今季J1最速MFアダイウトン、32歳で時速35.5kmを記録の訳 警戒する“スピード系”DF2人は?「カバーリング速い」

FC東京でプレーするアダイウトン【写真:Getty Images】
FC東京でプレーするアダイウトン【写真:Getty Images】

【インタビュー】32歳アダイウトンはキャリア最速の時速35.5kmでJ1トップ

 Jリーグではさまざまな選手のデータを公開している。その1つにトップスピードというものがある。最も速いスピードでピッチを駆けたのは誰かを示すデータだ。鹿島アントラーズのMF松村優太、名古屋グランパスのFW永井謙佑(ともに時速35.1km)を抑え、2023年のJ1でトップに立っているのが、FC東京のブラジル人MFアダイウトンだ。「FOOTBALL ZONE」では、日本サッカーにおいてキーワードになる「スピード」に注目した特集を展開。Jリーグで驚異的なスピードを誇るアダイウトンの秘密に迫った。(取材・文=河合 拓/全2回の1回目)

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 これまでのシーズンでも、このスピードランキングの上位に名を連ねることがあったアダイウトンだが、32歳で迎えた今シーズンに彼が記録した時速35.5kmというのはキャリア最速の数字。年齢を重ねただけでなく、右膝前十字靭帯断裂、半月板損傷という大怪我を乗り越えたうえでの記録なのだから驚異的だ。

「スピードとパワーというのは私の特徴ですが、こういうランキングが出ていることは知りませんでした」というアダイウトンは、自身の顔写真がかつてのチームメイトでもある永井よりも上にある表を満足げに見ながら、そのスピードの根源について明かしてくれた。

「小さい頃から私はスピードがある選手でしたが、練習を重ねてスピードにも磨きをかけられたと思っています。個人的にもスピード系の練習をしますし、クラブでも練習をしてきました。単純に走る練習や筋力を上げる練習。また自分の体を効率的に動かせるようにするコーディネーション練習など、いろいろなことを積み重ねたことで、こういう数字が出せているのだと思います」

 単純に走るスピードでリーグ最速の記録を叩き出しているアダイウトンだが、そのスピードを生かすために特に重要視しているのが、「初速」だという。

「プレーするなかで、特に注意していること、最も大事だと思っているのは最初の加速の部分、トップスピードに入るところです。トップスピードに上手く入ることができたら、そのままスピードを生かして、相手をぶっちぎることができます。最初のスタートでどれだけ加速できるかを意識しています」

 Jリーグでプレーしたなかでは、ジュビロ磐田時代のチームメイトであり2021年のJ2で得点王に輝いたFWルキアン(現アビスパ福岡)のスピードが印象に残っているという。

「一緒にプレーしていたルキアンもすごく速かったですね。僕と彼のスピードは、相手に脅威になっていたと思います。(チームに)速い選手が複数いれば、相手のセンターバックも、どっちを注意すればいいか絞れませんからね。逆にスピードのあるDFには、戸惑うこともあります。『抜けた』と思っても、シュートを打つ時に追い付かれてブロックされてしまいます。ジュビロ磐田でチームメイトだった川崎フロンターレのDF大南拓磨、DFジェジエウは、スピードがあって、カバーリングも速い選手なので注意が必要です」

 若い頃はスピードを武器にプレーしていた選手でも、キャリアの晩年に差し掛かるとフィジカル能力の衰えから、プレースタイルを変えることは珍しくない。だが、アダイウトンは「自分のスタイルを変えるつもりはない」という。

「年齢の話をされましたが、自分の中ではフィジカルがそれほど落ちているという気持ちがありません。むしろもっともっと上げていかないといけないと思っているので、スピードを生かしたスタイルで続けていくつもりです」

自らキーマンに名乗り 「後半戦は喜んでもらうために、もっと頑張っていきたい」

 アダイウトンも負傷離脱をしているFC東京は上位争いに絡めず、前半戦を終えた段階でアルベル・プッチ・オルトネダ監督が退任して、新たにピーター・クラモフスキー監督を招聘した。

「今シーズン、こういう結果になっていることは非常に残念です。シーズンの初めはそんなに悪くなかったけれど、途中から結果が出なくなりました。監督が代わるような成績になったことには、私たち選手にも力が出せなかった責任があるので、反省しなければいけません。新しい監督が来たなかで、私は怪我のため練習に参加できていませんが、選手たち全員が高いモチベーションで練習に取り組んでいます。外から練習を見ていても、後半戦は、その気持ちを持っていけばいい結果が出るのではないかと思っています」

 シーズン後半戦の逆襲に、アダイウトンも貢献したいと意気込む。「もちろん、私も早く怪我を治して、戦列に戻りたいですし、チーム全員がもっとパワーを使って試合に向かっていかないといけないと思っています。前半戦を終えて、ファン・サポーターの人たちも悲しい思いをしていると思うので、後半戦は喜んでもらうために、もっと頑張っていきたいと思っています」と、活躍を誓った。

 圧倒的なスピードとパワーで相手守備を切り裂き、味の素スタジアムを熱狂させるアダイウトンの姿を後半戦で、また見られるはずだ。

[プロフィール]
アダイウトン/1990年12月6日生まれ、ブラジル出身。フォルタレーザEC―ECヴィトーリア―イトゥアーノFC―ジョインヴィレEC―イトゥアーノFC―AAポンチ・プレッタ―パラナ・クルーベ(いずれもブラジル)―磐田―FC東京。J1通算221試合52得点、J2通算39試合17得点。スピードに定評があり、スペースを使った攻撃やドリブルでの突破も得意とするJリーグ9年目のアタッカー。空中戦も強く、攻撃の起点になれる。

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