トルコMFは退場が妥当? 伊東の“高速ドリブル”が誘発したPKシーンを元主審・家本氏が考察【解説】
【専門家の目|家本政明】伊東が誘発したファウルがPK判定、相手MFにはイエローカードが提示される
森保一監督率いる日本代表は現地時間9月12日に行われたトルコ代表戦で、4-2の勝利を飾った。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏は、途中出場したMF伊東純也が躍動した“PK奪取シーン”におけるジャッジを解説。突破を阻んだ相手選手の反則に対する判定に持論を述べている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
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9日のドイツ代表戦(4-1)から、大幅に先発メンバーを入れ替えて臨んだトルコとの一戦で伊東はベンチスタートに。試合はMF伊藤敦樹のA代表初ゴールを皮切りに、MF中村敬斗が2ゴールをマーク。トルコに2失点を喫するも、後半頭から途中出場した伊東が同33分、1人で相手ペナルティーエリア内までボールを運んで倒され、PKを獲得。自らこのPKを決めて4-2で勝利を飾っている。
ダメ押し弾につながった伊東のPK獲得シーンは、約60メートルを爆走するスピードを生かしたカウンターだった。ペナルティーエリア内まで侵入し、追いすがるMFイスマイル・ユクセクより身体を前に入れたところで手を掛けられて倒されている。
ユクセクにはこのプレーでイエローカードが主審から提示されたが、家本氏は「レッドカードだったと思う」と判定について考察を展開した。
伊東の倒された場面が「まず前提として、ファウルであることは間違いない」とした家本氏は、考えるべきポイントとして「DOGSO(ドグソ/“Denying an Ovious Goal-Scoring Opportunity”の略。決定的な得点機会の阻止)かどうか」「ボールにチャレンジしようとしていたか」の2つの点を挙げる。
DOGSOの4要件(1)反則とゴールとの距離(2)全体的なプレーの方向(3)ボールをキープ、またはコントロールできる可能性(4)守備側競技者の位置と数を考慮すると、伊東へのファウルはDOGSOに該当する可能性が高いと家本氏は主張した。
そのうえで問題となるのが、今夏に競技規則で改正が入った「ボールにチャレンジしようとしていたか」という論点だ。ペナルティーエリア内のDOGSOの反則では、3重罰を避けるためのルールが存在する。
家本氏は「この夏に競技規則が改正になった。ボールに向かったプレーと判断される場合には、プッシングなどであっても一段罰則が下がるように緩和されている」と説明。ただ、ユクセクの伊東へのチャレンジはうしろから両手を使って倒しており、家本氏は「個人的にはあれはボールに行っているとは判断しない」と自身の見解をまとめた。
「競技規則が改正になったが、チャレンジの仕方から今回は3重罰軽減の条件には当てはまらないと考えられる。この観点を踏まえると、トルコ選手のプレーはレッドカードだったと思う」
また、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入せず判定がPK+警告止まりとなった理由として「私の推測でしかありませんが、この試合がフレンドリーマッチである点が考慮された部分もあるかなと思います。もしくはレフェリーが、トルコ選手のチャレンジについてボールに向かったプレーだと判断したのかもしれない」と自身の推察を語っていた。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。