昌平を救った“兄弟”のゴール 1年生MF、兄のパスから同点弾「普通の得点より嬉しい」【高校選手権】

昌平が大津との接戦を制し、ベスト8へ【写真:徳原隆元】
昌平が大津との接戦を制し、ベスト8へ【写真:徳原隆元】

3回戦の大津(熊本)戦でPK勝ち、1年生のMF長璃喜がチーム危機救うゴール

 第102回全国高校サッカー選手権の3回戦が1月2日、首都圏4会場で8試合が行われ、ベスト8が出揃った。浦和駒場スタジアムでは東西プレミアリーグの強豪同士の決戦があり、東地区の昌平(埼玉)が西地区の大津(熊本)を2-2からのPK戦で下し、3大会ぶり3度目の8強に進んだ。4日の準々決勝で、今季のプレミアリーグ・ファイナルを制した青森山田(青森)と対戦する。

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 またしても1年生のMF長璃喜がチームの危機を救った。

 1点を追う後半31分から送り込まれると、その7分後に同点ゴールを蹴り込んだ。中央から持ち込んだFW鄭志錫のシュートが相手DFに当たり、MF長準喜がこぼれ球を拾った。弟は兄からヘッドで預かったボールを右足ダイレクトで振り切る。相手DFに当たってコースが変わり、ゴール左隅に同点ゴールが突き刺さった。

 奈良育英(奈良)との1回戦では、後半開始から出場して後半33分にチームの6点目を決め、2回戦ではアディショナルタイムに米子北(鳥取)かから起死回生の同点ヘッド。いずれも途中出場での3戦連発だ。

「兄とは小さい頃から一緒にボールを蹴ってきたので、あそこに出してくれると思っていました。パスが良かったのでダイレクトで狙いました。3試合連続ゴールは考えていなかったから、めちゃくちゃ嬉しいし、普通の得点より兄弟でのゴールなので一段と嬉しい」と笑顔を振りまいた。

 前半はいくらか昌平が優勢だったが同37分に失点。しかし終了直前、西嶋大翔と前田大樹の両MFが、ボールをつなぎながら中央突破し、ラストパスをエースFW小田晄平が左足で決めて追い付いた。

いい時間帯での同点弾だけに、ペースを握りたいところだったが、後半28分に勝ち越しゴールを許す。主将のセンターバック佐怒賀大門は、「うちの弱さですかね。こぼれ球への反応が遅くなり、ラインを引いてしまってボールに(強く当たりに)いけなかった」と反省した。

 長璃喜の土壇場の一撃で同点にし、2試合続けてPK戦に突入。昌平が先頭から最終キッカーまでが確実に沈めたのに対し、GK佐々木智太郎が大津の4人目を止め、2戦連続してプレミアリーグWESTの難敵を破った。

「ベスト8の壁を破って優勝したい」…狙うは“過去最高超え”

 これで3度目のベスト8進出。過去2回の準々決勝は青森山田と山梨学院(山梨)に屈した。当時はMF須藤直輝(ツエーゲン金沢)やMF荒井悠汰(FC東京)を擁したが、8強の壁を破れなかった。

当時と今年のチームの違いを聞かれた村松明人監督は、「あの時もいいチームでしたが、今年はここに渡せば(何とかしてくれる)というのがない。みんな技術は高いし、よく走ります」と述べ、特定の選手に依存することなく全員でゴールを目指し、ゴールを守るチームであることが誇らしそうだ。

昌平の下部組織である街クラブのFC LAVIDAは、2021年の高円宮杯第33回全日本U-15選手権決勝でサガン鳥栖U-15に完敗した。佐怒賀は警告累積で決勝に出られなかった。FC LAVIDAでも指揮を執った村松監督は「大門は全国大会で悔しい思いをしているし、チームとしてもベスト8超えは強く意識している」と初の4強を見据える。

佐怒賀は「中学の時の悔しさや先輩たちの悔しさ、(怪我で登録できなかった本来の主将・石川)穂高のためにもベスト8の壁を破って優勝したい」と力こぶを入れた。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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