日本の衝撃敗戦は「妥当」 英記者が危惧「鈴木彩艶のキック精度は水準に達していなかった」【コラム】

英記者が日本の“歴史的敗戦”に警鐘【写真:Getty Images】
英記者が日本の“歴史的敗戦”に警鐘【写真:Getty Images】

イラク戦から考える日本の修正すべき点とは…

 森保一監督の率いる日本代表は1月19日、アジアカップ・グループリーグ第2節のイラク戦でまさかの1-2で敗戦。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材中の英国人記者マイケル・チャーチ氏は、「妥当な結果だった」とパフォーマンスを踏まえたうえで日本の“歴史的敗戦”に警鐘を鳴らしている。

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 35年。日本がアジアカップのグループリーグで最後に黒星を喫してからこれだけの時間が経過した。これはJリーグの黎明期、そして日本がアジアで台頭し始めた時代をさらに遡ることになる。

 1988年12月、当時の日本は学生やアマチュア選手たちで構成され、開催国のカタールに0-3で敗れるなど1分3敗の成績で大会を終えた。日本でもほかの国でも、この敗戦が関心を集めるようなこともほとんどなかった。

 当時に日本代表や日本サッカーが置かれた状況は、現在のサムライブルーとは大きくかけ離れていた。1988年の日本戦の勝利が、エデュケーション・シティ・スタジアムでのイラク戦ほどファンから熱狂的に祝福されることはなかっただろう。

 しかし、今回のイラクの勝利は決して偶然ではない。ヘスス・カサス監督が率いたチームのパフォーマンスは勝点3に値するものだった。日本が敗れたのは、妥当な結果だったといえるかもしれない。

 キックオフのホイッスルが鳴った瞬間から、試合を支配する意欲と決意を見せたのは1チームだけだった。そして、それはブルーのユニフォームを着たチームではなかった。遠藤航と守田英正のペアはこの7か月間、絶対的な支配力を持った存在だったが、この試合では相手の中盤よりも劣っていた。

 前半5分のアイメン・フセインの先制点の後、遠藤も守田も試合のテンポを定めることも、基盤を固めることができなかった。アリ・ジャシムという攻撃のタレントも、日本代表にとって手に負えない存在だった。

 菅原由勢はまたしても相手のスピードと直線的にゴールに迫るプレーに悩まされていることを露呈した。初戦のベトナム戦でグエン・ディン・バックに苦しめられたことが金曜日にも再び起きてしまった。森保監督も懸念しているに違いない。

 しかし、それ以上に問題となっているのは鈴木彩艶の調子だ。森保監督は、ベトナム戦でも安定していたとはいえなかった若いGKを再び先発に起用する賭けに出た。彼の不安定さが守備の信頼に影響を及ぼし始めていることを心配しなければならなくなっている。

 イラクの先制点は鈴木に責任がある。また、彼の足元でのプレーも望ましいものではなく、特にロングレンジのキックの精度は求められる水準に達していなかった。守備陣では、谷口彰悟もフセインの2つのゴールの場面であまりに簡単にさせすぎてしまった。

日本には次戦以降の変化が必要

 インドネシアとのグループ最終戦だけでなく、その先のトーナメントのことを考えると、日本には変化が必要だ。

 後半開始から投入された冨安健洋は間違いなく守備を改善させた。しかし、その時点でイラクは深く守り、日本を誘い込んでからのカウンターを狙うことを決めていた。

 それによって遠藤と守田が中盤を支配することはできたが、イラクの守備をこじ開けるような策はほとんどなかった。伊東純也を左サイドへシフトさせたのは上手くいったが、強固で規律正しいイラクの守備を崩すには至らなかった。

 ここから、日本はどうすればいいのだろうか。まず多くの面で改善は必要だろう。冨安はディフェンスのレベルを引き上げなければならないし、左サイドには中山雄太を選択することも有効な一手だろう。菅原は立場が危うくなっているかもしれない。

 森保監督は田中碧をメンバーから外したことを後悔することになるかもしれない。フォルトゥナ・デュッセルドルフのMFは、これまで先発したどの選手よりもボールを速く動かすことができたはずだ。旗手怜央や佐野海舟にチャンスが回ってくる可能性もあるだろう。

 イラク戦の敗北はさらに大きな影響を与える可能性がある。日本がグループリーグで敗退することは考えにくいが、ありえないわけでもない。このままではグループ2位突破が現実的だ。

 そうなれば、日本はラウンド16で韓国と対戦する可能性がある。これは大会前には決勝で実現すると予想された試合だ。しかし、日本はまずそのステージにたどり着かなければならない。疑念が生じている今、確かなことなど何一つないのだ。

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マイケル・チャーチ

アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。

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