伊東も三笘も冨安も不在 森保J、北朝鮮2連戦はアジアカップから何を改善するのか【コラム】
セットプレー対策、想定外の事態への対応力を磨く
森保一監督は3月14日、2026年の北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選・朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)戦の日本代表メンバー26人を発表した。
【PR】ABEMA de DAZN、明治安田J1リーグの試合を毎節2試合無料生中継!
今年1月、2月にカタールで開催されたアジアカップでは準々決勝のイランに敗れて大会を去ることになった。2023年の成績から考えると、調子を落としているように見える日本代表は、果たして情報が少ないこの相手とどう戦うのか。
森保監督はまずアジアカップでの敗退を「アジアカップでの成績においては私自身ふがいない思いですし、応援してくださったのに応えることができなかったっていうのは本当に申し訳ない感じもあります」とまず反省の弁を一言述べた。
そして、改善点としては「アジアカップだけではなく、過去に起こったことの成果と課題をしっかり改善していく」と、成果は未来につなげるとしつつ、「すべての部分をレベルアップしたい」と最初に言ったあと、具体例を挙げた。
監督がまず口にしたのは「セットプレー」。アジアカップではセットプレーからの失点が相次いだ。続いて、指摘したのが「オープンプレーの流れの中からのロングボール」。日本の対戦国はロングボールをどこに入れれば何が起きるのか研究してきていた。
監督が言う「セットプレーにしてもオープンプレーにしても、相手がシンプルにボールを入れてきた時どうやって守備の対処するのか、どうやって攻撃につなげていくのかは、もう一度チームとして確認していきたい」というのは、早急に解決すべき問題だ。5試合で8失点は過去出場したアジアカップの中でワーストの成績となる。その守備の改善は必須だろう。
また、森保監督はさらに深い部分の問題についても語った。それは相手が想定外のプレーをしてきたり、自分たちの構想が上手く機能しなかったりした時にどうするかという点に関わってくる。
「次の試合も(北朝鮮は)そうやって戦ってくる、構えて戦ってくるという両方できるチームなので、我々は相手がどちらで仕掛けてきても対応できるようにしたいと思います。そういう臨機応変さという部分でアジアカップは自分たちが想定していないことへの対処が上手くいかなかった部分があると思いますので、想定はしながらも想定外のことが起きた時にチームで解決していけるようにしたいと思います」
停滞したチームを再び上昇気流に乗せられるか
これは守田英正がイラン戦のあとに、「ピッチ外からアドバイスがほしかった。決め事が定まっていなかった」と語っていたことにも関係してくる。監督は不測の事態に「チームで解決していく」と答えたが、これまでは素早く対応できるようピッチの中の選手が自分たちで決断することを促していたが、少し変化を加えるということかもしれない。
そして、今回のメンバーで最も目を引くのは長友佑都の復帰だろう。W杯直前に欠けているピースを埋めるべくベテランを呼ぶというのではない。2次予選で精神的支柱になる選手を戻したというのは、アジアカップは敗退が決まったあとに冨安健洋が言っていた台詞と連動している。
「悪い時の日本が出て、それを変えようとする選手が何人いるかっていうところで、正直熱量を感じられなかったというか、物足りなさっていうのは感じました」
冨安は、カタールW杯の時にチームを引っ張っていた吉田麻也や長友の存在のことかと聞かれて「そういうことではないとは思います」と答えていたが、指揮官の目には全体のモチベーションを高められる人物が必要だと感じられたということで間違いなさそうだ。
もっとも今回の日本代表は、大きな武器である伊東純也も三笘薫も使えないという両翼をもがれた状態の戦いになる。さらに守備のリーダーである冨安もいない。相手は1年中同じチームで過ごし、クラブチームのようにコンビネーションを高めている。アウェー戦では5万人が声を揃えて日本にプレッシャーをかけてくる。
森保監督が言う改善点が上手く機能し、長友がチームを引き締めたとしても楽に勝てるとは限らない。アジアカップでイラン、イラクというアジアの中ではトップクラスのフィジカルを誇るチームと事前に対戦できているのは好材料だが、それでも苦戦は必至だろう。
停滞したチームを再び上昇気流に乗せることができるか。森保監督の手腕が問われる。
【アジアカップから外れたメンバー】
野澤大志ブランドン(FC東京)、冨安健洋(アーセナル)、中山雄太(ハダースフィールド)、三笘薫(ブライトン)、伊東純也(スタッド・ランス)、旗手怜央(セルティック)、細谷真大(柏)
【アジアカップで選ばれていなかったメンバー】
大迫敬介(広島)、長友佑都(FC東京)、橋岡大樹(ルートン・タウン)、相馬勇紀(カーザ・ピア)、小川航基(NECナイメヘン)、田中碧(デュッセルドルフ)、川村拓夢(広島)
(森雅史 / Masafumi Mori)
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。