欧州日本人プレーヤー「序盤戦査定」 5大リーグ以外の5人評価、名門主軸の守田英正が「抜群の出来」【コラム】

守田英正はスポルティングで中盤を掌握【写真:Getty Images & 徳原隆元】
守田英正はスポルティングで中盤を掌握【写真:Getty Images & 徳原隆元】

欧州主要5大リーグ以外で活躍する面々を抜粋し独自評価

 欧州各国リーグで活躍する日本人プレーヤーたちの序盤戦パフォーマンスを査定すべく、「FOOTBALL ZONE」では特集企画として「欧州日本人・序盤戦通信簿」を展開。それぞれ「飛躍の条件」をベースに欧州主要5大リーグ以外で活躍する面々を抜粋し、独自評価していく。(文=河治良幸)

   ◇   ◇   ◇

【評価指標】
S=抜群の出来
A=上出来
B=まずまずの出来
C=可もなく不可もなく
D=期待外れ

■守田英正(スポルティング)
評価:S 
飛躍の条件:主軸としてタイトル獲得

 ポルトガル1部で首位に立つ名門の主力、いや主軸として中盤に君臨しており、これまでで一番サッカーを学んでいると守田も認めるルーベン・アモリム監督の戦術タスクをこなしながら、攻守のハンドルとなっている。欲を言えばここまでリオ・アヴェ戦で記録した1アシストだけでなく、もっと数字を増やせると良いが、ボランチの相棒が185センチのデンマーク代表MFモルテン・ヒュルマンドで、リスク管理をしながら、そうした周囲の選手の良さを引き出す役割のほうが重要になっている。3シーズンぶりのリーグ優勝が目標になるが、個人の価値を上げるという意味では、ヨーロッパリーグでの躍進も期待される。

■旗手怜央(セルティック) 
評価:C 
飛躍の条件:欧州CLで真価を発揮

 これまでの1シーズン半で、すでに4つのタイトル獲得に貢献している。今夏には移籍の可能性がかなり有力視されていたが、期間中に実現せずセルティックと2028年までの契約延長にサインした。前田大然や古橋亨梧よりも1年長く、このニュースを受けて失望の声も見られたが、もともとセルヒックは選手を叩き売りするようなクラブではない。もちろん、英プレミアリーグの強豪などから魅力的なオファーが届けば別だ。

 8月にふくらはぎを負傷した影響で、まだフルパワーを発揮できてるとは言い難いが、今シーズン初スタメンとなった9月23日のリビングストン戦でPKによる先制ゴールを記録した。現地時間10月4日にはUEFAチャンピオンズリーグのラツィオ戦がある。ここでチームを勝利に導く活躍を見せて、初戦でフェイエノールトに敗れたセルティックを軌道に乗せたい。

■藤本寛也(ジル・ヴィセンテ)  
評価:A
飛躍の条件:さらに結果を積み上げる

 東京ヴェルディから移籍し、3シーズン目を迎える。最初のシーズンから中盤のポジションを掴み、2年目から10番を背負っている。左利き特有の展開力と縦パスのセンスという武器を活かしながら、今シーズンはすでに2得点3アシストと結果も付いて来ている。特に素晴らしかったのはベンフィカ戦で、2アシストを記録しただけでなく、前向きなパスや激しいプレスでの即時奪回など、2-3で敗れたが藤本自身はこのレベルの相手でも通用することを証明した。どんどんチャレンジして行くのでミスは付きものだが、守備の強度もある。菅原由勢や伊藤洋輝、中村敬斗とともにU-20ワールドカップで主力を担ったタレントであり、どこかで代表に絡んできてもおかしくない。すでに仲間との信頼関係があり、ボールが集まる環境ができているが、そこで目に見える数字を上げていった先にステップアップが開けて来そうだ。

キール町野は初の欧州挑戦で好スタートも…

■町野修斗(ホルシュタイン・キール) 
評価:B 
飛躍の条件:周囲から好パスを呼び込む

 湘南ベルマーレで6月末まで9得点を挙げていた町野。ドイツ2部クラブへの移籍には賛否両論あったが、キールは町野を必要とするFWにピッタリという理由でオファーしており、欧州挑戦のスタートとしては理想的な環境であることを見越しての加入だった。実際に素晴らしい出出しを見せて、シャルケ戦で左からのクロスをファーで見事に叩き込んで「ニンジャポーズ」も披露。第4節までに2得点1アシストを記録した。しかし、そこからうまく結果につなげることができず、第8節のカールスルーエ戦では初めてベンチスタートとなった。対戦相手も分かってきているというのはあるはずだが、それでも力強いポストプレーからボックス内での飛び込みなど、味方からのボールが合えばというところはある。マルセル・ラップ監督は町野に対する期待は高く、1つきっかけを掴めればゴール数も付いてきそうだ。

■中山雄太(ハダーズフィールド) 
評価:B 
飛躍の条件:ゲーム感覚をさらに高める

 アキレス腱の負傷でカタール・ワールドカップを欠場した中山雄太は完全復活を期した今シーズンも、左サイドバックのライバルであるジョシュ・ルッフェルズが好調だったこともあり、シーズン当初はなかなか試合に絡めなかった。しかし、第7節のストーク戦で左のセンターバックとしてスタメン復帰を果たすと、坂元達裕を擁するコベントリーとの試合で、3バックの左として攻守に奮闘し、機を見たオーバーラップで存在感を示した。そして第9節イプスウィッチ戦では左ウイングバックで、見事な左足のスルーパスにより今シーズンの初アシストを記録。試合に出ながらどんどんコンディションを上げているのが伝わる。ただ、後半途中に痛んで交代したという情報もあり、代表復帰も期待されるなかで状態は気になるところだ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



page 1/1

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

今、あなたにオススメ

トレンド