西川周作が「地獄でした」と語った“1つ勝ったらレアル”の失敗 初戦突破で克服した6年前のトラウマ【現地発】

浦和の西川周作【写真:Getty Images】
浦和の西川周作【写真:Getty Images】

2017年のクラブW杯出場時に騒がれた初戦勝利後の対戦相手

 浦和レッズはサウジアラビアで開催されているクラブ・ワールドカップ(W杯)の初戦(12月15日)でクラブ・レオン(メキシコ)を1-0で下し、欧州王者マンチェスター・シティ(イングランド)との準決勝(19日)に臨むことが決まった。これはGK西川周作曰く「地獄でしたね」という6年前のトラウマを克服するようなものになった。

 現行方式のクラブW杯は、欧州代表と南米代表が4強から登場する。2017年の同大会に臨んだ浦和はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝戦を11月に勝利し、12月の大会に勇躍乗り込んだ。事前の組み合わせ抽選会で、浦和の初戦はオセアニアと開催国アラブ首長国連邦(UAE)代表の勝者であり、勝ち上がると準決勝で当時ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドが大エースとして君臨していたスペインの強豪レアル・マドリードと対戦するカードになっていた。

 日本勢がACLを優勝したのが久しぶりだったし、日本開催ではないクラブW杯にJリーグのクラブが出場するのも初めてだった。そのうえで、組み合わせ表を見て「1つ勝ったらレアル」と、さまざまなところで騒がれた。

 しかし、開催国代表アルジャジーラと対戦した初戦に浦和は0-1で敗れる。大会前の国内リーグで何度もあった、ボールを持つものの崩しの精度と決定力を欠き、コロッと1つのピンチで失点する負けパターンだった。その結果、レアルとの対戦は実現することなく、当時は存在した5位決定戦に回ることになった。それまでの数日間、メイン会場のある首都アブダビからの”引っ越し”も余儀なくされた。

 その当時を知るのが、西川とFW興梠慎三の2人だ。興梠は「自分自身は初戦からそう簡単に勝てる相手じゃないなと思っていたので、それが負けたというのは自分たちの実力だった」と話した。一方で、西川は「地獄でしたね。あの時は場所も変わってアル・アインに飛ばされたし、遠いところに行ってモチベーションも難しい感じの大会になってしまいました」と話す。

6年前の経験を踏まえて…クラブ・レオン戦の勝利にあった意義

 だからこそ、このクラブ・レオンを相手にした試合の勝利は、どこかトラウマを克服したような感もあった。今大会は選手やスタッフだけでなくサポーターも含め、やや過剰なほどに準決勝を意識しないようにしている空気感がチームを包んでいた。「1つ勝ったら、シティ」という言葉がNGワードのように扱われてきたが、そこから解放された今、西川は6年前の経験を踏まえてこう話している。

「いやあ、学びましたね。17年は本当に、目の前のアルジャジーラではなくて、みんなの意識が次に行っていた部分もありました。でも、今回はその経験も踏まえて、自分もそうですし、経験のある(酒井)宏樹なんかもそうですけど、目の前のクラブ・レオンにとにかく集中できるように、宏樹の声掛けでピッチで選手ミーティングをして、とにかく昨日の試合だけに集中しようと話していました。そこでみんなが同じ方向を向けたと思いますし、こっちに入ってから非常にいい緊張感でみんな練習をやっていたと思います」

 実際に17年大会も取材した経験からは、この大会はあくまでも準決勝からが本番であって、その前のアジア、北中米カリブ海、アフリカ、オセアニア、開催国の各代表による対戦は本戦の中の予選のように扱われる。それは、試合に対する運営の部分や記者会見の有無、海外の大手通信社が取材するかどうかなど、さまざまなところで感じさせられる。浦和の5位決定戦は、南米代表グレミオ(ブラジル)が登場する準決勝の”前座”で行われ、世界的にも名の知れたメディアの記者は浦和の試合が終わる頃、ようやくスタジアムにやってきた。その理由を「たいして興味深くもない試合だから」とハッキリ言われた。

 その意味でも、今大会で浦和はようやく真の戦いを始めることができるという言い方もできるだろう。シティとの準決勝に、プレッシャーから解放され伸び伸びとチャレンジャーとして臨むチームの姿が期待される。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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