【月間表彰】見事な連係が生んだ圧巻シュート 新潟・三戸舜介がゴール前で見せた冷静さ

G大阪戦で同点ゴールを決めた三戸舜介【写真:(C) ALBIREX NIIGATA】
G大阪戦で同点ゴールを決めた三戸舜介【写真:(C) ALBIREX NIIGATA】

2度目の月間ベストゴールは9月17日・ガンバ大阪戦の技ありゴール

 Jリーグでは今季も全得点を対象に「明治安田生命J1リーグ KONAMI 月間ベストゴール」を選出している。スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」の連動企画として、「FOOTBALL ZONE」では毎月、スーパーゴールを生んだ受賞者のインタビューをお届けしている。9月度の月間ベストゴールに選ばれたのは、アルビレックス新潟のMF三戸舜介が9月17日の第27節・ガンバ大阪戦の後半38分に決めた冷静な判断が冴えた股抜きゴールだ。今季2度目の受賞となった一発は、絶妙なチームプレーから生まれた。(文=藤井雅彦)

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 思い切りの良さと強烈なミドルシュートの次は、冷静な判断とテクニカルな股抜きドリブルからのビューティフルゴールだ。アルビレックス新潟のMF三戸舜介が5月に続いて9月のJ1月間ベストゴールを受賞した。

 9月17日に行われた第27節のガンバ大阪戦に後半19分から途中出場した三戸は、同38分にチームメイトとの連係からゴールネットを揺らす。DF千葉和彦の縦パスをMF高木善朗がワンタッチで落としたボールに反応。ファーストタッチで相手DFの股間を抜いてかわし、GK東口順昭との1対1を冷静に流し込んで、敵地での勝ち点1獲得に大きく貢献した。

 最初のポイントは、千葉が縦パスを入れたタイミングだった。味方からの地を這うような鋭いグラウンダーパスを、あえてレシーブしなかった。

「僕の近くにいた堀米選手(悠斗/DF)が前へ抜ける動きをして、スペースが生まれました。そこに千葉選手が縦パスを入れたので、最初はボールを受けてターンしようと思いました。ただ、パスの強さを考えると自分は触らないほうがいいと咄嗟に考えました。うしろに高木選手がいることは分かっていたので、すぐに前向きの状態でボールを受ける判断に切り替えました」

 身体を前へ向けた瞬間、高木の落としたボールが目の前へ。だが、ダイレクトで打つにはボールが強く、足もとに入りすぎていた。すぐさま判断を切り替え、ドリブル突破からのフィニッシュをイメージする。

「最初はワンタッチで打とうと思いましたが、ちょっと難しかったので賭けに出ました。DFを抜ければGKと1対1になれるのは分かっていたし、股抜きのドリブルコースも見えていました」

 絶妙なファーストタッチで対峙したDF佐藤瑶大を抜き去る。シュートブロックに身体を投げ出す相手の動きも間接視野で捉えていた。股抜きを狙ったボールはわずかながら相手に触れたものの、結果的にシュートを最も打ちやすい位置に。

「綺麗に股を通ったら、もしかしたらフィニッシュが難しくなっていたかもしれないので、うまく当たってくれましたね(苦笑)。最後のシュートはしっかり流し込むという感覚。低く、速いボールを蹴れば入るという手応えがありました。東口選手にコースを読まれていたけど、シュートスピードが速かったおかげで入ったと思います」

試合出場を重ねて生まれた落ち着きと自信「自分がチームを助ける」

 見事なコンビネーションゴールの自己採点は「10点中なら全体の流れからすごく良かったと思うので8点くらい。自分の股抜きが相手に当たっていなかったら10点でもいいかな」。9月28日に21歳になったばかりの新鋭が声を弾ませた。

 技術もさることながら、落ち着いた立ち居振る舞いは、コンスタントに試合出場を続けている賜物かもしれない。リーグ戦は第29節消化時点で27試合に出場し、1880分のプレータイムはフィールドプレーヤーではチーム2位の数字。プロ3年目の若手だが、押しも押されもせぬ中心選手と言っていい。

 来年のパリ五輪を目指すU-22日本代表にもすっかり定着した。先月行われたU-23アジアカップカタール2024予選にも出場し、初戦のパキスタン戦では2ゴールを挙げる活躍で、6-0の大勝に一役買った。まさしく今が伸び盛りのプレーヤーだ。

「今シーズンは気持ちの面で自信をつけているという実感があります。コンスタントに試合に出続けて、アンダー世代の代表チームでも結果を残して、メンタルが強くなってきているのかなと。それはゴール前での落ち着きにもつながっていると思います」

 自信という名の鎧を身にまとい、来年のパリ五輪出場を目指す。その先の目標には海外移籍やA代表も視野に入っているだろう。より高みを目指すために、ここで満足するわけにはいかない。

「試合に出続けるからには、もっとゴールやアシストといった数字のところで結果を残さないといけない。もっとチームを救えた試合もあったはず。自分がチームを助けるという気持ちはどんどん強くなっている。ここまで4得点はチャンスの数を考えると少ない。ゴールは取れるだけ取りたいですね」

 上昇一途の21歳が思い描く青写真。残りのシーズンを全力で駆け抜け、明るい未来を切り拓く。

(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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