「8ゴール取ったことは忘れた」 札幌MF浅野雄也が語る“覚醒”の理由と後半戦の“ノルマ”【インタビュー】

今季札幌で活躍をしている浅野雄也【写真:Getty Images】
今季札幌で活躍をしている浅野雄也【写真:Getty Images】

8ゴールは「最低ライン」と自己評価 「60点」の理由は?

 北海道コンサドーレ札幌のMF浅野雄也は今季すでに自身のJ1シーズン最多ゴール数を更新し、飛躍のシーズンを過ごしている。リーグ戦の戦いを踏まえた特集「前半戦通信簿」を実施するなかで、前半戦にスポットライトを浴びた1人である浅野を直撃した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)

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 シーズン全34試合の半分である17試合消化時点で8得点。開幕前にシーズン2桁得点を1つの目安に挙げていたなかで、すでに手が届く位置に達している反面、5月27日のJ1リーグ第15節名古屋グランパス戦(1-2)以降はノーゴールの期間が続いていることもあって、浅野の自己評価は厳しい。

「正直、満足のいく数字ではないです。もちろん8点取れているのは自信にもなります。でも、自分の中では最低ラインというか、(100点満点中で)60点くらい。チャンスも多かったので、まだ8ゴールなのかという感覚です。普通に二桁に乗せていないといけないですね」

 5月6日のJ1リーグ第12節FC東京戦(5-1)からプロ入り後初となる3試合連続ゴールを記録。シュート数もリーグ10位の37本(シュート決定率21.6%)、枠内シュートも同5位タイの20本(枠内シュート率54.1%)を数える。浅野は「自分が良かったというよりも、チームの調子が良かったと思います」と語りつつ、今季はミハイロ・ペトロヴィッチ監督の下でシャドーのポジションを任されていることへのやりがいを口にする。

「スタメンで出られるならワイドでも喜んで出ますし、守備の役割も嫌じゃないですけど、やっぱりシャドーのほうが(サイドよりも)ゴールが近いので楽しい。大学(大阪体育大)で(ポジションが高校時代のセンターフォワードから)サイドになって、その時も結構中に入っていくプレーをしていました。クロスよりもシュート。ゴールに近いところで勝負したいと。だからこそ、もっと点を取らないといけない。負けている試合で点が取れていないので、余裕がある時にしか点を取れない選手ではダメ。チームが劣勢な時に自分のゴールで嫌な雰囲気を吹き飛ばせるようになりたいです」

8ゴールのうち、「イメージ通り」の新潟戦のゴラッソがお気に入り

 浅野に今季の8得点のうち、「納得」のお気に入りのゴールを尋ねると、「(4月23日のJ1リーグ第9節アビスパ)福岡戦のロングシュートじゃないですか(笑)。(青木)亮太くんのハンドでした。悔しいですけど、映像を見るとハンドだなと納得がいきます」と冗談交じりにビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)判定の末にゴールが取り消された約50メートルの“幻のゴラッソ”に触れたあと、途中出場で決めた3月4日のJ1リーグ第3節アルビレックス新潟戦(2-2)の今季初得点を挙げた。

「自分の形だったのは、新潟戦のゴール。本当に自分のイメージ通りでした。あの場所(ペナルティーアーク右横付近)からのシュートは普段から練習していますし、身体が勝手に動いたというか染み込ませたものが出せたと思います」

 身長173センチとサッカー選手としては決して大きくない浅野は、同じレフティーのアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(インテル・マイアミ)のプレースタイルを参考にしてきたという。

「高校生の時によく見ていたのは、メッシ、(元ベルギー代表MFエデン・)アザールですね。メッシは身長が低いのにドリブルができる。僕もずっと小さかったので、ボールの置き方とか身体を当てるタイミングを参考にしました」

 浅野が7試合連続ノーゴールの間、チームは1勝2分4敗と苦戦。3試合連続ゴール中は3連勝という結果を見ても、浅野の一撃がチームにもたらす影響は大きい。ペトロヴィッチ監督からも、積極的にプレーするようにアドバイスがあったと明かす。

「例えばクロスの入り方1つもそうですし、こないだ、監督からは『もっと怖いところに走り込め』と言われました。そういうところに入っていく回数が減っていると見えているんだと思います。コンサドーレの良さは、全員がゴールに関われること。監督のサッカーらしいなと思いますし、それが今のコンサドーレのチームカラーになっています。(チームの)雰囲気が悪いわけではないですけど、負けているとどうしても暗くなってしまう。ホームで勝って、ファン・サポーターのみなさんと喜びを分かち合いたいですし、アウェーなら笑顔で帰りたいので、やっぱり勝ちたいですね」

後半戦は「守備での運動量が求められる」

浅野はペトロヴィッチ監督が掲げるサッカーに好印象を抱いている【写真:Getty Images】
浅野はペトロヴィッチ監督が掲げるサッカーに好印象を抱いている【写真:Getty Images】

 浅野は札幌への移籍が決まった時点で、ペトロヴィッチ監督が掲げる攻撃的サッカーに対して好印象を抱いていた。レギュラーとして起用されている分、期待に応えたいと語る。

「コンサドーレの攻撃的なスタイルは、自分に上手くハマってるのかなと思います。(プロ入り後最少の試合数に終わった)去年は変な感覚がありました。落ち込むことはなかったですけど、試合の日になればオフになるので、こんな感じかあと。試合に出ていなかった僕を必要としてくれたこのチームでやっぱり結果を出したいです」

 札幌は総得点(41)が横浜F・マリノス(44)に次ぐリーグ2位なのに対し、総失点(40)はワースト3位と守備に課題を抱える。11位からの順位アップを目指す後半戦、浅野は守備をキーポイントに挙げる。

「自分の経験上、守備がしっかりできているチーム、失点を少なく抑えられているチームはここからどんどん勝ち点を積み上げていける。(サンフレッチェ)広島の時は、うしろ3枚(3バック)がしっかり守れていて、どんな速い選手も止めてくれて、あの3人のおかげで自分たちが攻撃できていました。やっぱり守備があってこその攻撃だと思ってます。今は攻撃の選手は攻撃だけしておけばいいという時代ではないし、前からボールを取れればチャンスになる。守備での運動量はどんどん求められてくるはずです」

 浅野は前半戦の活躍を受け、ゴール数に関する目標の質問を多く受けるようになったという。それでも、「1試合1試合、点を積み重ねる」スタンスは変わらない。

「最近、めちゃくちゃ言われます(笑)。二桁得点は当たり前だね、みたいな感じで。『そんなに簡単じゃないぞ』と思いながら聞いています(笑)。どこかで、しばらく点を取れていない理由を意識してしまっている気がするので、前半戦で8ゴール取ったことは忘れて、リセットして臨んでいます。まだまだ全然タイトルを獲れる順位だと思っていますし、得点の部分で、しっかり結果を残さないといけないので俺を見ていてください」

 勝利に導くゴールを目指し、浅野は後半戦もチームの先頭に立っていく。

[プロフィール]
浅野雄也(あさの・ゆうや)/1997年2月17日生まれ、三重県出身。水戸―広島―札幌。J1通算101試合19得点、J2通算34試合4得点。負けん気の強さと明るいキャラクターでチームを勢い付ける俊足アタッカー。日本代表の兄・拓磨を彷彿させるパワフルなドリブルやフリーランニングでゴールを陥れる。

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