日本代表の「ビッグクラブに狙われる逸材」は? ドイツ戦出場17選手を金田喜稔が採点、「キング」「絶対に外せない」と絶賛

金田喜稔氏がドイツ戦の17人を採点【写真:ロイター】
金田喜稔氏がドイツ戦の17人を採点【写真:ロイター】

【専門家の目|金田喜稔】冨安は文句なしの5つ星、菅原は「本当にいい選手だ」

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング20位)は、9月9日(日本時間10日)に敵地でドイツ代表(同15位)と対戦し、4-1で快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、この試合に出場した17選手を5段階(5つ星=★★★★★が最高、1つ星=★☆☆☆☆が最低)で採点した。

   ◇   ◇   ◇

<GK>
■大迫敬介(サンフレッチェ広島)=★★★★☆
 もう少し前に出てボールを触っても……という場面があった。どっしり構えるという存在感はまだなかったが、チーム全体の守備が機能していたなかで、徐々にパフォーマンスも安定した。

<DF>
■冨安健洋(アーセナル)=★★★★★
 文句なしの5つ星。レロイ・サネに追い付いた圧倒的なスピードには拍手を送りたいし、改めてちょっと驚いた。それでいてサネを吹き飛ばす身体の強さもある。守備だけでなく、攻撃でもサイドへ展開してゴールの起点になっていたし、まさに攻守両面でワールドクラスであることを証明した一戦だった。

■板倉 滉(ボルシアMG)=★★★★☆
 冨安が良かったため印象が薄れがちだが、板倉のパフォーマンスも圧巻。ドイツにまったく引けを取っていなかったし、日本の守備が盤石という印象を強く植え付けた。冨安と同様、前につけるパスの意識が高く、距離感も良いから相手を上手くいなせていた。

■伊藤洋輝(シュツットガルト)=★★★★☆
 1対1の守備対応には課題が残るが、それでも相手がレロイ・サネであったことを考えれば奮闘していた。一方、左足のフィード能力が十分に生きていない。例えば三笘を生かすしにしても、身体の向き、パスコース、タイミングと微調整が必要だ。さらに前につけるパス、サイドチェンジのパスも出せるはずなので、左足の正確なキックの魅力をより生かしてほしいと思う。

■菅原由勢(AZアルクマール)=★★★★★(→後半39分OUT)
 このパフォーマンスであれば、欧州のビッグクラブに狙われる逸材だ。伊東純也が出ても久保建英が出ても臨機応変に合わせながら、自分の持ち味を生かせる部分は素晴しい。何よりあのアップダウンの運動量、スピード、上がるタイミングのすべてが高水準。守備でも粘り強く対応した。日々成長している23歳。今後の伸びしろも考えると、本当にいい選手だ。

■谷口彰悟(アル・ラーヤン)=★★★★☆(←後半13分IN)
 1点リードの難しい展開のなかで投入され、3バックでも安定感を見せた。相手の攻撃を受けながらカウンターを狙うプランもあったなか、見事にそれを遂行した。ドイツが相手でもまったく不安のない出来だった。谷口がいることでチームも選手層も厚くなるし、今後も不可欠な戦力。むしろ冨安、板倉、谷口に続くセンターバックの発掘が急務かもしれない。

■橋岡大樹(シント=トロイデン)=※短時間のため採点なし(←後半39分IN)
 終盤に投入されて、付いていけない場面もありやや不安定だったが、その後は安定感を取り戻した。アピールというにはまだ遠いかもしれないが、今は実績を積み重ねる時だろう。

三笘は「いるだけでけん制できる」、遠藤によって「コンパクトな陣形が安定」

<MF/FW>
■守田英正(スポルティング)=★★★★☆(→後半29分OUT)
 遠藤とともに攻撃のリズムを作りながら、守備もケアする攻守の役割を全うした。守備寄りが遠藤であれば、攻撃寄りは守田。2列目の能力をもっと生かす意味でも、ビルドアップで守田が一番目立つぐらいであってほしい。守田の効果的なボールタッチが増えれば、さらにチームの攻撃の質は向上するので期待値は高い。

