苦闘が続く香川の現在地 アーセナル戦直後に見せた日本人MFの葛藤

今の香川とドルトムントに欠けているもの

 

 そんな質問の流れの中で、「イングランドに戻って来て懐かしいことは?」という問いがあった。すると香川は「やっぱりスタジアムの雰囲気は素晴らしいですし、相手も素晴らしいチームで、やっぱりこういう雰囲気っていうのはいいですね」と答え、今季の開幕直後まで在籍したプレミアの雰囲気を称えた。

 しかし「久々のイングランドでの試合で、特別な思い入れみたいなものはあったか?」と聞かれると、「そんなことは全然ないです」と応じ、冒頭の「そんな余裕はない」という発言につながった。

 とにかく結果が欲しいと話す。そのためには「泥臭いサッカーでもいいですから、結果と内容を徐々に高めていく」ときっぱり。手段を選ばず、勝利を目指すという。しかし「いきなりすぐなるとは思わないですし、そこは辛抱強くなるしかないと思います」と語って、本調子への道はまだまだ険しいことも示唆した。

「メンタル的にやっぱり勝利がない分、チームとして勢いであったり自信が出てないのかなって思う。それ(自信)は本当にメンタル次第で、前進するためには自分たちを信じてやっていくしかない」

 体は動いている。ボールタッチも問題はない。しかし今の香川とドルトムントに欠けるものは、本人も認めるように『自信』という、やっかいな精神面の領域だ。

 日本代表MFは、その自信は泥臭い勝利を続けることで再びドルトムントに宿ると予言する。

 しかしチームの現状は、ここ数年、ブンデスで激しいライバル関係を展開してきたバイエルン・ミュンヘンとは12試合消化時点ですでに絶望的な19点差。それどころか、現在16位のドルトムントと17位ブレーメンとの勝ち点差はわずかに『1』で、現実的には2部降格を心配しなければならない位置にいる。

 もちろんそのブンデスの位置を気にしたからこそ、主力を休ませ、このアーセナル戦の敗戦に結びついたのだが、勝利のメンタリティが欠乏した現在のドルトムントでは予定調和の負けも、香川の心に暗い影を落とすようである。

【了】

森昌利●文 text by Masatoshi Mori

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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