北朝鮮ドタキャン騒動の処分は「二段階の決定」へ 元FIFA関係者「罰金処分もあるはず」【コラム】

北朝鮮に科される制裁を考察【写真:Getty Images】
北朝鮮に科される制裁を考察【写真:Getty Images】

FIFAから“試合中止”発表、今後は北朝鮮への制裁含む決定待ち

 日本代表の北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選のアウェー北朝鮮戦が突如中止となった。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務めた英国人記者マイケル・チャーチ氏が、FIFA(国際サッカー連盟)の今後の動向を探っている。

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 火曜日(3月26日)に予定されていた北朝鮮とのワールドカップ(W杯)予選が中止となった。森保ジャパンの選手たちは予定よりほぼ1週間早くクラブに戻っていったなか、2026年に向けた日本代表にはどのような展開が待っているのだろうか。

 サムライブルーの予選の行方が、チューリッヒの理事会で行われる規律委員会で決定されることを望んでいる人はいなかっただろう。だが、北朝鮮の土壇場での決定により、問題はそこに委ねられることになった。

 日本は2次予選開幕から3連勝でグループBの首位に立っている。火曜日に平壌で勝利を収め、9月から始まる次のラウンドへ進むことを確定させるはずだった。

 その代わりに、森保一監督と彼のチームはFIFAの規律委員会による話し合いの結果を待つ必要がある。だが、日本に勝利が与られるべきというが結論が出るのに、それほど長い時間は掛からないだろう。

 FIFAは「代替開催地が確定していないこと、また、この試合を延期するための日程に余裕がないことから、この予選の試合は行わず、日程も変更しないことを決定した」と声明を発表した。

 声明の文言は重要だ。FIFAは試合の開催や日程変更ができないと宣言したことで、不可抗力を理由に試合会場を別の場所に移すという北朝鮮の希望を退けた。

 FIFAの規則ではこのように述べられている。「参加加盟協会が辞退した場合、あるいは不可抗力によって試合の開催が不可能、または中止された場合、FIFAはその問題について独自の裁量によって決定し、必要と思われるあらゆる措置を取る」。

「不可抗力によって試合が開催されない、あるいは中止となった場合、その連盟と2つの加盟協会はFIFAが承認された決議に合意するものとする」

 つまりFIFAが不可抗力(異常気象や自身、その他の災害など誰にも制御できない出来事)であると認めた場合、試合の日程変更を許可する可能性があるということだ。

 しかし、北朝鮮は劇症型溶血性レンサ球菌感染症の懸念から不可抗力を適用しようとしたが、この試みはFIFAによって却下された。

 さらにFIFAの規定では、一度の国際マッチデーでは2試合までしか認められていない。北朝鮮は6月にミャンマー、シリアと対戦する予定で、ここに新たに日本との試合を組み込むことはできない。

 可能な日程がなく、北朝鮮から日本サッカー協会やその他の関係当局への連絡は非常に遅かったため、FIFAが彼らに何らかの処罰を与える可能性は高い。

 では、北朝鮮にはどのような運命が待っているのだろうか。

具体的な処分の流れをFIFAの元ディレクターが考察

 FIFAの規則によれば、予選が始まった後の試合延期に対しては、最低でも4万スイス・フラン(約675万円)の罰金が課せられる。また、FIFAとJFA(日本サッカー協会)に対し、すでに発生しているコストの補償が必要になる可能性もある。

 そこにはFIFAの関係者の平壌への渡航費用、JFAに対する飛行機やホテルのキャンセル代も含まれる可能性がある。

 理論的に、JFAは商業収入の損失に対する補償を求めることもできるだろう。

 FIFAの元ディレクターで、「The FC consultancy」のマネージング・ディレクターのジェームズ・キッチング氏はFOOTBALL ZONEに対して「おそらく二段階の決定になるだろう」と話した。

「試合の没収に関するスポーツ的な決定が下される可能性は高く、さらに北朝鮮に対しては今後の運営方法について何らかの警告が出される可能性があるでしょう。もちろん、罰金処分もあるはずだ」

「補償については、おそらくFIFA・W杯予選の事務局か、組織委員会が北朝鮮に対し、FIFAとJFAに支払う金額を命じることになる」

「いずれにせよ、スポーツ的制裁が下されることになり、それの決定はかなり早く決まると予想される。火曜日よりも前に決定するとは思わないが、予選の最後の2試合に向けて問題が解決されるよう、6月の試合までに決定することは間違いない」

 おそらくは日本に勝利が与えられることになるのだろう。そして、類似の事例であったように、おそらく3-0という扱いになる。日本は3試合しかプレーしていないにもかかわらず、勝ち点「12」を積み上げて、次のラウンドに進むことになる。

 どこか煮えきらない結末となるかもしれないが、W杯を目指す日本の進展が妨げられることはなさそうだ。

(マイケル・チャーチ/Michael Church)



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マイケル・チャーチ

アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。

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