Jリーグ審判員の世界的評価は? 元国際主審・家本氏が実感した”求められるもの”の違い「国内の方が苦労した」【見解】
【専門家の目|家本政明】日本人レフェリーの印象を元国際主審の家本氏が考察
Jリーグでは、数多くの審判員が活躍している。しかし、そのなかでもプロフェッショナルレフェリー(PR/審判員の活動によって主たる収入を得ている審判員)と呼ばれるのは主審が14名、副審4名と少数だ。今回は、元国際審判員・PRの家本政明氏に「日本人審判員の海外評価」について聞いた。(取材・構成=FOOTBALLZONE編集部・金子拳也)
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すでにカップ戦、リーグ戦の全日程を終えたJリーグでは、「2023Jリーグアウォーズ」の最優秀主審賞に中村太氏が選出。家本氏は中村氏のほかに荒木友輔氏、木村博之氏、飯田淳平氏の3人のレフェリーの名前を挙げ、特に安定したパフォーマンスを称賛している。
このうち3人(荒木氏、木村氏、飯田氏)は国際審判員も務めるベテランレフェリー。家本氏に日本の審判員の国際評価の変化を尋ねると「技術的な話で言うと、大きく立場は変わっていないと思います」と、印象を語った。
「とはいえ、僕がやっていた頃(2005年~2016年)以上に国際レフェリーは精神的、肉体的な強さが求められるようになりました。日本ではどちらかというと強さよりもソフトな対応、マネジメントが好まれますが、海外でそれは推奨されません。だから日本人の気質でもある協調性などは評価されにくい傾向にありますね。そのため、海外での評価は高まり切っていないのかなと感じています」
文化や価値観の違いを前提に挙げつつ、家本氏は現役時代の苦労も踏まえて日本人レフェリーの現状を考察する。
「僕は精神面に加え自己主張が強いレフェリーだったので、海外の方がやりやすかったですし、よく馴染んでいたと思います。正直、国内の方が苦労しました。今の日本の国際レフェリーは、全体的に“日本人らしい”と思います。逆に無理に強くあろうとする姿を海外でトライしていますね。レフェリングの幅は広がるからいいけど難しさはあるはずです」
それでも家本氏は、日本のレフェリーはアジアのなかではトップの位置だと太鼓判を押す。「基本的なパフォーマンススキル、判定基準、一貫性はアジアトップクラスです。ただ、ほかのアジア諸国のパフォーマンスがすごく高まっているのも事実。圧倒的な差がなくなってきていて、日本人の強みが薄まってきているように感じています」と、相対的な評価の変化を指摘した。
そうしたうえで「(国際レフェリー問わず)日本のレフェリーが若いうちから海外にいって経験を積み、それを国内に還元する仕組みができれば、日本のレフェリーは選手同様、必ず世界のトップの地位を掴み取ることができますし、間違いなく日本サッカーの発展につながります」と、交際的な交流によって日本のレフェリングにおける進化の可能性も探っていた。
(FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko)
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。