2度の大怪我→契約満了…5年後は「想像してなかった」 他人事だったはずの美しい景色【インタビュー】
長崎の秋野央樹が新スタジアムに実感「これって当たり前のことじゃない」
V・ファーレン長崎の新スタジアム「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」のこけら落としに、不思議な気持ちで臨む選手がいた。主将を務めるMF秋野央樹は、長崎で6年目のシーズン。「その当時はあまり想像もしていなかった」と振り返った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全3回の1回目)
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10月6日に行われたJ2リーグ第34節、大分トリニータを新スタジアムに迎えての一戦。秋野はキャプテンマークを巻いて先発すると、後半4分に鋭い読みで相手のビルドアップをカットし、3点目のゴールをお膳立て。4-1での快勝に貢献した。1万9011人の観客が沸いた景色を、夢を見るような思いで見つめた。
「新しいスタジアムができるってことに関して、自分の中ではそこまで大きいことではなかったんです。ただ、ピッチを目の当たりにして、本当にこれはすごいことだなっていうのを実感して。これって当たり前のことじゃないし、本当にすごいなと」
長崎の威信をかけた大プロジェクトを、秋野がどこか他人事のような気持ちで見ていたのも無理はない。なぜなら、最初は2019年7月に期限付き移籍で長崎にやってきたからだ。さらには、2度の大怪我を経験し、昨オフには契約満了となった。しかし、トライアウトからの再契約を経てついにこの日を迎えた。
「5年後、まだ長崎にいるってことも、その当時はあまり想像もしていなかったですし。だから、こうやって自分のホームチームとして、プレーできていることに不思議な気持ちもあります。たくさんの人が動いてくれたおかげで、素晴らしいスタジアムができた。だから感謝の気持ちを本当に忘れてはいけない。
自分自身も今サッカーできていることに感謝しないといけない。2度の大怪我、手術を経験して契約満了もあって。ただ、こうやって再びピッチに立てて、長崎のユニフォームを着てプレーできていること、この素晴らしいスタジアムでサッカーできること、全てに感謝しないといけないなと改めて思いました」
かつてプレーした柏が本拠地とする三協フロンテア柏スタジアムは、ピッチと観客席との距離が近いことで有名だ。それと比較しても「あれ以上に近いですね。ゴール裏はそんなに変わらないかなと思ったんですけど、ピッチサイドはレイソルよりかなり近いなって感じました」と、断言するほどの臨場感だという。
「試合後にスタジアムの周りを回ってサポーターの皆さんに挨拶する時は本当に表情1つ1つ見えますし、声もたくさん聞こえるので、勝った時は本当に幸せな空間だと思います。逆に負けたらちょっと早く帰りたいなっていうようなスタジアムになると思うので、勝ち続けられるようにしたいなと思っています」
長崎はリーグ戦2試合を残して3位以内が確定。連勝での自動昇格を狙うが、プレーオフに回っても地の利を生かして戦うことができる。「2試合ともホームでできて、スタジアムでのアドバンテージはかなり大きいものがある。なんとしてもこのチャンスをものにしたい」。キャプテンが新スタジアムとともにJ1昇格へ導く。
[PROFILE]
秋野央樹(あきの・ひろき)/1994年10月8日生まれ、千葉県印西市出身。柏レイソル―湘南ベルマーレ―V・ファーレン長崎。柏のアカデミーで頭角を現し、年代別の日本代表でも活躍した。当時の絆は今も強く、同じくキャプテンを務める横浜F・マリノスのMF喜田拓也は「すごく刺激をもらっている存在」。