森保ジャパンの欧州組が示す“守備の上手さ” 元国際主審・家本氏が感じた国内組と「圧倒的に違う」点は?

家本氏は欧州で戦う選手たちの守備の上手さに言及【写真:Getty Images】
家本氏は欧州で戦う選手たちの守備の上手さに言及【写真:Getty Images】

【専門家の目|家本政明】欧州組の守備の特徴や、国内リーグの選手の印象を明かす

 森保一監督率いる日本代表は3月28日、キリンチャレンジカップ2023でコロンビア代表と対戦する。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏は欧州で戦う選手たちの“守備の上手さ”について審判目線で語っている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 日本は第2次森保ジャパンの初陣(24日)でウルグアイ代表と対戦。先制点を与えながらも後半投入した選手の活躍もあり1-1のドローで試合を終えた。個々のキープ力のうまさが光ったウルグアイを相手に、ボールを奪い切れない場面もあった日本。それでも“デュエル王”ことMF遠藤航(シュツットガルト)を筆頭にヨーロッパで戦う選手の守備能力の高さに家本氏は注目した。

「下手にボールを奪いに行かない。相手を倒すように激しくいかない、手を下手に使わない。そのあたりのさじ加減を分かっているのが遠藤選手。ボールを奪う時の行き方やタイミング、身体の当て方が本当に上手い。新たに日本代表に加わったディフェンス陣(瀬古歩夢や菅原由勢)も海外中心なので身体の当て方やタイミングなど良く分かっていた」

 現在海外で活躍する菅原由勢(AZアルクマール)、瀬古歩夢(グラスホッパー)、板倉滉(ボルシアMG)、伊藤洋輝(シュツットガルト)が並んだ最終ラインも安定しており、家本氏はヨーロッパでの経験が活きていると推測する。

 一方で、「日本(Jリーグ)で活躍する選手の多くは何でもかんでも強くいって相手を不必要に倒してしまう、手を不正に使って止めてしまう選手が多いと感じる。でもそれでは世界に通用しない」と違いを指摘。「ディフェンスはある意味倒したら負けなので、相手を無駄に倒してしまうと反則が起きたのではないかと見られてしまう。国内の選手はこの部分で上手くないと思うことが多い」と審判の目線から意見を述べた。

 では、家本氏が考える“良いディフェンス”とはどんなものなのか。ヨーロッパで戦う選手の特徴をまとめてくれた。

「できるだけ相手に接触しないようにしてボールを奪う、身体を強く当てても相手を倒さないようにボールを奪う。仮にボールが奪えなくても、少なくとも相手の攻撃を遅らせる。または自由にプレーさせない。ヨーロッパに行っている選手は、このあたりが(国内リーグの選手と)圧倒的に違うと思う」

 ウルグアイ戦で同点弾を決めた西村拓真(横浜F・マリノス)も走力と献身的な守備が定評の選手だが、ロシアのCSKAモスクワやポルトガルのポルティモネンセでプレーした経験を持つ。

 家本氏は「西村選手は相手から嫌がられるタイプ。彼も下手にガツンと相手に当たりにいかない。パスコースに身体を投げ出すなど向こうで学んだ守備をしている。昔からガツンと当たる守備をしない選手だった印象で、前線からの積極的なプレスは森保さんの構想にハマるのではないか」と持論を展開していた。

コロンビアと24日に対戦した韓国選手の印象も明かす

 28日に日本はコロンビアと対戦するが、そのコロンビアは韓国代表との国際親善試合(24日)を行い2-2のドローに終わっている。乱闘騒ぎも起こる荒れ模様となり、韓国側からは「危険なファウルが多く荒い」とコロンビアのラフプレーに批判が起こっていた。

 一方の韓国もフィジカルを活かした激しいプレーが印象的だ。家本氏は「試合を見ていないのでどういう内容だったのかわからないが、韓国はガツンと行く印象がある。それは凄く相手が嫌がる。“削る”と良いディフェンスは全然違う」と特徴を話し、現役時代によく韓国代表の試合を裁いた経験から「対戦相手はガツンとぶつかられてよく怒っていた」と振り返った。

 日本代表は、今回のキリンチャレンジカップで招集した23人中19人が海外組となっている(前田大然は26日に怪我で途中離脱)。ヨーロッパで活躍する選手がメインとなっている日本の守備の“上手さ”は、1つのアドバンテージなのかもしれない。

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家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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