セリエA新シーズン「勢力図」展望 王者ナポリ連覇に黄信号?…鎌田加入のラツィオ、インテル、ミランがV争い展開か

セリエAの優勝争いを展望【写真:Getty Images】
セリエAの優勝争いを展望【写真:Getty Images】

8月19日に開幕するイタリア1部リーグ「セリエA」の2023-24シーズンを展望

 欧州主要リーグの新シーズンが続々と幕を開けているなか、「FOOTBALL ZONE」では、5大リーグの始動に合わせて特集を展開。ここでは8月19日(現地時間)に開幕するイタリア1部リーグ「セリエA」の2023-24シーズンを展望する。

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 セリエAのクラブはここ数年、欧州カップ戦でも上位躍進が目立つ。5大リーグの中でも最も優勝予想が難しいリーグとなっており、今シーズンのスクデット争いも熾烈を極めそうだ。

 ナポリが独走でスクデットを獲得した昨シーズンから、どう勢力図が変わるかは興味深い。28失点という堅守の立役者となった韓国代表DFキム・ミンジェがドイツ1部バイエルン・ミュンヘンに引き抜かれ、オフは後釜の補強に追われたが、なかなか進まずに開幕前を迎えてしまった。結局、レッドブル・ブラガンチーノからブラジル人センターバックのDFナタンを獲得したが、欧州初挑戦でいきなり主力としてスタートダッシュを支えられるかは未知数なところがある。

 その一方で欧州ビッグクラブの人気銘柄と見られたナイジェリア代表FWビクター・オシムヘンの残留には今のところ成功しており、本人もナポリが最高の環境であることを強調。移籍マーケットが閉まる8月末まで予断は許さないが、少なくとも開幕戦で前線に君臨することは間違いない。中盤にはフランス1部スタッド・ランスでMF伊東純也の同僚だったスウェーデン代表MFイェンス=リス・ミシェル・カユステを獲得。攻守のデュエルとパワフルなミドルシュートを備えており、ナポリの新たな動力源として期待される。

 その王者ナポリとともにスクデット争いを繰り広げると見られるのが、MF鎌田大地が加入した昨季2位のラツィオと3位インテル、4位ACミランの3クラブ。ジョゼ・モウリーニョ、マッシミリアーノ・アッレグリ両監督がそれぞれ率いる昨季6位ASローマ、同7位ユベントスも巻き返しのポテンシャルは備えている。昨季5位のアタランタもUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権を獲得できる4位以内は射程圏内だ。

 ラツィオは1999-2000シーズン以来のスクデットを狙うが、中盤の組み立て役だったセルビア代表MFセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチがサウジアラビアのアル・ヒラルに移籍し、その後釜を鎌田が担うという形にはなる。10番を背負うMFルイス・アルベルトは健在だけに、鎌田がアンカーのMFダニーロ・カタルディを合わせたトライアングルにどうフィットし、新たな輝きを加えられるか。昨季スペイン1部ジローナでレアル・マドリードから4得点を奪ったアルゼンチン人FWバレンティン・カステジャーノスもセリエAとCLの両方で、ゴール量産に期待が懸かる。

タレント揃うミラン&インテル、アタランタも着々と戦力増強

 ミランは智将ステファノ・ピオリ監督が5シーズン目。2021-22シーズンには11季ぶりのセリエA優勝を果たしたが、厳しく評価されるシーズンになりそう。チェルシーから“キャプテン・アメリカ”ことアメリカ代表MFクリスチャン・プリシッチが加わり、右ウイングから左のFWラファエル・レオンとともに、技巧的な高速ドリブルでチャンスを切り開く。センターフォワードは36歳のフランス代表FWオリビエ・ジルーがエースに君臨するが、レッチェから復帰した21歳FWロレンツォ コロンボなどの台頭も長いシーズンでスクデットとCLの躍進を狙うには不可欠だろう。

 昨季CL準優勝のインテルはトルコ代表MFハカン・チャルハノールとアルゼンチン代表FWラウタロ・マルティネスのホットラインを中心に、守備はタイトに、攻撃は自由度高く、多彩な攻撃を繰り出す。イングランド1部マンチェスター・ユナイテッドへ移籍した守護神GKアンドレ・オナナの後釜問題に関しては、バイエルンから実力者のスイス代表GKヤン・ゾマーを獲得し、開幕直前のプレシーズンマッチでも早速ゴールマウスを守っており、大きな不安はない。攻撃ではフランス代表FWマルクス・テュラムが加わり、ラウタロとの強力2トップで相手ディフェンスの脅威になるはずだ。

 アタランタはデンマーク代表FWラスムス・ホイルンドがユナイテッドに移籍したが、代わりにイタリア代表FWジャンルカ・スカマッカをイングランド1部ウェストハムから50億円とも言われる移籍金で獲得。このストライカーの出来は順位にも直結しそうだが、昨季13得点のナイジェリア代表FWアデモラ・ルックマンはさらに数字を伸ばす期待はある。MFトゥーン・コープマイネルスが仕切る中盤の左サイドにはドイツ1部レバークーゼンからMFミッチェル・バッケルが加わっており、彼の背後を支える左利きのボスニア・ヘルツェゴビナ代表DFセアド・コラシナツとともに、アタランタの新たな推進力になりそうだ。

 2022-23シーズン8位のフィオレンティーナは昨季UEFAカンファレンスリーグとコッパ・イタリアで準優勝。カップ戦も含めたタイトル奪還にモチベーションは高いだろう。ただ、守備の要だったDFイゴール・ジュリオをプレミアリーグのブライトンに引き抜かれており、同じくプレミアクラブのエバートンから新加入のコロンビア代表DFジェリー・ミナに期待が懸かる。攻撃的なポジションではアルゼンチンの名門リーベルプレートから加入の22歳FWルーカス・ベルトランが躍進のキーマンだ。セリエAは多くのアルゼンチン人FWが欧州での出世を果たしてきた“登竜門”だが、ベルトランもそこに続くポテンシャルがある。

 ダークホースとして面白いのは昨季13位のサッスオーロだ。セリエAに先立ち開幕したコッパ・イタリアではセリエBのコゼンツァを延長戦の末に5-2で撃破。イタリア代表FWアンドレア・ピナモンティとアルバニア代表MFネディム・バイラミの24歳コンビに加えて、途中出場で2得点を決めた22歳のFWサムエレ・ムラッティエーリにブレイクの予感が漂う。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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