク戦とイラン戦。アジア王者を目指していたなかで、非常に残念な結果だったが、ここでの反省がアジア最終予選での躍進に生かされている側面もあるだろう。ここでは2024年に代表レベルで大きく評価を上げた選手5人をピックアップする。(文=河治良幸)
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■南野拓実(MF/FW:29歳)
リバプールからASモナコに移籍した当初は新天地での適応とコンディショニングに苦しみ、不完全燃焼に終わったカタール・ワールドカップ(W杯)のあと、しばらく代表から遠ざかっていた。しかし昨夏にザルツブルク時代の恩師であるアドルフ・ヒュッター監督が就任すると、主力として輝きを取り戻した。昨年10月に代表復帰。今年6月に3-4-2-1が導入されると、2シャドーの軸として最終予選は全試合スタメンで起用され、3得点を記録した。今年トータルでは7得点だが、守備の多様なタスクをこなし、攻撃でもオンオフで効果的なタスクを遂行。南野の存在なくして第2次森保ジャパンの安定ぶりは語れない。
■小川航基(FW:27歳)
アンダー代表から同世代のエースとして期待を背負ったストライカーはプロの世界で苦しみながらも、横浜FCでブレイク。オランダのNECナイメヘンで得点を重ねて、今年3月の北朝鮮戦で、2019年のE-1選手権から4年ぶりにA代表招集を受けた。E-1が国内組だけで参加、しかも東京五輪世代の選手がメインだったことを考えれば、復帰というよりは初めて“フル代表”に選ばれた格好だが、そこから着実に森保一監督からの評価を高めて、上田綺世がスタメン出場を続ける中でも、必ずと言っていいほど終盤に投入されて、結果で応えてきた。
特にアウェーの得点力は目を見張るものがあり、5試合で6ゴールを決めている。唯一、アウェーで得点のなかったインドネシア戦も鎌田大地の折り返しに合わせようとしたところを相手ディフェンスに触られた結果で、小川のゴールに等しい。直後の中国戦ではセットプレーと流れから2得点でMOMの活躍。完全アウェーの雰囲気は大好物という小川だが、来年3月のホーム2試合でもゴールを決めて、ただの“外弁慶”ではないことを証明したい。
■中村敬斗(MF/FW:24歳)
ガンバ大阪から若くしてオランダに渡り、ベルギー、オーストリア、フランスと環境を変えながら逞しさを増してきた。A代表に初招集されたのは第2次森保ジャパンの始動となった昨年3月の親善試合で、そこから短い時間でコンスタントに得点を記録して、代表定着につなげてきた。しかし、当時と今年で大きく違うのはチームでのタスクをしっかりとこなしながら、個のスペシャリティーを発揮できていることだ。
スタッド・ランスでも伊東純也とともに、主翼として結果を積み上げている。2次予選のラスト2試合となった6月シリーズは新たに導入された3-4-2-1の左ウイングバックとして新境地を開拓し、代表での位置付けを高めた感がある。“真打”とも言える三笘薫の復帰で、再び左サイドの2番手のような位置付けになったが、11月シリーズのアウェー中国戦ではスタメン起用に応えて、縦の突破だけでなく効果的なサイドチェンジから、伊東のクロスによる小川航基の追加点の起点になるなど、存在感を示している。1対1が多いポジションの性質的にも、クラブでの個の成長がそのまま代表に還元される向きもあるだけに、来年3月までにどう成長曲線を描けているか期待だ。
冨安&伊藤が不在の間に…ベルギーで飛躍の町田が守備の要として君臨
■町田浩樹(DF:27歳)
アカデミーから育った鹿島アントラーズを飛び出し、ベルギーのタフな環境で1対1の強さとメンタリティーを高めて、カタールW杯後の第2次森保ジャパンに定着していった。それでも当初は準主力的な位置付けだったが、森保監督が今年6月から3バックを本格的に導入したこと、また最終ラインの柱として期待される冨安健洋や町田と同じ左利きの伊藤洋輝が負傷により、最終予選で招集外が続く状況にあって、板倉滉とともに6試合すべてフル出場を果たし、6試合2失点という結果に導くなど、押しも押されもせぬバックラインの要となった感がある。
守備はもちろん、ビルドアップでもロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズの元同僚である三笘はもちろん、守田や鎌田大地をサポートして、得点の起点としても圧倒的な勝利を支えている。主力の多くが欧州で着実にステップアップを果たすなかで、町田はベルギー3シーズン目となっているが、その間にクラブの成績が上向き、現在はUEFAヨーロッパリーグも経験できている。11月の代表ウィーク前にはベルギーリーグで首位のゲンクに4-0で勝利する立役者に。ここから北中米W杯に向かっていく1年半のうちに、満を持して5大リーグにステップアップを果たすことができれば、冨安や伊藤が復帰してきても守備の要として君臨し続けられるかもしれない。
■守田英正(MF:29歳)
第1次森保ジャパンから中盤の主力を担っていたので、今年評価を高めた選手として取り上げることに異論があるかもしれない。ただ、存在感という基準では間違いなく昨年より上乗せされており、キャプテンの遠藤航と同等、戦術的には最も欠かせない選手の1人になってきている。森保監督は攻守の大枠をチームで共有しながら、ディテールは選手の個性や判断を尊重する傾向が強い。その中で、守田は周囲で組む選手の特長やマインドを見極めながら、生かし、生かされる関係を構築している。
ビルドアップで中心的な役割をこなしながら、最終予選ではアウェーのバーレーン戦で2ゴールを奪うなど効果的な攻め上がりからフィニッシュにも絡んでおり、3-4-2-1の攻撃に変化や厚みをもたらす存在として、幅広くチームを支える。守田がいることで、個性的なタレント揃いの2シャドーやウイングバックがオプションを増やしていける向きもあるだけに、ここから1年半で彼自身の成長もそうだが、カタールW杯のような怪我やコンディションの不安がなるべく、無事に本大会を迎えてほしいという願いもある。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。