町田GKの表情が消え…感じる非難の「圧」 押し寄せる中傷に選手の心境は【コラム】

谷晃生が優勝争いに向けて話した【写真:(C) FCMZ】
谷晃生が優勝争いに向けて話した【写真:(C) FCMZ】

谷晃生が取材に対応し広島戦からの立て直しについて語った

 10月1日、町田ゼルビアはトレーニングを再開した。9月28日に開催された第32節、首位決戦のサンフレッチェ広島戦で0-2の敗戦を喫した町田はヴィセル神戸にも抜かれ3位に転落している。

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 一時は首位を独走するかと思われていたチームが次第に調子を落とし、優勝戦線のライバルに敗れてついにACLE圏外となった。この現状を選手はどう捉えているのか。GK谷晃生は表情を変えることなく答えた。

「チームとしてライバルというのは多分周りが言っているだけで、僕たちとしては多分そんな意識はありません。サッカーをやる以上、勝敗はついてしまいます。別にそこに対しての思いはなくて、普通のリーグ戦の一敗だと思います。もちろん優勝争いという部分に関しては引き離されましたけど、ただ、まだ勝点3差なので、得失点差は除いて1試合で取り戻せる。なので、特にそんなに気負うことはないのかと思います」

 ただ、相手の広島には日本代表で正GKの座を争う大迫敬介がいた。個人的なライバル対決はどう感じたのだろうか。その点に触れられても谷は淡々と答えた。

「そうですね。サコ(大迫)も相変わらずいいコンディションでプレーしたと思いますし、僕自身もコンディション自体は悪くないです。失点はしましたけど、そこはチームとしてしっかり修正しながらやっていけたらいいと思います」

広島戦の2失点もしっかり分析【写真:(C) FCMZ】
広島戦の2失点もしっかり分析【写真:(C) FCMZ】

広島戦の結果は「そんなに落ち込むようなことじゃない」

 町田の2失点はともに低いクロスをニアサイドで合わせられた形だった。そこに弱点があると見極め、しっかりそれを実行に移し、勝負に生かした広島の作戦勝ちだったとも言える。

「どのチームにも弱点があって、ストロングがありますから。研究はもちろんしますし、それを自分たちが上回れなかったというのと、相手が一枚上手だったということだと思います。負けたからではないですけど、課題は明白になったと思いますし、これがまたチームのプラスになることだと思うので、しっかりそこも修正したいと思います」

 町田として対策はどうするのだろうか。

「正直、うちのやり方でやっていると、あそこはディフェンスとしては難しい部分ではあります。でもそこはチームとして今日のミーティングで修正はしました。そこの課題というものは、映像上ではしっかり修正が共有できたので、またピッチの中に入ってずれが出てきたらまた修正していく形になるのかと思います」

 選手は失望したり挫けかけたりしていないのか。そう聞かれると谷は少しだけ表情を緩めた。

「多分みんなが思っているのと、若干温度差あると思いますよ。優勝争いでライバルに負けてすごくチームが落ち込んでいるんじゃないかと思っていると思うんですけど、38試合のうちの1試合に負けたっていうことで考えています。もちろん痛いは痛いですけど、そこまでダメージを負うことじゃないので。残りの6試合勝つことに目を向けているので、過去を振り返ることは、もちろん課題を修正することは大事ですけど、そんなに落ち込むようなことじゃないとは思います」

 だが「外からいろいろな声が聞こえてこないか」という次の質問に谷の表情は消え、そして一瞬考えて慎重に言葉を選びながらこう答えた。

「それはわかんないです。みんなに聞いてください。僕はあまり感じないんで。感じないというか、目に入ってこないんで。はい」

 広島戦で一番大きな話題になったのは「タオル」だった。広島のウォーミングアップエリアの横に置かれていた町田の袋を広島の選手が開いて、中に入っていたタオルに水をかけていた。

 黒田剛監督が記者会見で質問に答える形でこの件に触れると、SNS上では町田が非難されることになり、ついに町田は「然るべき法的措置を取って参ります」と声明を出した。

 いつもしっかり質問に答える谷が口数少なくなるということで、逆に多くの「圧」が寄せられていることを察することができる。実際、SNSを見ていると町田に対しては何をしてもいいという風潮すら感じられる。

 はたして町田は様々な重圧を乗り越えて再び上昇できるのか。戦術的なブラッシュアップとともにチーム、ひいてはクラブの精神的なバックアップも必要となっている。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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