2戦10発のチームをテコ入れ? 森保監督が9月にメンバー半数入れ替えを予感させる理由

6月の2連戦で10ゴールを奪った日本代表【写真:徳原隆元】
6月の2連戦で10ゴールを奪った日本代表【写真:徳原隆元】

【識者コラム】新戦力発掘は10月から選手を入れ替えつつ、組み合わせを変えてトライ

 森保ジャパンは6月15日のエルサルバドル代表戦、20日のペルー代表戦と続けて快勝し、カタール・ワールドカップ(W杯)から進化した姿を見せた。

 エルサルバドル戦では久保建英、堂安律のコンビが相手をきりきり舞いさせ、ペルー戦では伊東純也、三笘薫に鎌田大地が絡み、鋭く相手を切り開く。森保一監督が「ミドルブロック」と呼ぶ中盤でのブロックも相手の攻撃を引っかけてチャンスを作らせない。

 守備では谷口彰悟、板倉滉の川崎でも、そして日本代表でもお互いをよく知る利点を生かし、チャレンジ&カバーの妙味を見せた。旗手怜央は守田英正、三笘薫という元川崎勢との絶妙な呼吸でポジションを細かく修正し、能力の高さを示した。

 6月の日本代表は3月に出た課題を解決し、一定の成果をあげた。もちろん今回の活動でも課題は出てきたが、まずは今回のメンバーと組み合わせならばFIFAランキングで同等程度の相手ならば十分勝利が計算できると分かった。

 普通なら成果を出したこのチームの次の手として考えられるのは、久保・堂安のコンビを中心にしたユニットと、伊東・鎌田を組ませたユニットの2つをそれぞれ熟成させていくことになるだろう。

 目の前の勝利だけを考えると、現在の2ユニットのうち調子のいいほうを先発に持ってきて戦うのがいい。9月のドイツ戦などは現在のチームがどの程度の力を持っているのか計るのにいい対戦相手だ。新戦力発掘のためには、10月の2試合から選手を入れ替えつつ、組み合わせを変えて試せばいい。

森保一監督はメンバー入れ替えやシステムのテスト実施を示唆【写真:徳原隆元】
森保一監督はメンバー入れ替えやシステムのテスト実施を示唆【写真:徳原隆元】

森保監督自身、メンバー入れ替えやシステムのテスト実施を示唆

 こうやって戦えば、10月まで森保監督に批判が集まることは少ないはずだ。ドイツ戦は勝てば称賛、負けても「ランクの差」という言い訳がある。10月は人気が出そうな新戦力を招集すれば、こちらも勝利で絶賛、敗戦で「まだこの選手を呼ぶには早かった」という話になる。

 だが、森保監督は今回のチームを解体するのではないだろうか。3月の新生森保ジャパンが2022年カタールW杯チームを壊して作り直したのと同じように、今回もまた日本代表を刷新するに違いない。そう考えるに足る発言を監督自身がしている。

 ペルー戦後の記者会見で森保監督はこう語っていた。

「今回も2試合で選手の起用を変えたなかで、チーム全体や個々のつながり、右サイド、左サイド、前線と、ディフェンスの選手という、ユニットとなるようなグループの部分でも試していきたいと思って戦いました。どこで絞るか公式戦では必要かと思いますが、可能な限り誰と組んでも機能するという部分のトライをしながら、最善、最適な、組み合わせを考えていきたいと思います」

 さらに、ペルー戦の翌日の取材ではさらに詳しく説明した。

「ここで満足ではないと思いますし、ここは目標ではないので、すべての部分でまだまだレベルアップしないといけない。システムで言うと4-1-4-1、4-2-3-1ですけど、それを、3バックなどいろんなことは試していきたいと思います。いろんな組み合わせもできると思いますので、今後、人の組み合わせという部分でも、さらにいろんなことができると思います」

 代表チーム内でも同じような発言があったのではないだろうか。それはペルー戦後の久保のこんな発言から推測される。

「いろんな選手と一緒に出ることがあると思うので、僕も堂安選手もお互いに依存しすぎずに、誰と出てもやれないでは代表ではダメだと思う」

10月シリーズではコンビネーションの熟成を目指すべき?【写真:徳原隆元】
10月シリーズではコンビネーションの熟成を目指すべき?【写真:徳原隆元】

10月シリーズはコンビネーションの熟成に使ったほうがベターか

 日本にとってドイツ戦よりも優先順位を高く考えなければいけないのは、11月に始まるW杯アジア2次予選だ。今回からアジアの出場枠が8.5か国に増えて前回よりも楽に戦える——が故に考えなければいけないことがある。それはできる限り早々に突破を決めることが必要だということだ。

 アジア2次予選は4チームずつの9グループに分かれて、上位2チームが3次予選に進む。そして6チームずつの3グループに分かれる3次予選では、上位2チームがW杯出場となる。

 現在日本はFIFAランクでアジア最高の20位。2026年アメリカ・カナダ・メキシコW杯でベスト8以上を狙うためには、アジア勢よりもほかの地域の強豪国との強化試合を組まなければいけない。

 だが、アジア勢との戦いに落とし穴が待っていることは、第1次森保ジャパンでも痛いほど経験がある。ヨーロッパ組が多い日本は、選手が帰国した翌日、翌々日に試合が組まれるのだ。11月の2次予選も、直前の調整試合などなく、そのまま本番の予選となる。

 となれば、10月はコンビネーションの熟成に使ったほうがいい。できれば9月のメンバーから入れ替えても少数というのが望ましいだろう。ならば9月に新戦力を多く呼ばなければ、今年いっぱいは6月とあまりメンバーが変わらないということになる。

 では、果たしてそれでいいのか。次なる問題としては、2024年1月12日に開幕するアジアカップの位置づけをどうするかということが発生するのだ。長期間選手を拘束できるアジアカップは、新生森保ジャパンの戦いのベースを作るのにいいチャンス。そこに代表経験の少ない選手を入れて、その後代表に定着できなければもったいない。

 そして、そもそも6月のメンバーのまま固めるのには先が長すぎる。2018年、森保監督が2回目の活動で招集したメンバーのうち、2022年W杯のメンバーになったのは11人(権田修一、冨安健洋、伊東純也、南野拓実、柴崎岳、堂安律、長友佑都、遠藤航、酒井宏樹、吉田麻也、シュミット・ダニエル)しかいない。その割合で行くなら、今回の招集メンバーのうち、半分以上は入れ代わる可能性がある。

 そう考えると、9月の活動では多くの選手を入れ替えたほうがいいのではないか。新チームに移籍したばかりの選手は呼びづらいということも考えて、今回の成果を出したチームをあえて解体したほうがいいのではないか。森保監督がそう考えてもおかしくない状況になっている。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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