久保建英の6月シリーズ招集は“必要なし” 疲労困憊で負傷…避けるべき本末転倒の事態【コラム】

コンディション不良が続くソシエダの久保建英【写真:ロイター】
コンディション不良が続くソシエダの久保建英【写真:ロイター】

久保は3月31日に負傷…12日ぶりに練習へ復帰した

 ラ・リーガ1部のレアル・ソシエダに所属する日本代表MF久保建英が、別メニューでの調整を余儀なくされていると、複数のスペインメディアが報じた。4月14日のアルメリア戦へ向けてソシエダは8日から全体練習をスタートさせたが、久保は11日までピッチに姿を現さなかった。そのなかでようやく12日に練習へ復帰したようだ。

 久保は3月31日のアラベス戦で先発したが、右太ももの裏に違和感を訴えて、先発した今シーズンのリーグ戦では最短となる44分間の出場で交代した。スペイン国王杯決勝が行われた関係で、今月第1週はラ・リーガ1部の日程が入っていなかったが、静養にあてられた期間をへても完全に状態が戻らなかった。

 ソシエダの地元紙「Noticias de Gipuzkoa」は11日に、タイトルに「久保に疲労の兆し」と打った記事を掲載。全体練習に参加できていない久保が、蓄積された疲労に蝕まれていると警鐘を鳴らした。

「久保建英の体は『もう十分だ』と言い始めている。イマノル・アルグアシル監督にとって重要なピースの日本人選手は、週末のアルメリア戦に間に合わせる目標を立てているが、疲労のためにパフォーマンスを落としている自分の体に耳を傾け、無理をしない決断を下すときが訪れたのかもしれない。いまだに全体練習への復帰を果たせないのも、リスクを冒さなくてもいい、という感覚を得るまでに時間がかかっているからだろう」

 強行出場すれば久保が右太ももの裏に抱えている違和感が、長期離脱を伴う大怪我につながりかねないと同メディアは指摘。最下位に沈むアルメリア戦は休養にあてるべきだ、という主張を展開したわけだ。

 久保は昨年10月の時点で、すでに右太ももの裏に張りを訴えていた。森保ジャパンの国際親善試合に招集されて帰国した久保は、大事を取ってカナダ代表戦を欠場し、異変を感じたらすぐに伝える、と首脳陣と申し合わせた上で先発したチュニジア代表戦では、自らダメ出しした後半37分にベンチへ下がっている。

 右太ももに異変を起こした理由は、攻撃をけん引するエースとして、ラ・リーガ1部に加えてソシエダとして10年ぶり、久保個人としては初めて挑むUEFAチャンピオンズリーグでもフル回転してきたからだ。

 チャンピオンズリーグではグループDを堂々の1位で通過。リーグアンの強豪、パリ・サンジェルマンに2戦合計1-4で敗れたラウンド16をもって、憧れ続けてきた世界最高峰の舞台への挑戦を終えた。

 同時に久保が刻んできた今シーズンの軌跡に異変が生じる。3月2日のセビージャ、同9日のグラナダとラ・リーガ1部を2戦続けてリザーブのままで終えた。同15日のカディス戦で先発に復帰するも、後半21分に交代していた久保は、北朝鮮代表との北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選で帰国した際にこんな言葉を残していた。

「正直、きつかった、というのはある。本当は全部出たかったけど、それが無理なくらいきつかった。コンディションがいいのかと言われたらよくないけど、(チャンピオンズリーグとの)連戦が終わったので、今回の代表活動が終わればまた週1試合のスケジュールに戻る。とりあえず乗り切れたかな、という感じです」

 それでも、一抹の不安を抱えていたからか。国立競技場で行われた3月21日の北朝鮮戦で久保はピッチに立たなかった。敵地・平壌で26日に予定されていたアウェー戦は二転三転した末に中止。予定を早めてソシエダへ戻った久保をイマノル監督らも歓迎したが、待っていたのはアラベス戦での途中交代だった。

 残り8試合となったラ・リーガ1部でソシエダは6位につけている。来シーズンのチャンピオンズリーグ出場権を巡る争いに焦点を絞れば、4位のアトレチコ・マドリードとの勝ち点差は9ポイント。5月26日の最終節で直接対決が組まれているなかで、4位でのフィニッシュが今シーズンの目標になってくる。

 ソシエダの日程を見れば、首位を独走するレアル・マドリード戦が今月27日に、2位のバルセロナ戦が5月12日にそれぞれ組まれている。勝ち点を落とせない状況にいるだけに、久保の力が必要とされる試合が必ず訪れる。その意味で前出の「Noticias de Gipuzkoa」も、最下位アルメリア戦の欠場を訴えたわけだ。

 加えて、アトレチコ・マドリードとの最終節から中2日の5月29日に、東京・国立競技場で東京ヴェルディとの国際親善試合を行うと今月10日に発表された。最終節を終えてすぐに日本へ飛び立ち、さらにもう1試合に臨む強行スケジュールを終えた後に、疲労困憊のソシエダの選手たちは初めてオフに入る。

消化試合になった6月シリーズで久保は招集すべきか?

 ただ、各国の代表チームに招集される選手たちは例外となる。6月の国際Aマッチデー期間が3日から11日までで設けられていて、森保ジャパンは6日に敵地でミャンマー代表と、11日にはエディオンピースウイング広島でシリア代表とのW杯アジア2次予選に臨む。ミャンマー戦の会場はおそらく首都ヤンゴンになる。

 結論から先に言えば、来たる6月シリーズに久保を招集する必要はまったくない。久保を含めて、ヨーロッパの長いシーズンを戦い終え、コンディションに不安を抱えている選手にはオフを優先させるべきだ。

 中止となった北朝鮮とのアウェー戦は、国際サッカー連盟(FIFA)の規律委員会によって没収試合となり、日本が3-0のスコアで不戦勝となる決定が下されている。この結果、日本は無傷の4連勝で勝ち点を12に伸ばし、2試合を残してグループBの2位以内を確定させ、9月に開幕するアジア最終予選進出を決めた。

 不戦勝を受けて、森保一監督は日本サッカー協会(JFA)を通じてこうコメントした。

「選手たちの大切な出場機会が失われたことに変わりありませんが、一つ前に進んだとポジティブに捉えている。この結果に満足することなく、6月の代表活動、最終予選、ワールドカップ本番へと力を積み上げていきたい」

 今後に待つ戦いの厳しさや重要性を考えれば、ただでさえ年間の活動日数が制限される代表チームにおいて、積み上げや継続といった作業は欠かせなくなる。それでも、消化試合になった6月シリーズに限れば、コンディションに不安を抱え、休養が必要とされる選手を無理に招集する必要性はまったく見当たらない。

 対照的に6月シリーズでも従来の主力選手起用やチーム内の序列にこだわり、状態を悪化させて怪我を負う、といった事態に見舞われればどうなるのか。ヨーロッパ組の場合は各所属クラブで臨む来たる新シーズンに、そして代表チームでは2024年のうちに6試合が予定されているアジア最終予選にマイナスの影響を及ぼす。

 本末転倒の事態を未然に防ぐ意味でも、森保監督は消化試合となった6月シリーズを有効かつ柔軟に活用すべきだ。それは、これまで招集されながらなかなかチャンスを得られなかった選手や、招集に値するパフォーマンスを演じながら縁がなかった選手を中心に、選手層や戦いの幅を広げる機会にすることにほかならない。

(藤江直人 / Fujie Naoto)



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藤江直人

ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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