【W杯】日本の成長と限界…ベスト8に届かない理由 日本代表OBが指摘「正直に言わなければいけない」

「いい守備からいい攻撃」が通用することは今大会を通じて証明したが…

 森保監督は「いい守備からいい攻撃」というのを何度も言い続け、チームのコンセプトとしてやってきた。その結果、W杯優勝経験国のドイツやスペインという強豪国と同じグループ入りながらも見事にグループ首位通過を果たして見せた。このグループを突破できたのは日本の成長と言っていい。その原動力になったのは、間違いなく「いい守備からいい攻撃」というスタイルだった。

 その一方で、「いい守備からいい攻撃」の限界が見えた大会でもある。このスタイルは基本的に、相手が主導権を握る展開がベースだ。ドイツやスペインを撃破できたのも、「いい守備からいい攻撃」が上手くハマったからであり、それは大きな成果。「いい守備からいい攻撃」が通用することは今大会を通じて証明した。それでもあと一歩ベスト8には届かなかった。

 日本がワンランク上を目指すならば、「いい攻撃からいい守備」のスタイルも身に付けなければいけない。つまり強豪国の戦い方だ。今の日本に欠けている部分であり、ベスト8に届かない理由でもある。

 日本がさらにステップアップするには、「いい攻撃からいい守備」のスタイルへいかにシフトするか。あるいはシフトしないにしても、その戦い方が時間帯によってできるようにならなければいけない。

 その点で進歩しなければ、「ここで絶対点がほしい」という場面で崩し切れず、あと一歩で勝ち切れずに涙をのむ大会が続くことになるのだろう。「いい守備からいい攻撃」と「いい攻撃からいい守備」、この2つのスタイルは似ているようで全く違うものだ。

 カタールW杯では明確な成果と課題の両方が見えたなか、日本サッカーの将来を考えれば大きな財産になったように思う。

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金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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