初選出不在は“危険信号”!?  森保監督の10月シリーズメンバー選考で蘇った過去の“亡霊”【コラム】

カナダとチュニジアと対戦する日本代表【写真:ロイター】
カナダとチュニジアと対戦する日本代表【写真:ロイター】

堂安と鎌田が落選、空きが出たインサイドハーフに南野を招集か

 森保一監督率いる日本代表は10月4日、13日のカナダ戦、17日のチュニジア戦に臨む日本代表メンバー26人を発表した。

 今回の会見の中で森保監督は「11月からはおそらく招集できる人数が、また変わってきて少なくなってしまうところもあります」と、ワールドカップ(W杯)アジア予選には26人登録できなくなる可能性を示唆。その場合、10月の合宿は選手の絞り込みという面も出てくる。

 一方で、9月のドイツ戦、トルコ戦と結果を出した日本代表はすでにメンバーの序列がはっきりしているように見える。今回のメンバーを森保監督が使うと明言した「4-2-3-1」と「4-1-4-1」に当てはめた場合、こうなるのではないか。

【4-2-3-1】
      上田      
三笘    久保    伊東
   守田    遠藤   
伊藤  冨安  板倉  菅原
      大迫      

【4-1-4-1】
      上田      
三笘 (南野) 久保  伊東
      遠藤      
伊藤  冨安  板倉  菅原
      大迫      

 鎌田大地と堂安律が「コンディション不良」ということで招集が見送られた結果、4-1-4-1のインサイドハーフに空きが出て、そこに南野拓実が呼ばれたとも十分考えられるだろう。

 このフォーメーションとメンバー選考について、多くの人が予想するとおりではないだろうか。そしてそのことが、かつて日本がとても期待を集めた時を思い起こさせる。それはわずか4代前の監督の時だった。

 大会直前の試合結果が思わしくなく、早期敗退の懸念が高まっていた2010年の南アフリカW杯で、日本は見事にベスト16への進出を決めた。結果はPK戦で敗退ということになったものの、選手はまだ若く、次の大会への期待を大いに集めていた。

 その中で就任したアルベルト・ザッケローニ監督は、就任初戦でリオネル・メッシもいたアルゼンチンに初勝利を収める。その後も快進撃を続け、2011年にカタールで開催されたアジアカップでは延長の末、オーストラリアを破って優勝を果たした。

 その当時も基本のフォーメーションはでき上がっていた。

【4-2-3-1】
      前田      
香川    本田    岡崎
   遠藤    長谷部  
長友  今野  吉田  内田
      川島      

 左で崩して右で仕留めるという攻撃のパターンも構築されていて、あとはこのパターンをどれだけ増やすか、選手が入れ代わった時に同じようなことができるかという点を解決できれば、2014年のブラジルW杯での躍進は間違いないだろうと考えられていたのだ。

 攻撃を担う香川真司はドイツ1部ボルシア・ドルトムントで大活躍し、2012年にはイングランド1部マンチェスター・ユナイテッドに移籍する。本田圭佑はロシア1部CSKAモスクワでUEFAチャンピオンズリーグ(CL)、UEFAヨーロッパリーグ(EL)を経験し、岡崎真司もアジアカップ直後にドイツへと移籍していった。

 守備でも長友佑都は2011年の途中にイタリア1部インテルへと移籍。内田篤人はすでにドイツ1部シャルケで欠かせないプレーヤーへと成長しており、吉田麻也はオランダ1部VVVフェンロでレギュラーの座を獲得すると、2012年はイングランド1部サウサンプトンへの完全移籍を果たす。川島永嗣はベルギー1部(当時)リールセでキャプテンに選ばれるほどの信頼を寄せられていた。

塾成を目指すうえでは少々心許ない!?

 ところが口々に「優勝を目指す」と息巻いて臨んだブラジルW杯では、香川と長友の攻撃パターンを封じられて日本は失速してしまう。コンディション不良という面があったにせよ、日本は意外性に欠けた。2022年のカタールW杯で日本が躍進できたのは、それまであまり見せていなかった3バックを上手く使いこなしたという点もあっただろう。

 今回の日本代表に初選出の選手は誰もいない。それだけもう選手は絞り込まれているということになるのだろう。だが今のうちにもっと選手層を広げておいて、選手が成長した時に、その特長を加えたチーム作りをしたほうがいいのではないだろうか。

 例えばドイツ戦で負傷した上田綺世は10月4日のCLアトレティコ・マドリード戦で復帰を果たしたものの、出場時間は60分だったことを考えると万全ではないはずだ。たしかにポストプレーができる、現在のメンバーでは唯一の選手ではあるが、ここは無理して招集したり、起用したりする必要はない。

 森保監督は9月のヨーロッパ視察でドイツ2部ニュルンベルクの林大地を視察しているので、プレーに満足できなかったということだろうが、それでも東京五輪の時、負傷の上田に代わって林をプレーさせたことを考えると、今回も招集して良かったのではないか。

(筆者修正:林選手の怪我の情報を見落としておりました。林選手はアキレス腱の怪我で現在プレーしておらず、森保監督が視察したニュルンベルクの試合でも出場しておりません。そのため、「プレーに満足できなかったということだろう」という点は明らかな誤りです。お詫びして訂正いたします。なお、林選手に対する期待は少しも変わらないので、負傷明けの際にはぜひ森保監督にチャンスを与えてほしいと思います)

 2014年当時とは現在の代表選手たちの経験値は違うだろうし、代表チーム内でのW杯に対して構築されたノウハウもはるかに増えただろう。当時よりもはるかに厚い選手層もある。

 だが、まだFIFAランキングの19位に過ぎない日本が同8位以内のチームに割って入ろうとするのが、「ベスト8以上を目指す」ということ。そうなると、現時点からの熟成ということでは少々心許ない気がする。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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