J1残留争いからの救世主候補5人…伊東純也が「良かった」、中村敬斗も「やっぱりうまい」と絶賛【コラム】
J1リーグ18位と降格圏に沈むジュビロ磐田を救うヒーローは誰か?
ジュビロ磐田は7月24日にヤマハスタジアムで行われたフランス1部スタッド・ランスとの親善試合で1-1と引き分けた。ボール保持率は伊東純也と中村敬斗を擁するランスが上回ったが、リーグ戦から大幅にスタメンを入れ替えた磐田は20本のシュートを記録するなど、健闘を見せた。
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これまで出番がなかった選手たちが、新外国人のMFジョルディ・クルークス、DFハッサン・ヒルとともに存在感を示し、躍動的なプレーで横内昭展監督にアピールしたことは再開後のリーグ戦に向けても有意義な試合になったと言える。泣いても笑ってもリーグ戦は残り14試合。現在J1の18位と降格圏に沈む磐田を救うヒーローは誰か。ランス戦の起用法とパフォーマンスを基準に5人をピックアップした。
■ジョルディ・クルークス(MF)
7月16日に加入した左利きのサイドアタッカー。すでに20日の京都サンガF.C.戦で、短い時間ながら磐田デビューを果たしているが、スタメン起用されたランス戦では右サイドから鋭い縦の仕掛けやカットインを繰り出し、セットプレーのキッカーとしても可能性を見せた。
伊東純也も「良かったと思います」と認める存在感で、改めて終盤戦のヒーローになり得る資質を証明した。インパクト十分のプレーもさることながら、クルークスは「一番の強みはプロフェッショナルなところ」と自負しており、そうした姿勢はオン、オフで効果をもたらしそうだ。
セレッソ大阪から移籍してきたクルークス。当時のチームメイトだったレオ・セアラが、現在16ゴールで得点ランキングの首位を走るが、ジャーメイン良が13得点で追いかけていることも認識しており「今3点差なので、絶対に力になりたい」と語る。特に右サイドから左足で上げる独特のクロスボールをオプションに組み込めれば、ジャーメインや現在6得点のマテウス・ペイショットの得点力をさらに引き出せるかもしれない。
■平川 怜(FW)
ランス戦はボランチを担い、高度な技術を中盤で発揮して、チャンスの起点になった。守備でも攻撃的MFのレダ・カドラを抑えながら、インサイドに入ってくる伊東純也のチェックなどでも奮闘した。U-17日本代表などで平川と共闘歴のある中村敬斗も「やっぱりうまいですよね。ボールの持ち方がいいし、ボランチの選手なので。なんか、ジュビロではウイングで出ていたイメージがあったので。絶対ウイングじゃないでしょって思ってました(笑)」と語る。
確かに前半戦は主に、左サイドハーフで攻守に奮闘してきたが、本来インサイドの選手であるのは誰もが知るところ。横内監督は磐田がボールの主導権を握る前提で、平川がインサイドに流れる形を想定していたはず。しかし、J1ではなかなかポゼッションが上がらず、守備のポジションも下がり目になるなかで、単純にサイドアタッカーの仕事が増えてしまっている。現在の磐田で特長を出すなら、まさにボランチが適任だろう。京都戦ではベンチ外だった平川だが、ランス戦の活躍が残りシーズンの起用法にプラスの影響をもたらすかもしれない。
来季加入内定、特別指定登録の角昂志郎は本格合流もあり得る
■角昂志郎(MF)
筑波大に在学中で、来シーズンからの加入が内定。特別指定登録されている気鋭のドリブラーはフランス1部の猛者を相手に、現時点でも十分に磐田の救世主になり得る能力を存分に披露した。西久保駿介のゴールをアシストしたパスも見事だったが、左に流れたジャーメイン良からボールを引き出すポジショニングも絶妙で、オフ・ザ・ボールでも違いを見せられることを証明するプレーだった。
1-1にされて迎えた後半アディショナルタイムに、左ワイドから中央に持ち込んで放った右足のシュートは相手GKの好セーブに阻まれて、この試合のヒーローにはなりきれなかった。しかし、特別指定選手である角に向けて、早期のチーム合流を待ち望む声も強まっている。天皇杯ではJ1首位のFC町田ゼルビアを相手に“ジャイアントキリング”を果たしたメンバーでもある角は「いつ呼ばれてもいいように、いつチャンスが巡ってきてもいい準備はしている」と語るだけに、今後の展開次第では残りシーズンの本格合流もあり得る。
■西久保駿介(DF)
7月30日に21歳の誕生日を迎える右サイドのスペシャリスト。ここまで6試合のスタメンを含むリーグ戦18試合に起用されているが、終盤戦の主力になるべくランス戦では途中出場ながら存在感を示した。同じ右サイドバックでスタメン起用された川﨑一輝や左の高畑奎汰の奮闘に触発された様子だ。
得意のオーバーラップで角昂志郎のラストパスを引き出し、鋭い切り返しから左足シュートを突き刺した。縦の突破からの右足クロスを得意とする西久保は「オプションが増えたのは大きい」と自信を強めた様子。三菱養和SCの先輩である中村敬斗とは6分間のマッチアップに終わったが、新たな刺激を得たはずだ。
■高畑奎汰(DF)
J2の大分トリニータから加入してきた23歳の左サイドバック。ここまでリーグ戦は途中出場の2試合のみだが、ランス戦では積極的なビルドアップと効果的な攻め上がり、そして左足のキックでサイドからチャンスを生み出した。クルークスの交代後は左足のキッカーも担った。
主に攻撃面が目に付く一方で、日本代表で長く主力を務めてきた伊東純也に、勇猛果敢に挑むかかる姿勢も。中断明けのアウェーアルビレックス新潟戦は松原后の出場停止が確定しているだけに、横内監督の信頼を高めてチャンスを掴めれば、終盤戦のヒーローになっていく期待は十分だ。
パリ五輪18人メンバーから落選、鈴木のさらなる奮起に期待
■鈴木海音(DF)
1対1に強く、前で相手の攻撃を潰すディフェンスで抜群の存在感を見せるセンターバックだ。目標にしてきたパリ五輪は18人の最終メンバーから外れてバックアップに。鈴木自身は大会前、大会中に何かあればすぐフランスに旅立つ心の準備はしながらも、今は目の前のリーグ戦に集中している。
「頭の中には入れなかったという思いがある。切り替えているというよりかは、その悔しさをずっと持ち続けて。これからも忘れることはないと思うし、その心を持ち続けて行きたい」と鈴木。アテネ五輪を逃しながら、その後、4度のワールドカップを経験したGK川島永嗣からも「もう目指すのは1つだけだな」と声をかけられて、A代表に目標を切り替えられたという鈴木は「もっと成長速度を上げていかないと、そこに食い込んで行けない」と自分に矢印を向ける。
東京五輪のブラジル代表だったDFリカルド・グラッサとのセンターバックコンビが定着しているが、個人の守備はもちろん、リーダーシップを高めて、磐田を支えることができるか。ドイツの名門バイエルン・ミュンヘンに移籍したDF伊藤洋輝にも刺激を受けており、将来的な海外挑戦も視野に入れる鈴木だが、さらにスケールアップするために、磐田でやるべきことはまだまだある。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。