前代未聞の行動…ベンチ前で監督が“服脱ぎ捨て” 浦和戦で判定に苛立ち、会場で起きた異変【コラム】
元ブラジル代表ジョルジーニョ、鹿島指揮官時代に見せた激情シーンを回想
8月17日に行われたJ1リーグ第27節・鹿島アントラーズ対浦和レッズの一戦は、0-0のスコアレスドローで決着がついた。だが、勝敗を決するゴールこそ記録されなかったものの、試合内容は終了のホイッスルが鳴るまで、両チームの選手たちが激しい闘志をぶつけ合う見応えのある90分だった。
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鹿島と浦和はJリーグ誕生にその名を連ねたオリジナル10であり、この両雄の対決はこれまで幾度も激しい戦いを繰り広げてきた。振り返れば12年前の2012年8月18日に埼玉スタジアムで行われた一戦も、両チームの選手と監督が勝利のために熱く燃え上がった試合だった。
浦和のスターティングメンバーは加藤順大、坪井慶介、永田充、槙野智章、平川忠亮、鈴木啓太、阿部勇樹、宇賀神友弥、柏木陽介、梅崎司、原口元気。
対する鹿島が先発メンバーとして送り出したのは曽ヶ端準、西大伍、岩政大樹、山村和也、新井場徹、柴崎岳、青木剛、ドゥトラ、レナト、興梠慎三、大迫勇也と両チームともにレベルの高い選手が揃っていた。
鹿島の指揮官はジョルジーニョ。説明するまでもないが、現役時代は世界屈指の右サイドバックと称され、ブラジル代表として名を馳せたクラッキ(名手)で、鹿島で4年間プレーし、この12年に監督として迎えられていた。
鹿島でのタイトル獲得に貢献したこのブラジル人には、指導者としての成功も期待された。だが、シーズンが始まってみるとチームは開幕から上昇気流に乗れず3連敗スタートとなる。それでもなんとか勝ち点を重ねて中位まで順位を上げ、上位の浦和との対戦に臨んだ。
試合は順位そのままに序盤は浦和が主導権を握る。浦和の圧倒的な攻撃力の前に、鹿島は守備を固めてカウンターから逆襲するスタイルで対応する。だが、前半26分に宇賀神、39分には原口にゴールを奪われ2失点を喫することになる。
それでも、ジョルジーニョは劣勢の展開をただ黙って見ていたわけではなかった。前半28分に大迫を交代させるなど、大胆な手を打っていき後半10分には岩政のヘッドで1点を返す。しかし、そこからスコアは動かず1-2で敗れることになる。
興奮のあまり…テクニカルエリアで激しく感情を爆発させる
浦和の勝利に終わった試合だが、内容は出されたイエローカードの数が物語っていた。警告を受けたのが鹿島は試合後の西を合わせて6人、浦和も3人と合計9枚のイエローカードが乱れ飛ぶタフな戦いだった。
鹿島は後半に入って持ち直したものの全般的に劣勢が続き、指揮官のジョルジーニョも終始、苛立ちを隠せないでいた。そのあからさまな浦和や審判団に向けられた好戦的な態度に、主審から自重するように促される場面もあった。
だが、その言葉にブラジル人監督は火に油が注がれたように、さらに感情を高ぶらせていく。思いどおりにいかない自らの指揮ぶりの不甲斐なさや、受け入れられない不利な判定への不満がない交ぜとなったジョルジーニョの感情はエスカレートし、試合終了が近づいたころには着ていたワイシャツを脱ぎ捨てるほど熱くなっていた。
これまでサッカーの試合を取材してきて、指揮官がテクニカルエリアで激しく感情を爆発させる姿は何度も見てきたが、興奮のあまり着ていた服を脱ぎ捨てる場面をライブで見たのは、あとにも先にもこの試合しかない。
ジョルジーニョにはヨーロッパの名門バイエルン・ミュンヘンでのプレー経験があり、世界のトップレベルの選手として見合った振る舞いがどういったものかを理解し、そしてどう行動するべきかを心得ている人物だと思っていた。決して激情型の人間ではないとも聞いていた。
しかし、やはり彼はサッカーという競技で負けることを徹底的に嫌い、勝利への情熱を激しく燃やす、サッカー大国を自負するブラジル人だった。
(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)