元主審・家本氏が推奨する“賢い”競り合いとは? 日本のクレバーな選手も列挙「相手に身体をポンと当てて…」

日本代表の伊東純也【写真:高橋 学】
日本代表の伊東純也【写真:高橋 学】

【専門家の目|家本政明】ペルー戦で起こったヘディングのファウルシーンを基に考察を展開

 サッカーの試合では、ヘディングの競り合いの際に「どちらのファウルなのか?」と判断が難しいシーンがよくある。6月20日の国際親善試合、日本対ペルーの代表戦(4-1)でも、MF伊東純也(スタッド・ランス)が相手とのヘディングの競り合いで背中から落ちる場面があった。こうしたヘディングでのファウル判定について、元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏が経験やルールを基に解説している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 ヘディングで選手同士が競り合う際、片方がジャンプせず飛ばないことで、勢い余って競り合おうとした選手が転倒する場面はサッカーで起こり得る事象だ。ペルー戦の伊東のシーンも同じようなシチュエーションだった。高く上がったボールに対し、伊東とペルーのMFジョシマール・ジョトゥンが対峙。ジャンプヘッドを試みた伊東は、ボールを避ける形となったジョトゥンを越して背中から地面に着地した。

 日本のフリーキックとなったこのシーンについて、家本氏は「ヘディングで競らなかったことで、結果的に相手を危険な目に遭わせてしまったという妥当な判断だった」とジョトゥンのファウルの判定は正しかったと考察した。

 そのうえで「ヘディングを競ろうとしなかったのか競れなかったのか、すごく判断が難しい。そういう場面はサッカーによくあることです」と普段の試合でも往々にして起こる事象だと説明。「毎回飛ばなきゃいけないのかという意見もある。ただ、少し身体を寄せた結果、相手を危険な目に遭わせる、それを誘発してしまったと審判に判断された場合は反則となってしまいます。競技規則でも『結果的に』という文言が書かれている」と、レフェリーの判断基準を解説している。

 一方で、身体が強く、浮き球を懐に収めるのが得意な選手もいる。家本氏は「サッカーでは、相手を倒すと反則として捉えられる可能性が高くなる。身体を当てて、相手との競り合いを制するほうが賢い。相手に身体をポンと当てて止めて自分がボールを保持するというのは非常にクレバーなやり方ですね」と、キープ力で違いを見せるプレーこそが一番の理想だと指摘する。

 力強いポストプレーを強みとする日本人選手で浮かぶのが、15日のエルサルバドル戦で活躍した上田綺世(セルクル・ブルージュ)やヴィッセル神戸FW大迫勇也あたりだろう。家本氏も「彼らはそういうプレーが上手いですよね」と称えつつ「すべての選手がそういうクレバーな競り合いをしてほしい。競り合いの勝負に勝つってそういうことだと思います」と、これまでのレフェリーとしての経験則を踏まえ、持論を展開していた。

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家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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