大健闘の横浜FMがそれでも「マンC」になれない理由 Jリーグとして誇らしい一面と埋められない“決定的な差”【コラム】
マンCのグアルディオラ監督も横浜FMを称賛「質があり、レベルが高い」
横浜F・マリノスとマンチェスター・シティは同じシティ・フットボール・グループのクラブでもあり、プレースタイルがよく似ている。国立競技場に6万人超の観衆を集めた試合は見応えがあった。
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J1リーグ後半戦に突入している横浜FMはコンディション的に有利だった。アンデルソン・ロペスが個人技で先制し、永戸勝也から松原健への長くて低いクロスボールが通って2点目。エウベルは滅多に抜かれないカイル・ウォーカーをスピードでぶっちぎり、ジョゼップ・グアルディオラ監督もこれには驚きのコメントを残していた。
ただ、コンディションが整っていないとはいえシティはさすがに3冠の王者。横浜FMのミスもあったが2点を返して2-2で折り返す。様相が一変したのは後半だった。
横浜FMが1人を交代させただけなのに対して、シティはフィールドプレーヤー全員を入れ替えた。これで横浜FMのコンディションの優位性は消し飛んだ。暑いなか、シティ相手に45分間プレーした選手たちは消耗している。一方、コンディションがないとはいえフレッシュな10人のシティはボールを支配して圧倒的に攻め込み続ける。アーリング・ブラウト・ハーランドとロドリのゴールでたちまち4-2とリードした。
ここで横浜FMは一気に5人を交代。再びコンディションの優位性を取り戻すと、井上健太が1点を返す。シティの一方的な攻勢から互角とまではいかないが、かなり盛り返した。ロスタイムにハーランドが2点目をゲットしてファイナル・スコアは5-3となったものの、引かずに戦った横浜FMに対して、グアルディオラ監督は「質があり、レベルが高い」と称賛していた。
もちろん親善試合であり、プレシーズンの準備を開始したばかりのシティはまだまだ本調子ではない。ただ、フィジカルの差、強度の差が埋まれば、横浜FMはシティと十分戦えることを証明したとも言える。
だが、その強度の差こそ決定的なのだ。そしてこの差を埋めることはできない。選手の身体能力をトレーニングで強化するのは限度があり、シティに対抗しようとするならより身体能力に優れた選手を補強していくほかないからだ。そして、その資金力こそシティの優位性なので、現状でシティを超えるための道筋は見つからないわけだ。
だが、これは横浜FMがシティと似すぎているせいである。シティと同じプレースタイルをするかぎり超えられないというだけ。同じ路線でここまでのチームを持てたことはJリーグとしては誇らしい。しかし、シティを超えようとするなら、異なる特徴の選手たちによる違うプレースタイルが必要なのだろう。それが何で、本当にシティを超えるほどのものを作れるのかは分からない。ただ、そう思えたのは横浜FMが食い下がってくれたおかげである。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。