【W杯】今大会で“最も好ゲーム” 迫力の90分、ブーイングなきスタジアム…ベルギー対カナダで感じた勝負の真理
【カメラマンの目】相手の長所を消すのではなく、スタイルを突き通すサッカーが展開
サッカーは選手、スタッフ、レフェリー、記者・解説者、フォトグラファーなど、それぞれの立場から見える世界がある。22歳の時からブラジルサッカーを取材し、日本国内、海外で撮影を続ける日本人フォトグラファーの徳原隆元氏が、カタール・ワールドカップ(W杯)を現地で取材。ファインダー越しから見えた光景を独自の視点からお届けする。
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大会3日目でアルゼンチン代表が敗れ、続いて日本代表がドイツ代表を撃破する話題性の高い結果が記録されているW杯だが、4日目までに撮影した5試合のなかで最も好ゲームだったのがベルギー代表対カナダ代表だ。この試合は勝利のために相手の長所を消すのではなく、自分たちのスタイルを突き通すサッカーが展開され迫力の90分間となった。
ベルギーはFWエデン・アザールを中心に選手がボールを持つと、04カーのように一気に加速を上げてカナダ陣内に侵入。爆発的な推進力でゴールを目指す。対するカナダはパスサッカーを展開。手数をかけずシンプルでスピードあるサッカーでベルギーに対抗した。
本来、勝利のためには駆け引きは不可欠だ。しかし、このゲームはチームバランスや打算は二の次となり、お互いが自分たちの力を単純にぶつけ合うことに終始した。なによりピッチに立つ全選手の運動量が豊富で、休むことなく攻め守った。この相手がどうするかではなく、自分たちがどうするかを第一に考えたサッカーは、勝負における真理なのだと思う。負けのリスクに尻込みすることなく、肉を切らせて骨を断つ激しいサッカーは、ピッチレベルからファインダーを通して見ていて迫力満点だった。
そして、スタンドの雰囲気も好勝負を後押しした。単純に自分たちが応援する側が攻め込めば歓声が沸き、ピンチを防げば拍手を送る。ブーイングなどなく声援もシンプルで気持ちが良かった。
試合はFWミシー・バチュアイのゴールでベルギーが勝利。特別に驚く結果ではない。しかし、だ。人々の予想を覆す結果は注目を集めるが、そうした影でも好勝負は確実に生まれている。
(FOOTBALL ZONE特派・徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)
FOOTBALL ZONE特派・徳原隆元 / Takamoto Tokuhara
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。