大岩Jはどんなチームか? コロナ禍、U-20W杯、欧州進出の遅れ…“不遇”パリ世代が挑む五輪切符【コラム】

“不遇”を味わってきたパリ世代【写真:徳原隆元】
“不遇”を味わってきたパリ世代【写真:徳原隆元】

中国戦からパリ五輪を懸けた戦いが始まる

 U-23日本代表は4月16日、U-23中国代表との一戦でパリ五輪を懸けた U-23アジアカップの戦いをスタートさせる。パリへの切符はわずかに3枚。4位になれば大陸間プレーオフに進むことになり、そこでの結果によって五輪に行くことができるが、険しき道であることは間違いないだろう。

 振り返れば、パリ世代の選手たちはほかの世代とは異なった不遇を受けてきた。特に大きかったのは、2019年末からの新型コロナウイルス感染症の流行である。世界を混沌とさせた感染症の影響で目標に掲げていたU-20ワールドカップ(W杯)が中止に。世界を経験する場であり、世界に自分たちをアピールする場としても重宝される大会への参加が許されなかった。

 貴重な大会に出場できなかったことは、少なからず選手たちに影響を与えることになった。例えば、1つ上の東京五輪世代はU-20W杯でのパフォーマンスにより、そこから半年で堂安律や冨安健洋が欧州へ。さらに1年後には板倉滉、中山雄太、三好康児、久保建英らも欧州へと渡ることになった。その背景の1つには国際舞台でのパフォーマンスが加味されており、U-20W杯の中止によって海外チームの目に留まる機会を失ったパリ世代にとっては、選手たちの欧州進出が遅れることの一因になったと言っていいだろう。

 それでも、そういった厳しい過去を乗り越え、着実にステップアップしてきたのもパリ世代である。数多くの海外遠征で経験を積み、その度にいろいろな課題と収穫を得ながら進んできた。その歩みが少しずつ結実し、選手個人がレベルアップを図ってきたことで、今では欧州へと旅立つ選手も出てくるようになってきた。

 ただ一方で、パリ五輪を直前としたタイミングで欧州に渡る選手も多く、今大会に多くの欧州組を呼ぶことができなかったことは難しいチーム事情を表しているのだが、それはある意味、厳しい現実を突きつけられても向上心を持って一歩一歩進んできた証拠だと言える。ひとつひとつの活動を大事にし、切磋琢磨してきた選手たちがいたからこそ今の状況が生まれているのだ。

 そして、今まで選ばれた86人の選手のうち、23人の選手がパリ五輪の出場権を懸けたピッチに立つことになる。欧州組として参加している最年長の一人である内野貴史は、強い思いを言葉に乗せた。

「(今回のメンバーは)以前からの活動を経て生き残ってきた人たちの集まりと言える反面、毎回落ちている人がいるという事実もある。ここまで一回でも参加してくれた人がいたからこそ、今のチームのクオリティーや積み上げてきたものがある。本当にそういう過程のところで携わってくれた選手の気持ち、ここに来たくても来られなかった選手の気持ちを踏みにじるような行動やプレーをしてはいけないと思っている。責任あるプレーをしないといけないなと。そういう意味では仲間のためにも頑張りたいという気持ちになっています」

 険しき道を歩んできた86人の思い。その思いを背負う23人は、不遇の時を乗り越え、目指してきたパリへの道を切り開こうとしている。

(林 遼平 / Ryohei Hayashi)



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林 遼平

はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。

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