森保ジャパン、各ポジション「最新序列」考察 南野がアピール成功…堂安&鎌田の“対アジア”23人枠入りは不透明【コラム】
9月&10月シリーズ招集メンバーの最新序列を考察
森保ジャパンは10月シリーズでカナダ代表に4-1、チュニジア代表に2-0で勝利して国際Aマッチ6連勝を達成。カタール・ワールドカップ(W杯)後の8試合の親善試合を6勝1分1敗で終えた。そうした結果はもちろん、試合を重ねるごとに選手起用などがアップデートされてきており、ここからW杯2次予選、アジアカップ、さらに先へと進んでいく視界も良好と言える。
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10月シリーズではこれまで常連だった鎌田大地(ラツィオ)と堂安律(フライブルク)が所属クラブでの状況やコンディションも考慮される形で外れ、さらに三笘薫(ブライトン)が体調不良、前田大然(セルティック)が怪我で参加を見送る形となった。そのため特に2列目の選手層が心配されたが、三笘が不在の左サイドでは中村敬斗(スタッド・ランス)がカナダ戦で結果を出し、旗手怜央(セルティック)も4-1-4-1や4-3-3の左インサイドハーフが得意なことは森保監督も理解したうえで、4-2-3-1の左サイドとトップ下で起用されて、正確なサイドチェンジやライン間でパスを引き出すなど、ならではのプレーを見せた。
4人の争いとなっている1トップは浅野拓磨(ボーフム)がカナダ戦で得点こそなかったもの相手の裏を狙いながらのボールキープや幅広く動きながらのポストプレーで存在感を示し、得意のチェイシングからショートカウンターで中村のゴールをアシストするなど、現時点でのファーストチョイスになり得るパフォーマンスを見せた。
その一方で古巣・ヴィッセル神戸のホームであるノエビアスタジアムに凱旋となった古橋亨梧(セルティック)も上田綺世(フェイエノールト)が後半スタートから出る準備をしていた前半の終了間際に、旗手のパスが相手に当たってボールが転がってきたチャンスを逃さず、決定力というなによりもFWに求められる結果でアピールに成功した。
ただ、今回のシリーズで大きなアピールに成功したのは、カタールW杯以来の復帰となった南野拓実(ASモナコ)だろう。無得点だったことは南野自身も反省していたが、カナダ戦では4-1-4-1(4-3-3)の右インサイドハーフでスタートし、途中でカナダの出方を見ながら4-2-3-1に変形すると、トップ下として多くのフィニッシュに絡んだ。直接のゴールもアシストもなかったが、4ゴールすべてでボックス内に入っていたことは特筆に値する。浅野のクロスを相手が押し込んでしまったオウンゴールの場面では、南野がギリギリのところに足を伸ばしており、ゴールに等しい働きだった。
チュニジア戦では2-0とリードした状況で同じくトップ下に入り、それまでトップ下だった久保建英(レアル・ソシエダ)が右に回り、左には1トップがメインの浅野という珍しい組み合わせだったが、3人の関係で惜しいチャンスを作り出すなど、ただ試合をクローズするだけでなく、攻撃の脅威も出しながらチュニジアの攻勢を削ぐという役割を果たしていた。10番を背負ったカタールW杯は期待を背負いすぎたことを南野も認めるが、今はチャレンジャーとして改めて闘志を燃やせているという。
W杯予選&アジアカップのメンバー入りで問われる「ポリバレントな対応」
2列目は右サイドの伊東純也(スタッド・ランス)が絶対的な存在で、チュニジア戦で攻撃を牽引した久保も、同じピッチで実力をまざまざと見せつけられたことを明かしたほどだ。左はカナダ戦で左足首を負傷した中村の回復は気になるが、今回は不参加だった三笘の地位は揺るがない。
堂安と鎌田の位置付けは難しいが、チュニジア戦で2つのゴールに絡んだ久保はもちろん、モナコでの好調をそのまま森保ジャパンに持ち込んだ南野も改めて競争に加わってきた。これまでどおり、26人の構成であればここに鎌田と堂安が加わってメンバー内での競争が想定できるのだが、次のアジア予選からはメンバーが従来の23人に戻ることが確定している。
今回はサイドアタッカーが足りない事情もあったが、森保監督は23人のメンバー構成になることも見越して、1人の選手にセカンドポジションとも言うべきポリバレントな対応を求めたり、あるいは4-1-4-1(4-3-3)と4-2-3-1を可変させるなかでの立ち位置など、幅を広げる作業というのが大きな意味を持ったと考えられる。
例えば町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)がカナダ戦ではセンターバック、チュニジア戦では途中から左サイドバックに起用された。その理由の1つとして前回の欧州シリーズで、左サイドバックで2試合フル出場だった伊藤洋輝(シュツットガルト)が怪我で途中離脱したことがある。ただ、そうしたことはW杯2次予選やアジアカップでも起こり得るので、23人に戻ればますますポリバレントな対応が必要になってくる。
今回はその左サイドバックで、中山雄太(ハダーズフィールド)が11か月ぶりの復帰で、完全復活を印象付けるパフォーマンスを見せたり、浅野の1トップ、久保のトップ下など、それぞれのポジションで森保監督の評価を高めたと見られる活躍もあった。それに加えて、例えばカナダ戦では毎熊晟矢(セレッソ大阪)、チュニジア戦では菅原由勢が、右サイドバックから右サイドハーフにポジションを上げるなど、複数ポジションでテストされる選手が多かったことは特徴的で、それは今後の23人を見越したプランということが言える。
そうなってくると今回の招集メンバーから外れる選手も出てくるし、鎌田や堂安も所属クラブでの出場機会やパフォーマンスも含めて、23人枠から外れるというケースも可能性としては出てくる。キャプテンの遠藤航(リバプール)やセンターバックの板倉滉(ボルシアMG)と冨安健洋(アーセナル)、伊東、三笘などチームの主軸とも言える選手は外せないが、各ポジションの2番手の選手などは複数ポジションも考えながら、23人に入るかどうか判断されていくはずだ。
そのなかで旗手のように4-1-4-1(4-3-3)の左インサイドハーフを得意ポジションとしながら、4-2-3-1であれば左サイドハーフ、トップ下、ボランチの3ポジションに対応できることが生き残りの強みになることは間違いない。そうしたことも頭に入れながら、所属クラブでの活躍を掛け合わせて、次のアジア2次予選や来年1月のアジアカップのメンバー構成を改めて想定していきたい。もちろん、こうした流れのなかでも9月と10月シリーズに招集されなかった選手のジャンプアップにも期待している。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。