ソシエダ久保、新シーズンの立ち位置は? シルバ引退で課せられる新たな役割…チームの基本布陣を考察【コラム】

ソシエダで2シーズン目を迎える久保建英【写真:Getty Images】
ソシエダで2シーズン目を迎える久保建英【写真:Getty Images】

チームの基本布陣や久保建英の活用法について考察

 欧州リーグが続々と開幕するサッカー界。スペインのラ・リーガは現地時間8月11日に開幕となるなか、「FOOTBALL ZONE」では欧州リーグ開幕に焦点を当てて特集を展開。12日に迎えるレアル・ソシエダ初戦を前に、チームの基本布陣や日本代表MF久保建英の活用法について考察した。(文=河治良幸)

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 ソシエダは8月6日にレアル・ベティスとプレシーズンマッチを行い、8月13日にホームのジローナ戦で新シーズンを開幕する。大きなトピックはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)に出場すること。本線の組み合わせは決まっていないが、国王杯も含めた国内外の3つのコンペティションをこなしながら長いシーズンを戦うことになる。

 昨シーズン主力として奮闘し、リーグ戦で9得点4アシストという数字を残した久保建英にはさらなる活躍が期待されるところだ。久保は現地時間3日にメキシコで行われたアトレティコ・マドリードとのプレシーズンマッチで、右インサイドハーフでスタメン起用されて、80分までプレー。左足のキッカーも任されるなど、怪我で現役引退を表明したダビド・シルバに代わる中盤の司令塔としての役割も期待される。

 もちろん久保が熟練したシルバと全く同じプレーは現時点で、イマノル・アルグアシル監督も期待してはいないはず。ソシエダらしいソリッドな守備と多角的なパスワークのところで中心的に振る舞いながら、高い位置で得点に直結するプレーを繰り出すことで、ゴールやアシストも付いてくるはず。ただ、昨シーズンよりも1つ前の起点のパスは増えるかもしれない。

 4-3-3の右ウイングは10番を背負うミケル・オヤルサバルが、左から回ってくると見られる。そして左ウイングでブレイクが期待されるのはカンテラ育ちのアンデル・バレネチェアだ。U-21欧州選手権にもスペイン代表として出場した俊英が、ソシエダ躍進の鍵を握る。

 3トップの中央は大型FWのカルロス・フェルナンデスが開幕のスタメン候補だ。昨シーズンの全戦の核だったノルウェー代表FWアレクサンデル・セルロートがライバルのビジャレアルに完全移籍したためだ。ただ、これは仕方がなかったところもある。セルロートはドイツのライプツィヒから期限付きで加入していたためだ。移籍金は800万ユーロ(約12億5000万円)で、これに200万ユーロ(約3億円)のボーナスが付くと報じられた。

 カルロス・フェルナンデスは昨シーズン、途中投入を含めて多くの試合で起用されているが、1得点に終わっただけに、得点力というところではかなり奮起が求められる。ただ、従来の主力で、前十字靭帯の断裂により長期離脱していたナイジェリア代表FWウマル・サディクも復帰してきており、100%の状態に戻れば“ラ・レアル”にとってセルロートを超えうる大型補強にも等しい。

 そのほかの候補は19歳のモハメド=アリ・チョーで、彼も将来性を高く期待されるタレントだが、左利きのチョーは前線にどっしりと構えるというよりは技巧的で、縦に抜ける能力もあるアタッカーだ。アトレティコ戦で久保に代わって投入されたジョン・カリカブルは昨シーズン2部のレガネスにレンタルされていたが、プレシーズンの評価次第では前線の競争に入ってくるかもしれない。

2022-23シーズンのソシエダ「予想布陣」【画像:FOOTBALL ZONE】
2022-23シーズンのソシエダ「予想布陣」【画像:FOOTBALL ZONE】

中盤の底にスビメンディ、左にはメリーノが入り久保と試合をコントロールするか

 中盤は久保に加えて、中盤の底に181センチのマルティン・スビメンディ、左インサイドハーフには昨シーズン主力として9アシストを記録したミケル・メリーノが入ると見られる。ただ、ソシエダはメインシステムが4-3-3だとしても、試合に応じてダイヤモンド型の4-4-2など、複数のシステムを使い分けられるチームでもあるので、中盤の構成は変わりうる。

 昨シーズンの終盤に右長内転筋の負傷で離脱したブライス・メンデスもコンディションが良好なら主力候補だ。2列目からの得点力もアシスト能力もあるメンデスは久保のライバルにもなり得るが、これまで久保が右ウイング、メンデスが右インサイドハーフでも機能しており、システムと配置を見ながらスビメンディ、メリーノなどとどう組み合わせていくかは注目だ。また昨シーズンBチームで評価を高めた20歳のパブロ・マリンなども台頭するかもしれない。

 4バックはアトレティコ戦を見る限り、右サイドバック(SB)がマリ代表のアマリ・トラオレ、センターバックは昨シーズンのままイゴール・スベルディア、ロビン・ル・ノルマン、アイヘン・ムニョスというチョイスが考えられる。左SBは経験豊富なディエゴ・リコも健在で、センターバックも含めて守備的なオプションになる。

 GKは191センチのアレックス・レミロが守護神として頼れる存在だ。ハイスケールなセービングもさることながら、ボール捌きもしっかりしており、相手のハイプレスを破る出口を探す技術と判断力が抜群だ。バスクのライバルであるアスレチック・ビルバオのカンテラ育ちでありながら、5年目ですっかり“ラ・レアル”の市民権を得ているレミロが、防波堤としても攻撃の起点としてもチームを支えている。

 久保の活躍はもちろん期待されるが、CLを戦いながら、ラ・リーガでも上位を戦っていくには総合力が問われる。レアル・マドリーやバルセロナ、アトレティコ。セビージャに比べて、決して戦力にアドバンテージがあるとは言えないが、より組織的に誰が出てもアルグアシル監督の戦術を共有しながら、久保やオヤルサバルなど、違いを生み出せる攻撃タレントが輝きを放てるか。興味深いチャレンジだ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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