驚きがてんこ盛りの“クラシコ”…多彩な変化と対応のハイレベルな攻防 スペインの両雄がずっと強いのも納得

濃厚な90分となったラ・リーガ第26節のクラシコ【写真:ロイター】
濃厚な90分となったラ・リーガ第26節のクラシコ【写真:ロイター】

【識者コラム】バルセロナ対レアル、同じチーム同士の対戦で大きく変わった試合内容

 ラ・リーガ第26節、FCバルセロナ対レアル・マドリーはクラシコ3連戦の2戦目。いろいろな要素がてんこ盛りの非常に濃い試合だった。

 国王杯(コパ・デル・レイ)の第1戦はサンチャゴ・ベルナベウでバルセロナが1-0で勝利していたが、レアルの攻勢を凌いでの辛勝。ところが、カンプ・ノウでのリーグ戦ではバルセロナがボールを支配していた。国王杯ではアウェーの戦いに徹したとも言えるが、同じチーム同士でこうも内容が違うのがまず驚き。ホームの力ということだろうか。

 しかし先制したのはレアル。エドゥアルド・カマヴィンガ、ヴィニシウス・ジュニオールがボックス内に侵入し、ヴィニシウスのクロスボールがロナウド・アラウホに当たってのオウンゴール。この攻撃力を警戒しての国王杯第1戦の戦略だったのだろう。アンカーに定着しているカマヴィンガの攻撃力が印象的。カゼミーロ(現マンチェスター・ユナイテッド)とは異なるタイプのピボーテである。長年レアルを支えてきたルカ・モドリッチとトニ・クロースの会話を交わすようなパスワークも味わい深いものがあった。

 失点はしたがバルセロナの攻勢は変わらず、45分に波状攻撃からセルジ・ロベルトがゲットして1-1で折り返す。後半も25分あたりまではバルセロナがボールを支配して押し込んでいた。

 レアルは激しい消耗戦に疲弊したモドリッチを前線近くに残し、右ウイングのフェデリコ・バルベルデが引く。かわりに右サイドバックのダニエル・カルバハルが高い位置で幅を取る変則的なシステムに変えて対抗していたが、後半32分に3人を交代。モドリッチもバルベルデも引っ込め、ダニ・セバージョス、オーレリアン・チュアメニの2ボランチによる4-2-4として、右にはマルコ・アセンシオを投入した。

 すると、息を吹き返したレアルが一転して攻勢をかける。後半36分にはアセンシオがネットを揺らすが際どいオフサイドでノーゴール。消耗戦のなか、交代カードを切って流れを一転させたレアルの戦術と選手層が圧巻だった。

体力的にも精神的にもぎりぎり…1つや2つのポイントではまとめられない変化

 あと一歩までゴールに迫るレアル、耐えながらカウンターを繰り出すバルセロナ。後半アディショナルタイム2分、ロベルト・レバンドフスキのヒールキックで左サイドに抜け出したアレハンドロ・バルデのロークロスをフランク・ケシエが丁寧に合わせて2-1。これが決勝点となった。

 ブラジル代表の両翼であるバルセロナのラフィーニャ、レアルのヴィニシウスの個人技や欧州を代表する9番であるレバンドフスキ、カリム・ベンゼマの競演も見応えがあった。どちらが勝ってもおかしくないシーソーゲーム、何度も天候が変わる奇妙な1日のような90分間だった。

 今回はこれぞクラシコという内容だったわけだが、個々の選手の能力や個性、チーム戦術の変化や多彩さ、体力的にも精神的にもぎりぎりの攻防など、ハイレベルなゲームでは1つや2つのポイントではまとめられない変化がある。そうした変化に対応していくことが最低限求められている。

 切磋琢磨というが、このクラシコが3試合続くのだから、スペインの両雄がずっと強いままなのも納得である。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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