Jリーガー「過小評価」されている7人 実力は代表クラス、遠藤航級のスーパーボランチになり得るタレントも

左から永戸勝也、佐野海舟、伊藤敦樹、齊藤未月【写真:Getty Images】
左から永戸勝也、佐野海舟、伊藤敦樹、齊藤未月【写真:Getty Images】

【識者コラム】代表レベルにふさわしい活躍を見せるJリーグの実力者をピックアップ

 森保一監督は6月シリーズに向けた日本代表メンバー26人を発表した。Jリーグからは4人。前回から引き続き招集された大迫敬介(サンフレッチェ広島)に加えて、川﨑颯太(京都サンガF.C.)、川村拓夢(広島)、森下龍矢(名古屋グランパス)が初招集となったが、海外組だけでなく、Jリーグで代表にふさわしい活躍を見せる実力者はまだまだいる。“過小評価”されているJリーガーという基準なので、筆者が言及するまでもなく、ファンの誰もが名前を挙げる伊藤涼太郎(アルビレックス新潟)や浅野雄也(北海道コンサドーレ札幌)、またA代表経験者である大迫勇也(ヴィッセル神戸)などは対象外とした。

■齊藤未月(MF/ヴィッセル神戸)
今季リーグ成績(J1):12試合0得点

 J1の首位を走る神戸を中盤の底から支える高強度なMF。神戸といえば大迫や武藤嘉紀の名前が真っ先に挙がるが、齊藤の働きを抜きに神戸の躍進は語れない。

 2019年のU-20ワールドカップでキャプテンを務め、東京五輪世代の主力としても期待されたが、湘南ベルマーレから移籍したロシアのルビン・カザンでプレシーズンの怪我や復帰後の不遇にも見舞われ、本大会の候補からもフェイドアウトしてしまった。

 さらに同国の政情不安もあり、昨年は湘南から期限付き移籍という形でガンバ大阪に加入。苦しむチームの奇跡的な残留に貢献したが、さらなる成長の環境を求めて神戸に来た。

 明るく前向きで、どんな場所でも物おじしない性格も強みだ。吉田孝行監督の掲げるハイプレスと縦に速い攻撃スタイルに特長がはまっている感もあるが、課題だったファーストパスなど、攻撃面もアップデートしており、いつA代表に呼ばれても十分に実力を発揮できるはずだ。

■永戸勝也(DF/横浜F・マリノス)
今季リーグ成績(J1):13試合1得点

 クラブでの輝きとは裏腹に、日の丸には全く縁がないキャリアを送ってきている。ただ、その理由は選ぶ側の問題だけではない。ベガルタ仙台入りを前にした、大学4年の夏に膝を負傷し、プロ1年目にも全治半年の怪我をしてしまうなど、世間の評価が高まりかけては離脱という繰り返しでもあった。

 それでも「人生死ぬこと以外かすり傷」という言葉に励まされて、鹿島アントラーズ、横浜F・マリノスと着実に積み重ねて現在に至っている。左足のクロスという最大の武器は言うわずもがな、守備やハードワーク、そして巧妙なビルドアップでも存在感を際立たせる。気が付けば28歳だが、ここまでの成長曲線を考えても、ピークは先にあるように思える。

Jリーグ屈指の対人を誇る札幌DFは「もっと語られるべき」存在

■伊藤敦樹(MF/浦和レッズ)
今季リーグ成績(J1):12試合1得点

 アジア制覇を成し遂げた浦和の中軸であり、プレーのインパクトという意味ではJ1のボランチでもスペシャルなものがある。守備のタスクをこなしながら、周囲に起点ができれば迫力ある攻め上がりを見せる。ボールを失った瞬間の切り替えも素早く、即時奪回の急先鋒として、マチェイ・スコルジャ監督の信頼を得ている。

 そのスタイルから考えると、ここまでリーグ戦1得点というのは寂しい気もするが、質を高めていけば、浦和OBでもある遠藤航(シュツットガルト)のようなスーパーボランチになっていける資質はある。欧州組になることが代表の登竜門のように言われるが、アジア王者の浦和には秋に始まる次期AFCアジアチャンピオンズリーグも、年末のクラブワールドカップも用意されている。「浦和を背負う責任」を担いつつ、アピールしていくチャンスは十分だ。

