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走りのプロ杉本龍勇氏が太鼓判の日本人スピードスター「ムバッペと戦える選手は…」 衝撃を受けた時速37キロ【独占インタビュー】
吉田や堂安らを指導する杉本龍勇氏、国内外の日本人スピードスターを分析
森保一監督率いる日本代表は6月シリーズで2連勝した。「4-1-4-1」の布陣をテストし、新たな攻撃のオプションを発揮。そのなかで、「FOOTBALL ZONE」では森保ジャパン第2次政権でもキーワードになる「スピード」に注目した特集を展開する。現役代表選手である新10番MF堂安律や最終ラインの主軸DF板倉滉、レジェンドDF吉田麻也やFW岡崎慎司らを指導してきた元陸上選手でフィジカルコーチなどを務める杉本龍勇氏が、森保ジャパンの“スピードスター”たちを分析した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の2回目)
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◇ ◇ ◇
FW前田大然、FW浅野拓磨、MF伊東純也……森保ジャパンのスピードスターを聞いて浮かぶ選手たちの名前。またプレミアリーグでもドリブルで相手の脅威となったMF三笘薫も速いと言われる。
自身はバルセロナ五輪の出場経験がある杉本氏。Jリーグ複数クラブでもコーチを務め、現在は日本代表選手やJリーガーの指導に当たっている杉本氏の目から見て、衝撃を受けた選手は誰なのか。
「カタール(ワールドカップ)の時の前田くんは速かった。ただ、GPSで24キロ以上がスプリントというけど、24キロは400mで60秒。皆さんが考えているスピードと選手たちが求めているスピードは違うと思う。三笘くんも遅くはないけど、スピードスターというタイプではない。相手のタイミングを外すのがめちゃくちゃ上手いので、速く見える」
そのなかで、カタール・ワールドカップ(W杯)の時の前田は「重心がある程度、微妙に高かったので足がちゃんと動いていた」という。一方で三笘については「走りの局面のクオリティーが上がれば、もっと体が抜けちゃうと思う。もともと相手との間合い、タイミングを見て、読んで抜けるのでベルナルド・シウバみたいになれると思う」と、さらなる“伸びしろ”に期待した。
世界を相手に戦っている日本代表だが、スピードに関して差はあるのか。
「誰と比較するかにもよるけど、そりゃ(キリアン・)ムバッペと比較しちゃうと……戦える日本人選手は恐らく宮市亮ぐらいじゃないですかね。日本人はボールを受ける時に減速をする日本人の場合は特に、スピード上げるという時の加速が下手。いわゆるワイドの選手がある程度助走をつけて、ガーッとトップスピードに上がってくるのではなく、3mでキュッと上げるというところ。例えば(マンチェスター・)シティを見ているとトップスピードがめちゃくちゃ速いというより、トップスピードに到達するまでの距離が短い」
その加速の部分を武器にしているのが岡崎慎司だ。いわゆる50m走の速さではなく、加速力を高めて短い距離でトップスピードに乗せられるか。最大の武器にしている岡崎は「人よりも動き出しが早い。人よりもぐっとその2、3歩でスピードを上げられるので、そこで差を広げたり、(DFの)裏に抜けたりするからスピードスターに見える。アウトサイドからのカットインでも減速しないのは岡崎だけ」という。
宮市のトップスピードは「37キロ」 さらに「秘密兵器」も…
また、日本人で唯一ムバッペと“戦える”と太鼓判の宮市はどうか。
「やっぱりトップスピードに関しては(時速)37キロぐらい出ちゃう。逆に言うと、彼は膝の怪我が多かった。膝の怪我をしたあと僕のところに来て、膝を使う癖がすごく強かった。今回のリハビリは、僕は関与していないけど、以前はそこを直しましたね。あとは秘密兵器がいて、菅原由勢。絶対にブレイクすると思う。オーバーラップあれだけできるのも必然。まだ姿勢が悪いのでそこを直せばもっと加速力を上げられる」
6月の日本代表戦2試合で連続の先発出場を果たし、右ウイングのMF久保建英や伊東らと好連係を見せた菅原。クロスの精度も高く、運動量も豊富だった。年齢も22歳。右SBで長年スタメンを張ってきたDF酒井宏樹の“後継者”として最も近い菅原は、ポテンシャルが高い。森保ジャパンでも重要な右サイドを支える存在になりそうだ。
世界のトップレベルとまだ壁はある。だが、選手たちは確実に次のステップへ上がるべく試行錯誤を続けている。3年後、次のW杯ではさらにレベルアップした姿が見られるはずだ。
[プロフィール]
杉本龍勇(すぎもと・たつお)/1970年11月25日生まれ、静岡県出身。陸上選手として浜松北高校、法政大学を経て1994年に豊田自動織機製作所陸上部へ入部。全日本総体100m、200mで1位、全日本大学対抗選手権も100m、200mで1位。ドイツ大学選手権でも100m、200m,で1位の成績を残し、アジア選手権大会100mで8位、同大会の4×100mリレーでは2位に輝いた。バルセロナ五輪に出場し、4×100mリレーで6位入賞を果たしている。指導者としては、浜松大の陸上部監督を務めながらサッカー部のフィジカルアドバイザーにも就任。この時にサッカー部の指揮を執っていた長谷川健太監督と出会い、その縁から2005年に清水エスパルスのフィジカルコーチに就任。湘南ベルマーレや大分トリニータでも指導し、岡崎慎司の専属コーチにも就いた。現在は法政大学で教授を務めながら、日本代表選手やJリーガーの指導に当たっている。
(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)