名古屋の堅実プランに屈した「覇気がない」指揮官の姿 「華麗さはないがすべての選手が及第点」【コラム】
【カメラマンの目】名古屋が守備をベースに横浜FMを掌握
ルヴァンカッププライムラウンド準決勝、10月9日の第1戦で名古屋グランパスはまさに長谷川健太監督の戦術の真骨頂と言える、手堅いサッカーで横浜F・マリノスから勝利を収めた。カップ戦における必勝法はアウェーでは引き分けで十分、そして多くのサポーターの声援の後押しが得られるホームで勝利するというのが定石だが、名古屋は敵地で見事に勝利を挙げた。
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このアウェー戦に挑んだ名古屋は、横浜FM自慢の攻撃陣をタイトなマークで自由を奪って沈黙させる、なによりも失点を避けるゲームプランだったように思う。
横浜FMの強力な攻撃陣を形勢するのは、言わずと知れたブラジル人トリオだが、今シーズンは昨年と比較して、エウベルのドリブル突破があまり見られない。対峙する相手守備陣を個人技で抜き去るのではなく、パスを選択することが多く、鋭い切れ味を誇ったプレーに少し陰りが見えている。
しかし、変わって逆サイドに張るヤン・マテウスが前線へとボールを運んでくる役割を果たしており、いまの横浜FMはこの背番号11が攻撃のキーマンとなっている。
このトリコロールの攻撃陣に対して、名古屋は三国ケネディエブスらの守備陣がマンツーマンのマークで対応する。アンデルソン・ロペスに西村拓真と横浜FMの前線の中央に位置する選手を抑え込む。ホームチームに圧倒的にボールを保持されながらも、しぶといマークでスコアに失点の数字を刻ませず、着実にゲームプランを遂行していく。
そして、訪れた得点のチャンスを確実にモノにする。名古屋は前半14分までにコーナーキック(CK)からあっさりと先制、そして追加点をゲット。守る人数はいるもののマークが甘い横浜FM守備陣を上手く掻い潜り、2発のヘッドでリードしたのだった。
横浜FMは2失点を喫してからようやく意地を見せる。前半31分にA・ロペスのゴールで1点を返して反撃ムードが高まると、チーム全体の動きも活発となる。名古屋の守備網を崩すパス攻撃にワンタッチプレーが増え、流れがスムーズになっていった。
それでも横浜FMは追加点を奪えず、さらに1点を奪われ1-3で敗れた。シーズンの中核を成すリーグ戦で本来の力を発揮できていない横浜FMだが、8月24日のJ1リーグ第28節、対セレッソ大阪戦を4-0で勝利し復調の兆しも見えたかに思えたが、さらなるジャンプアップはできず、逆に右肩下がりに調子を落としている。
横浜FMに欠けた集中力…第2戦はどうなる?
カップ戦は別物とはいえ、そうしたリーグ戦の不振が影響したように、横浜FMには試合の入り方に集中力を欠いた印象を受けた。
さらに前任者がチームを去ったことを受けて指揮を執る、ジョン・ハッチンソン監督の采配も見るべきものはあまりなかった。カメラのファインダーに捉えたテクニカルエリアに立つ指揮官の姿には覇気がなく、その弱気な姿勢が伝播するように、選手たちも自陣ゴール前での守備の鈍重な対応など、勝利への強い思いが感じられなかった。
対して名古屋は後半31分にも、山岸祐也がヘッドで横浜FMのゴールネットを揺らし、危なげない展開で勝利した。勝利のキーマンとなったのは3アシストを記録した徳元悠平だろう。
名古屋はJ1リーグ第33節を終えて9位と、横浜FMと同じく好成績を挙げられていない。もはやタイトル獲得のチャンスは、このルヴァンカップしか残されていない。それだけにカップ戦でのタイトル奪取に、シーズンを戦った証を見出そうとしているようだ。
守備に重点を置いた戦いぶりに華麗さはなかったが、すべての選手が及第点のプレーをして、勝利を奪取した名古屋。第1戦を見る限り、名古屋にとってはホームに返った第2戦でも、同じ戦い方が横浜FMには有効に思えるのだか、果たして決勝に進出するのはどちらのチームになるだろうか。
(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。