■岡村大八(DF/北海道コンサドーレ札幌)
今季リーグ成績(J1):14試合1得点

 対人の強さにおいてJリーグ屈指で、マンツーマンをベースとする札幌の最終ラインにあっても、外国人助っ人のような存在感で攻撃的なチームの自陣を防衛している。直近のリーグ戦では湘南ベルマーレ戦で相手エースの町野修斗、京都サンガS.C.戦でパトリックと熱いバトルを演じた。

 最近はディフェンスリーダーとして、統率面にも進歩を見せる。大卒後、2019年に当時J3だったザスパクサツ群馬入りしプロキャリアをスタート。日本代表とは無縁のキャリアだが、札幌で活躍して日の丸を付けるという思いを隠さない。J1最多得点のチームなので守備の選手が評価されにくいが、勝利の裏には屈強なセンターバックの支えがあることはもっと語られるべきだ。

■佐野海舟(MF/鹿島アントラーズ)
今季リーグ成績(J1):8試合0得点

 その名のとおり、ボールを回収するセンスは海外組も含めて、日本人トップレベルだろう。J2 のFC町田ゼルビアから加入して1年目で、鹿島の難しい環境にもフィットしてしまった適応力も特筆級だ。元日本代表DFである岩政大樹監督も、鹿島の代表候補として真っ先に佐野の名前を挙げる。

 順調なら6月の代表入りにも期待は高まったが、4月9日の柏レイソル戦で左膝を怪我してしまった。5月14日の名古屋グランパス戦で復帰したが、リーグ戦では途中出場が2試合、ルヴァン杯の柏戦にスタメン起用されただけなので、代表スタッフに不満は言いようがない。

 前回の3月シリーズで招集された藤井陽也(名古屋)と同じく、2000年の12月生まれという“超谷間世代”だが、ここから順調にパフォーマンスを上げていけば遅かれ早かれリストに載って来るはずだ。現在U-20ワールドカップに出場している佐野航大(ファジアーノ岡山)の兄でもある。2人が同時にA代表のピッチに立つことも夢ではないだろう。

好調・町田ストライカーはパリ五輪代表での飛躍にも期待

■戸嶋祥郎(MF/柏レイソル)
今季リーグ成績(J1):9試合0得点

 チームのために汗をかく。90分間の集中力が際立つ選手で、しかも状況に応じて攻撃的にも守備的にも振る舞える。“交代カードの要らない選手”と言っても過言ではない。

 ボールを奪うという仕事も色々ある。たとえばデュエルでガツッと奪う能力は遠藤航がピカイチだろうし、勢いよく相手に当たって周りのボール奪取を助けるなら、ここでも挙げた齊藤未月、パスカットは佐野海舟が抜群に上手い。一方で戸嶋の場合はセカンドボールに誰より早く反応して、サクッと拾って味方につなげる。

 攻撃面も目に見えるゴールやアシストを量産するタイプではないが、柏のゴールを振り返れば大体絡んでいる。彼もまた永戸勝也などと同じく、大きな怪我を乗り越えてピッチに立っている選手の1人でもある。ネルシーニョ前監督から井原正巳新監督に交代したチームの浮上には欠かせない1人だ。

■平河 悠(FW/FC町田ゼルビア)
今季リーグ成績(J2):17試合4得点

 今回唯一、J2からピックアップした。町田が首位を走っているということもあるが、2001年生まれでパリ五輪代表の資格もあり、森保監督というより、6月の同時期に欧州遠征を予定する大岩剛監督に対する“圧”も兼ねている。

 4-4-2の右サイドで黒田剛監督や金明輝コーチの厳しい戦術タスクをこなしながら、FWの選手らしい鋭い飛び出しやゴール前に絡む動きを見せて4得点を記録している。5月21日の清水エスパルス戦(2-1)では相手のミスを逃さずにボールを拾い、GK権田修一をかわして流し込んだ狡猾なゴールは象徴的だ。

 山梨学院大の3年時に2年後の加入内定を勝ち取り特別指定選手として活躍。“大卒ルーキー”だが実質3年目の今シーズンは押しも押されもせぬ主力として“理不尽エース”のエリキらと町田の攻撃を牽引する。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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