ボランチは「専門職を使ったほうがいい」 日本代表OBが6月シリーズの森保采配に持論【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】板倉と鎌田のボランチ起用は攻守にスパイスも強豪相手には…
森保一監督率いる日本代表は、6月シリーズの北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選2試合で、ミャンマーとシリア相手にそれぞれ5-0の快勝を飾った。すでに最終予選進出を決めていたなかでの“消化試合”だったなか、指揮官はボランチで計7人の選手を起用。その采配について、日本代表OB栗原勇蔵氏に聞いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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森保監督は6月6日に行われた北中米W杯アジア2次予選第5節ミャンマー戦、3-4-2-1の布陣でスタート。ボランチにはMF旗手怜央とMF守田英正が起用され、後半開始から旗手に代わってMF川村拓夢、後半35分から守田に代わってDF板倉滉が投入された。
森保ジャパンでセンターバックの主力として起用されてきた板倉はボランチとして途中出場すると、後半アディショナルタイムには相手2人の間を狙った絶妙な縦パスを通し、FW小川航基のポストプレーからMF中村敬斗の見事なコントロールショットが生まれた。身長188センチの高さと強さを誇るのも板倉の特徴で、新たな可能性を感じさせた。
そして迎えた6月11日の第6節シリア戦、同じ3バックシステムを採用した日本はキャプテンのMF遠藤航とMF田中碧が先発出場。後半17分に遠藤に代わって鎌田、後半28分に田中に代わって川村が投入された。ミャンマー戦でシャドー起用された鎌田は、チーム4点目のPK奪取につなげたシーンでは“らしい”スルーパスでチャンスに関与してみせた。
森保ジャパンのボランチは、カタールW杯以降も遠藤、守田、田中が中心を担ってきた。そのなかで、板倉と鎌田をテストしたわけだが、今後も続けていくべきなのか。
日本代表OB栗原氏は、「今の日本のレベルからしたら2次予選全勝は当たり前と見られても仕方ない。層も厚いし、2次予選レベルだと選手たちは余裕があると思います」と前置きしたうえで、その起用意図について推察する。
「明らかに差がある相手には、鎌田はボランチで使ったほうが面白いかもしれない。シリア戦で相馬勇紀に通したようなパスを出せる選手は鎌田以外にあまりいない。板倉はより守りたいボランチとして、鎌田はより攻めたい、ポゼッションしたいという意図で使うと思います」
しかし、栗原氏はあくまで本職のボランチを起用していくべきだと持論を展開する。
「今の日本代表は誰かがずば抜けているというよりも、みんなレベルが高いので、組み合わせや対戦相手によって選手を使い分けるのはありかもしれない。ただ、個人的には、本当は専門職を使ったほうがいいと思います。遠藤、守田、田中は機動力があって連係力も高く、日本の良さを考えたら、機動力があるほうがいい。板倉は3バックでセンターをやって、1つポジションを上げてポゼッションするみたいな感覚かもしれないですけど、強豪国相手にはやらないはず。板倉が1人で守り切れるわけでもないし、鎌田がいても1人ですべてができるわけでもないので」
W杯への切符を懸けた戦いは、9月からアジア最終予選が始まる。栗原氏は「最終予選はレベルが高いチームが1つは入るので、2次予選とはやはり違います。新戦力を試すのは難しい」としたうえで、今後の森保監督の采配に注目していた。
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。