浦和、かつての主力復権の可能性!? 監督電撃交代で注目の5選手…予想される“序列の変化”【コラム】
関根貴大は次期キャプテンに指名されても不思議なし
浦和レッズは今シーズン12試合を残して、ペア=マティアス・ヘグモ監督との契約を解除し、昨シーズンのチームを率い、アジア制覇に貢献したマチェイ・スコルジャ監督が再任することを表明した。8月最後の試合となる国立競技場でのFC町田ゼルビア戦は池田伸康コーチが、暫定監督として指揮する。
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ヘグモ前監督は開幕当初4-3-3のシステムをベースにチームを構築してきたが、完成途上でなかなか結果が出ない状況で、徐々に可変的なスタイルを許容し、ここ数試合は4-2-3-1に変更して、課題とされる守備面の安定を図ってきていた。端的に言ってしまえば、昨年マチェイ監督が構築したチームとの親和性が強まっていたことも確かだ。
そうした事情を考えれば、おそらくマチェイ監督が再任してからも、雷雨で中断となった8月24日の第28節川崎フロンターレ戦の前半に見せた戦い方が、残り12試合で大きくは変わらないかもしれない。それでも注目されるのはヘグモ前監督からマチェイ監督に替わることで、選手の起用法や序列にどういった変化が出てくるか。ここでは“第2期マチェイ浦和”で起用法が注目される5人をピックアップする。
■小泉佳穂(MF/27歳/12試合0得点)
昨年マチェイ監督が主力として起用し続けた選手の1人。今シーズンも開幕4試合はスタメンで起用されたが、その後スタメンで出番を得たのは4月の第8節柏レイソル戦のみで、短い時間の出場とベンチ外を繰り返していた。
本人は攻守のデュエルや個の強度面を重視するヘグモ前監督の基準で、序列を上げられていないことを認めていた。しかし、マチェイ監督は選手を必ずしも、そうしたデータ面で線引きせずに、戦術的な役割をどうこなすかに目を向けて、評価するタイプの指揮官だ。前向きなプレーというのはヘグモ体制で学んだところも少なからずあるはずだが、連係連動を駆使する小泉らしさを発揮して、再び主力に食い込んでくる期待は大いにある。
■関根貴大(MF/29歳/10試合0得点)
昨シーズンはリーグ戦32試合に出場。左サイドハーフをメインに、2列目の3ポジションと右サイドバックで使われた。若い時は怖いもの知らずの仕掛け人として名を売ったが、インテリジェンスのある選手として、キャリアの成熟期に入ってきている。
ヘグモ前監督の下でも、ここ最近は固定的なウイングというより、ローテーションを入れながら多様な関わりが目に付いたが、マチェイ監督がサイドハーフに求める役割を上手くこなしながら、決定的なシーンにも関われるはず。前々節の鹿島アントラーズ戦ではGK西川周作を出場停止で欠くなか、キャプテンマークを巻いてチームを鼓舞した。マチェイ監督が次期キャプテンに指名しても、なんら不思議はない。
グスタフソンはダブルボランチにも適性あり
■中島翔哉(MF/30歳/16試合1得点)
昨年の7月に加入し、当時のマチェイ監督も「前線でオプションをたくさん増やしてくれる選手」として期待を寄せていたが、中島にコンディションの問題もあり、十分に行かせなかった。そんななかで、リーグ戦で唯一、スタメン起用した第33節アピスパ福岡戦は4-2-3-1のトップ下、すなわち“10番”のポジションで躍動。そして最終節の札幌戦は後半から同ポジションに入り、1トップのホセ・カンテを追い越す動きから前でボールを収めて、左足で見事なシュートを決めた。
ヘグモ前監督の下ではウイング起用も多かったが、改めてマチェイ監督に状態の良さを見せつければ、ゴールもアシストもできる、正真正銘の10番として輝きを増す期待がある。
■長沼洋一(MF/27歳/2試合0得点)
昨年までの浦和のポリバレントと言えば明本考浩(ルーベン)だったが、今年の夏に加入した長沼が、それに近い役割で、かなり重宝されていく可能性が高い。もちろん明本のようなガツガツした強さが長沼にある訳ではないが、長めの距離でスピードを発揮できて、高い位置でボールを持てば決定的な仕事もできる。
サイドバックはスペシャリストが石原広教、大畑歩夢、宇賀神友弥の3人しかいないので、誰かしらがポリバレントにカバーしていくことになる。渡邊凌磨、関根貴大、堀内陽太も可能だが、長沼は無理なくマチェイ監督の守備タスクをこなしながら、攻撃面でスペシャリティーを発揮できるだろう。
■サミュエル・グスタフソン(MF/29歳/20試合2得点)
ヘグモ前監督の就任とともに来日し、4-3-3の申し子的な存在として中盤のアンカーを任された。しかし、典型的な“6番タイプ”に見えて、実は8番の性能も備えている。スウェーデン代表では2ボランチの一角を担うことが多く、浦和が4-2-3-1にシフトした最近の数試合でも、伊藤敦樹(ヘント)が去った中盤で、相棒の安居海渡とバランスの取れたプレーを見せており、スコルジャ監督のチームでも十分に、中盤の主力を担えるはずだ。
ボール捌きと展開力に優れるだけでなく、タイミングを見た持ち上がりや飛び出しからのミドルシュートも備える。昨シーズンはなかなか実現できなかった、2ボランチによる“ダブル8番”のオーガナイズを構築するのは打ってつけのタレントとも言える。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。