Jリーグ最多出場GKの「印象に残った対戦相手」 パワーやタイミング…「非常に厄介」だった4人とは?【インタビュー】

プロ26年、南雄太は数々の攻撃的選手と対峙してきた【写真:(C)1998 N.O.ARDIJA】
プロ26年、南雄太は数々の攻撃的選手と対峙してきた【写真:(C)1998 N.O.ARDIJA】

現役引退の南雄太はブラジル人助っ人のフッキとエメルソンに脱帽

 今季限りで現役引退を表明したJ2大宮アルディージャのGK南雄太。26年のキャリアでJリーグ通算666試合に出場し、数えきれないほどのシュートを受けてきた。そんな経験豊富な守護神に対戦相手として印象に残っている選手を聞くと、Jリーグの歴史に名を刻むブラジル人助っ人や日本代表としても活躍したサイドアタッカーらの名前を挙げた。(取材・文=石川遼)

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 南は1998年に静岡の名門・静岡学園高から柏レイソルに加入し、高卒1年目から出場機会を手にした。1999年にはU-20日本代表でワールドユース(現U-20ワールドカップ)準優勝も経験している“黄金世代”の1人で、ロアッソ熊本、横浜FC、そして大宮と計4クラブを渡り歩いた。J1で266試合、そしてJ2で400試合に出場した。

 長いキャリアでたくさんのシュートを受けたなかで印象に残っている対戦相手を尋ねると、南は真っ先に2人のブラジル人選手の名前を口にした。

「フッキはすごかったですね。あとはエメルソン。彼ら2人は試合中でも『シュートが速い!』と感じました。そう感じる選手って実はなかなかいなかったんです。もちろん速いシュートを打てる選手はほかにもたくさんいましたけど、『これは取れない』と思うシュートを打つのはこの2人ですね」

 フッキはコンサドーレ札幌や東京ヴェルディ、川崎フロンターレでプレーし、その後に欧州に渡ってブラジル代表にまで名を上げた。“超人ハルク(Hulk)”に由来する愛称を持つことから分かるように強靭なフィジカルを武器とし、左足から放たれる弾丸のようなシュートは日本のサッカーファンに強烈なインパクトを残した。

 エメルソンは札幌と川崎で実績を積み、2001年に移籍した浦和レッズではMVP(03年)と得点王(04年)を獲得するなど、フッキ同様にJリーグの舞台で異彩を放った。身長は170センチそこそこと小柄だが、パンチの効いたシュートでゴールを脅かした。

 南は「キーパーの逆を取ってくる選手ももちろんすごいなと思いますけど、彼らのシュートはそういうことはお構いなしに“ぶち抜く”というイメージ。そういうシュートを決められた時の衝撃は大きかったです」と2人のパワーシューターとの対戦を振り返った。

大宮の泉澤仁(左)とG大阪の宇佐美貴史【写真:Getty Images & 徳原隆元】
大宮の泉澤仁(左)とG大阪の宇佐美貴史【写真:Getty Images & 徳原隆元】

現役JリーガーではG大阪FW宇佐美と大宮で共闘したMF泉澤を選出

 続いて南が挙げたのはガンバ大阪のFW宇佐美貴史だ。左サイドから中央に切れ込み、右足の正確なシュートを打ち分ける宇佐美はフッキやエメルソンとはタイプが異なり、「ゴールキーパーが嫌なところ知ってる選手」だという。

「実際に話したことはないのでどこまで考えているのかは分からないですけど、彼は事前にキーパーの動きをよく見て、タイミングを外してシュートを打ってきます。蹴り方に特徴があるんです。言葉で説明するのは難しいですが、おそらく彼は軸足を(ボールの)奥に置いて、手前で当てているんですよね。普通のタイミングに比べる1つ手前でインパクトしている感覚で、GKからするとシュートに対するプレジャンプのタイミングをずらされるんです。それを意図的にやってるのか分からないですが、シュートを受けている身としては何度も感じています」

 そして、宇佐美と同じようにGKのタイミングを外す技術に長けていると南が太鼓判を押したのが、大宮の同僚MF泉澤仁だ。細かなステップのドリブルが持ち味の泉澤が独特のリズムから放つシュートはGKにとっては脅威なのだという。

「GKのタイミングを外すという意味では、泉澤もかなり上手いです。彼は走っているステップの中から、突然パンッと蹴ってくるんです。普通は軸足を置くところからトーン、トンというリズムでシュートが飛んでくるんですけど、彼の場合は走ってる中からトトンのリズムでいきなりシュートを蹴ってくる感覚。細かな部分ですけど、そういう選手はGKからすると非常に厄介なんです」

 歴戦の名プレーヤーたちとゴールマウスで対峙してきた南。プロ選手でも驚くレベルのパワーを持つフッキとエメルソン、そしてテクニックに優れた宇佐美と泉澤のシュート技術に一目置いていたようだ。

[プロフィール]
南雄太(みなみ・ゆうた)/1979年9月30日生まれ、神奈川県出身。静岡学園高―柏―熊本―横浜FC―大宮。J1通算266試合、J2通算400試合。安定感のあるセービングと的確なコーチングで守備を引き締めた“黄金世代”の守護神。Jリーグ通算666試合出場はGKのリーグ最多出場記録を誇る。プロ26年、今季限りでの現役引退を表明した。

(石川 遼 / Ryo Ishikawa)



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