1年でのJ1復帰へ、J2清水の春季キャンプに密着 「最善で最強で最良のチーム」に向けて準備着々

昨季からチームを率いるゼ・リカルド新監督【写真:下舘浩久】
昨季からチームを率いるゼ・リカルド新監督【写真:下舘浩久】

得点王争い? ディサロとサンタナの2人が掲げる目標

 7日目の2月1日には移籍を模索していたFWチアゴ・サンタナ、MF松岡大起、GK権田修一の3人の契約更新が発表された。それぞれに理由はあったが清水においてはここまで去就が長引いた例はなかった。結果的にキャンプ直前にチームを離れラシン・クルブ・ドゥ・ストラスブール・アルザスへ期限付き移籍したMF鈴木唯人以外の3人全員が残留することになった。

 1年でのJ1復帰に向けて、クラブは大きな戦力維持をプラスに捉えているだろうが、この間、ほかの選手は戸惑いも感じていただろう。これで今シーズンも34人という大所帯のチームでJ2リーグに挑むことになったが、始動日からトレーニングウェアを着てグラウンドでチームを見守る内藤直樹新強化部長が昨年の苦い経験を生かして個性豊かな選手たちのチームを側面から支えてくれることを期待している。

 8日目の練習からはこれまでの4-4-2のフォーメーションから3-4-3を採用し練習を開始した。ここまで3バックでの練習は行っていなかったが、リカルド監督は「我々の戦い方のオプション。それが必要となったタイミングで使えるように準備をしている」とし、キャンプ最終日に行われたジュビロ磐田との練習試合にも新フォーメーションで挑んだ。

 1本目を3-4-3、2本目以降を4-4-2として戦い、1本目では右ウイングバックの吉田が高いポジションを取り、シャドーのFWカルリーニョス・ジュニオに空いたスペースを使わせることを狙っているようだったが、そこはまだ機能していなかった。それでもその狙いからの展開でMF白崎凌兵がPKを獲得して先制点をもたらし、また追加点も今シーズンからの戦術の1つとして取り組んでいる高い位置からのプレッシングにより磐田のパスを引っかけて攻め切りゴールを奪い、ここまで取り組んできたことで結果に結び付けた。

 また2ゴールともにFWディサロ燦シルヴァーノが決めたが、昨シーズンはキャンプ前の怪我で出遅れ、そのままなかなか出場チャンスもなく、シーズン途中でモンテディオ山形へ期限付き移籍をし、そこで結果を残した。このオフにはJ1強豪クラブからオファーがあったようだったが、サンタナの流出が現実的ななか、クラブはディサロを攻撃の中心と考えていたと思われる。

 そのサンタナが残留したことによりディサロの立場はどうなるのかを心配したが、ここまで自ら結果を残し、個人的な今シーズンの目標は「得点王になること」と堂々と宣言している。また1年で昇格するためには「1人1人がキャプテンのつもりでリーダーとしての意識や覚悟を持つ選手がたくさん出てくることが必要」と、チームを引っ張る意気込みも語っていた。

 ディサロの活躍に刺激受けてか、2本目に出場したサンタナも「エースの座は渡さない」とばかりのゴールを決めてアピールした。契約更新が発表されたあとのインタビューでは「クラブが求めた(違約金の)金額と他クラブからの金額が合わなかった」と、オファーがあり移籍の可能性があったことは認めていたが、鹿児島のスタジアムにも掲げられた自身の横断幕「Mue Goleador REI SANTANA(俺の点取り屋 王様サンタナ)」を見て「こういうサポーターがいるから自分はここに残留することを決めた」と清水に残ることを決断した要因の1つにサポーターの存在も挙げていた。またサンタナも「J2でも得点王になる」と話しており、ディサロとの得点王争いになれば目標の1年でのJ1昇格は確実なものになるはずだ。

下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング