闘莉王が「ずっと心の支えだった」と回想 引退試合に豪華メンバー集結、阿部勇樹はなぜ誰からも慕われたのか

槙野智章が明かした天皇杯決勝前夜のエピソード「なかなかできない」

 また、昨季まで浦和でチームメイトだったDF槙野智章は、阿部氏の現役ラストゲームであり最後のタイトルとなった天皇杯決勝の前夜にあった、負傷を抱えたMF柴戸海とのエピソードを披露した。柴戸が決勝への出場が危ぶまれる状態で、メンバー外の予定だったチームキャプテンの阿部氏が急遽、前泊していたホテルに呼び出される事態になっていたという。

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「監督もメディカルチームも状態をみて、これはできないなと。本人も明日はできないですと言った時に阿部さんが、自分はこれまでチームのために、これだけ足が痛い時も戦ってきた。こんなことで決勝に出られないのは悔いが残るし、『お前がチームの核なんだからやれ』と。それで彼は決心がついた。自分の引退が決まって最後の決勝戦に出たい気持ちがあるのに、最後に『お前出ろ』と投げかけるのはなかなかできないですよ。チームを最優先してこの選手が育つとか、将来の浦和を背負うと考えて行動する」

 この決勝戦では、後半アディショナルタイムに柴戸が放ったシュートを槙野が頭でコースを変えて決勝点になっていた。試合前夜の一幕がなければ、あのゴールは生まれなかったかもしれない。

 槙野は「それを自分で言わないのもすごい」と言って笑ったが、阿部氏の誰からも信頼される人間性とキャプテンシーがあってこそ、引退試合にもスケジュールを調整してサッカー仲間が集まり、そして出場が叶わなかった多くの仲間から試合前の時間に収まり切るかというほどのビデオレターが送られてくるような関係性が生まれたのだろう。目立たなくとも、確かな存在感を発揮する阿部氏の人柄が多くの場面で垣間見える1日になっていた。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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