■田中 碧(デュッセルドルフ)=★★★★☆(←後半29分IN)
 しっかりと1ゴールを決め切るのだから素晴しい。ポジション取りが秀逸で、あそこに入り込んでいたというのが大きいし、それが田中の良さでもある。まさにトドメの一撃だった。90分起用できるかどうかは、所属クラブでの出来とコンディション次第。これをきっかけにいい流れを作ってほしい。

■遠藤 航(リバプール)=★★★★★
 あれだけコンパクトな陣形が安定していたのは遠藤がいたからだ。このチームのキング。シンプルなボールタッチでリズム創出、相手のトラップの瞬間を狙ったボール奪取、ルーズボールの回収など、総合力の高さが光った。後方からもつけるパスが出ていたことでやりやすそうだったし、守田とのコンビも板に付いてきた。

■三笘 薫(ブライトン)=★★★★☆(→後半39分OUT)
 相手が相当警戒してマークも厳しくなっていたなか、それでもドリブル突破をしていたのはさすがだった。相手が一番ケアしていた分、右サイドが空いたというのもあり、いるだけでけん制できるのは日本にとって強みだ。もちろん能力を考えれば、決定的な仕事をしてほしい思いはあるが、それでも1試合を通じた駆け引きをしている感があるし、駆け引きの質が上がってくればまた1つ壁を乗り越えて、文字どおりのワールドクラスになれる。

■堂安 律(フライブルク)=※短時間のため採点なし(←後半39分IN)
 ほぼ絡む場面もなく、攻撃陣のなかでは存在感を示せないまま終わってしまった。とはいえ、堂安はこうした悔しさを原動力に成長できるタイプ。これからのアピールに期待したい。

■鎌田大地(ラツィオ)=★★★★☆(→後半13分OUT)
 目立つプレーは少なかったかもしれないが、巧みなポジション取りで相手のマークや陣形を揺さぶっていたし、意識が高く効果的な空走りも良かった。その1本のランニングがあることで通るパスもあった。ただ僕の中で鎌田と言えば「ゴールに直接関与する選手」なので、そこは期待したい。

伊東は「いつ見てもいい」という貴重な存在、圧巻の働きを見せた久保「5つ星に値」

<MF/FW>
■伊東純也(スタッド・ランス)=★★★★★(→後半29分OUT)
 2点に絡み、文句なしの5つ星。「いつ見てもいい」という選手は本当に貴重で、絶対に外せないというのをいつも印象付けてくれる。今の伊東が素晴しいのは、サイドに張って仕掛けることもできれば、中に入ってゴールゲッターにもなれる点。ゴールへの意識はここ数年で高まり続けている。プレーの幅が広がりスケールアップし続けている。

■久保建英(レアル・ソシエダ)=★★★★★(←後半29分IN)
 短時間で2アシストの仕事ぶり。これは最高の5つ星に値する素晴しい働きだった。守備を最優先しながら少ないチャンスを生かすという、監督たちが思い描いた理想プランを遂行し、それを実際にやってのけるのだから圧巻だ。伊東にまったく引けを取らない存在感で、クラブと同様、代表でも自分の価値をしっかり高めている。ハイレベルなポジション争いは日本の強みでもある。

■上田綺世(フェイエノールト)=★★★★★(→後半13分OUT)
 確かにドリブルで持ち運んで迎えたビッグチャンスは決めてほしかったが、それでも1ゴールと結果を残した。常にどこからボールが来てもいいように準備する意識があり、結果的にあのゴールも生まれた。良い時の大迫勇也に近づいているし、超えるポテンシャルもある。ドイツ守備陣とも激しくやり合うなかで良さを出していたし、これからまだまだ成長すると考えれば期待しかない。

■浅野拓磨(ボーフム)=★★★★☆(←後半13分IN)
 気合十分で、相手GKとの1対1は着実に決めたかったところ。1ゴールは久保のアシストがあってこそだったが、あそこまで走って準備していたからこそとも言える。スペースがある時、後半途中から投入されると、やはり脅威を与える。

金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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