7戦負けなしの岐阜は「助走段階」 ベテラン田中順也が見据える“試合巧者”への道

岐阜をJ2に昇格させるべくベテランとして牽引する田中順也【写真:(C)Kaz PhotographyFC GIFU】
岐阜をJ2に昇格させるべくベテランとして牽引する田中順也【写真:(C)Kaz PhotographyFC GIFU】

【インタビュー】J3初挑戦の昨季は不完全燃焼で「歯痒かった」

 FC岐阜は今季、日本代表のコーチも務めた上野優作氏を監督に迎え、「躍動感のあるフットボールを展開し、アグレッシブにゴールを目指すチーム」を目指してきた。一時は4連敗でJ3リーグの18位まで順位を落としたが、5月14日の第10節カマタマーレ讃岐戦(2-0)から7戦負けなし(5勝2分)で7位まで浮上。2019年以来のJ2昇格を狙うチームの状況を、ベテランの元日本代表FW田中順也に訊いた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)

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 岐阜は昨季、開幕前にDF宇賀神友弥、田中と元日本代表コンビを補強。2021年に加入したMF柏木陽介、MF本田拓也(22年限りで現役引退)、FW石津大介(現テゲバジャーロ宮崎)、MF菊池大介(23年にフットサルプレーヤーに転身)らJ1経験者を数多く擁する強力な陣容でシーズンに臨んだが、14位(10勝7分17敗)フィニッシュに終わった。

 柏レイソル時代に国内3大タイトル獲得、ヴィッセル神戸時代にも天皇杯優勝を経験し、14~16年にはポルトガルリーグにも挑戦した百戦錬磨の田中も、初のJ3リーグでは24試合で3得点と不完全燃焼。「J2、J1も難しいですけど、J3はまた難しさの種類が全然違う。J1で活躍できたからJ3で活躍できるかはまた別問題。同じサッカーでも、そのリーグに慣れないといけないので、去年は歯痒かったです」と、苦しかったシーズンを振り返る。

 森保一監督率いる日本代表のコーチも務めた上野新監督を招聘し、若返りを図って迎えた今季、右アキレス腱断裂で柏木が長期離脱していたこともあり、4月8日の第6節愛媛FC戦(1-2)から4連敗を喫した際には、順位も20チーム中18位まで低迷した。しかし、5月14日の第10節讃岐戦で連敗をストップすると、現在は首位に立つカターレ富山に1-0で勝利して勢いに乗り、7戦負けなしと巻き返している。

「躍動感のあるフットボールを展開し、アグレッシブにゴールを目指すチーム」作りを進めてきたなかで、直近7試合は9得点2失点。田中は「積み重ねが形になるにはすごく時間がかかります」と前置きしたうえで、守備の安定がチーム全体のリズムを生んでいると分析する。

「攻撃で、コンビネーションのバリエーションは数多く落とし込まれています。それをどのタイミングで発動するかは、選手たちの創造性、閃きにも左右される。上野監督から与えられている戦術はしっかりとしたものがあるので、それを体現していくだけです。でも、やっぱりハードに守備もしないといけない。押し込んで自分たちの時間を増やすことが目標ですけど、押し込んだチームが試合に勝てるわけでもないので。

 僕の経験上、チーム全員が90分間を通して真面目に守備に取り組み、無失点が増えて、守備で好循環が生まれた結果、攻撃で得点が増えていくというのが、長いシーズンを乗り切るための絶対条件です。今はその助走段階。6戦負けなしは守備が安定してきた証拠。いい守備からいい攻撃をベースに、試合巧者になっていくことが大事だと思います」

後半戦は出場時間&ゴール数アップが目標

田中順也はスーパーサブ役としての起用を前向きに捉えている【写真:(C)Kaz PhotographyFC GIFU】
田中順也はスーパーサブ役としての起用を前向きに捉えている【写真:(C)Kaz PhotographyFC GIFU】

 35歳の田中は出場14試合中12試合が途中起用とスーパーサブ役を託されていることに関して、「ベテランとして、試合の流れを見て、途中出場で出る形が多いです。今、チームは調子が上がってきていますし、1分でも1秒でもチームのために働ければいい。短い時間で得点を取るというのは、昔からずっとやってきたこと。タイトルを獲れるのであれば、与えられた役割に徹したいと思います」と、前向きに捉える。

 柏木も5月28日の第11節富山戦で約8か月ぶりに公式戦復帰。6月11日の第13節アスルクラロ沼津戦(0-0)からはスタメンに名を連ねており、チームの勢いを加速させている。田中は、「陽介の復活はチームにとってはとにかくプラス。ウガ(宇賀神)の安定感もとてつもなく大きいです。試合を観察して、流れを読めるのが僕らの強み。苦しい時間帯に、ギアチェンジできるような役割がベテランとしてできたら、という話は常にしています」とチーム力に充実感を覗かせる。

 間もなくシーズンの折り返し地点を迎えるなかで、混戦のJ3は後半戦勝負となるのは間違いない。田中は「J3はフィジカルが特別で、芯があるチームが多い。驚くようなイレギュラーも起こったりするので、とにかく面白いです。サッカーは甘くない(笑)。でも、だから楽しいんだと思います」と笑顔を見せつつ、19年以来のJ2昇格を見据えて意気込む。

「去年J3にアジャストし切れなかったところを今年ぶつけたい。出場時間プラス、ゴール数が増えることが、個人的にはそのリーグに適用していくバロメーターだと思います。ここまで、ペース良く2点取れているので、ゴール数を引き続き意識しつつ、順位を上げていく。『J3は難しいから謙虚にやろう』と、ベテラン組を含めてみんなで話し合っています。その難しさを『難しい』で終わらせず、攻略することがタイトルに近づく道だと思うので、攻略できるように頑張ります」

 新たな歴史を作ろうとする岐阜の中で、百戦錬磨の田中がどのようにチームを支えていくのか、今後も目が離せない。

[プロフィール]
田中順也(たなか・じゅんや)/1987年7月15日生まれ、東京都出身。柏―スポルティング(ポルトガル)―柏―神戸―岐阜。J1通算228試合51得点、J2通算24試合6得点、J3通算37試合5得点、日本代表通算4試合0得点。J1リーグ、ルヴァンカップ、天皇杯の国内三大タイトル獲得、欧州挑戦と経験豊富なレフティー。自慢の左足から目が覚めるような強烈な一撃を放つ。

(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)



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