トルシエ氏が自ら「話をさせてほしい」 佐野海舟だけじゃない…森保Jのヤングスターの評価

インタビューに応じたフィリップ・トルシエ氏【写真:荒川祐史】
インタビューに応じたフィリップ・トルシエ氏【写真:荒川祐史】

トルシエ氏は藤田譲瑠チマや鈴木淳之介にも言及した

 2002年日韓ワールドカップ(W杯)で日本代表を率いたフィリップ・トルシエ氏が、FOOTBALL ZONEのインタビューに応じた。10月から11月まで来日し、森保一監督率いる日本代表の試合を視察。負傷者が多い中、チャンスを得た“新星”たちを高く評価した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部/全4回の2回目)

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 これまで世界各国で指揮してきたトルシエ氏も目を奪われた。11月14日に豊田スタジアムで行われたガーナ戦。森保監督は、10月14日のブラジル戦のスタメンとほぼ同じメンバーをスタメンに送り出した。前半16分、相手陣内でボールを奪った佐野海舟(マインツ)から南野拓実(ASモナコ)へと渡り、先制ゴールが生まれた。

「負傷者がいる中で一番の発見は佐野選手でした。(10月10日の)パラグアイ戦でも注目していましたが、ブラジル戦で再確認できた。遠藤選手、守田選手がいない中で、彼が見せた自信、確かな技術、そして縦への動き。その証がガーナ戦の南野選手のゴールへのアシストでした。とてもポリバレントな選手で、さすがだなと感じました」

 10月の代表活動では、これまで守備的MFの不動の存在だった遠藤航(リバプール)と守田英正(スポルティング)が不在だった。それでもパラグアイ戦では田中碧(リーズ)、ブラジル戦では鎌田大地(クリスタル・パレス)とコンビを組んで、能力を発揮。遠藤が復帰した11月のガーナ戦でもスタメンの座を掴んだ。

「まずボールの回収力が素晴らしくて、(10、11月で出場した)3試合を通じて見せた自信、そしてすぐに適応できる力がある。誰とでも組むことができるのはある程度の柔軟性、フレキシビリティの証だと思います。ただ本大会は遠藤と守田以外は考えてないと思うんです。今は他の選手を試している段階で、ヒエラルキーが変わるとは思えないが、オプションは重要になると思います」

 来年の北中米W杯は32チームから48チームに拡大して行われる。決勝までの試合数は1試合増えて8試合となり、ファーストセットだけでは勝ち抜けないからこそ、層の厚さがより重要になってくる。

「史上初の48チームとなり、私たちが体験したことがない長い大会。また移動も激しい。今まで全くなかった概念が必要になる。Aチーム、Bチームではなくて、Aチームが2つ、さらにBチームの3つチームを作らないと戦い抜けない大会になると思う。そういう意味では、日本代表の層の厚さは武器になると思います。あと鈴木淳之介選手は左利きでとってもしっかりしたプレーをしていた。まだ22歳と国際試合の経験が足りないが、町田浩樹選手や伊藤洋輝選手らがいない中で、彼はしっかりやってくれました」

佐藤龍之介から感じる強い野望

 さらに「新しいオプションの存在として話をさせてほしい」と自ら切り出したのが、23歳の藤田譲瑠チマ(ザンクト・パウリ)だ。11月のガーナ戦、ボリビア戦は共に途中出場だったが、成長を感じ取った。

「当時、彼が所属していた東京ヴェルディのユースが中国の大会に参戦した時、私は中国のクラブの監督だったので、彼を見る機会がありました。その時からすごい選手がいるなと思っていた。そして今回ガーナ戦で現れた瞬間、彼の特有のボールタッチ、存在感を含めて、すごいオーラを醸し出している選手だなと改めて感じました。彼の進化はもちろん海外に行ったことだと思います。これは私の持論ですが、日本という島国は快適で居心地がいい。海外組のどこが評価されるか。トップレベルのリーグでやることだけでなく、居心地のいい場所から出て、異文化でやることによって学び、免疫力を高められることにあると思う」

 そして、もう1人気になる存在として名前を挙げたのが、ファジアーノ岡山に所属する19歳の佐藤龍之介だ。ロサンゼルス五輪世代のアタッカーからは久保建英に似た個性を感じるという。

「岡山に所属している佐藤選手もすごく好印象を持ちました。彼はこれから伸びていくと思います。今はレンタルだが、所属クラブに戻った時にさらに進化すると思います。藤田選手も、佐藤選手も、現れた時に一つのボールタッチ、持っているその雰囲気で、他の人と違う何か持っていると、指導者としてはすぐに分かる。それは平たく言えば才能ではなくて、本当に強い個性。佐藤選手はオフェンシブなポリバレンスを持っていて、うまくスペースに入ったり、飛び出す才能があり、パスもできれば、ゴールも取ることができる。本当にマルチな才能があり、久保選手を少し連想させる。彼は国内組なのに、すべてを世界基準でとらえています。ものすごい向上心があり、彼の表情を見ると、決して今の自分のいる場所に満足していない。ものすごい強い野望を感じますね」

 そんな若い世代が台頭してきた森保ジャパンとは、トルシエ氏はベトナム代表を率いていた2024年アジアカップで対戦している。対戦相手としてどう見ていたのか、またトルシエ氏も日本代表監督時代に採用していた、森保ジャパンの“3バック”について分析してもらった。(第3回に続く)

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