「W杯を分かっていなかった」 呂比須ワグナーが夢のフランス大会で後悔した出来事は?

中山雅史はジャマイカ戦で日本史上初のW杯ゴールを決めた【写真:Getty Images】
中山雅史はジャマイカ戦で日本史上初のW杯ゴールを決めた【写真:Getty Images】

呂比須にとってのW杯は「僕の人生を変えた」

 締めくくりとして、呂比須に聞いた。あの1998年のW杯は、彼の人生において、何を意味するのか。

「僕が選手として夢見ていた、すべてを意味する。W杯は僕の人生を変えた。もっと尊重されるようになったし、国際的にも認知された。一般の人たちにももっと知られるようになった。金銭面でもよりいい契約に結びついた。

 試合中は、それがW杯だというのも忘れるほど、必死なんだ。でも、記者会見などに行くと、W杯とはこれほど多くのメディアがいて、世界中の人たちが見ているものなんだと実感した。そして大会が終わると、W杯前とは違った人生があることを知る。

 僕にW杯出場のチャンスをくれた日本には感謝しかない。僕は今も監督業を続けていて、雇用が必要だから(笑)ブラジルにいるけど、最初にチャンスが訪れたら、日本に戻りたい。そして、人生の最後のチャンスまで、日本のみんなと一緒に戦いたい。それが僕の願いだよ」

(文中敬称略)

[プロフィール]
呂比須ワグナー/1969年1月29日生まれ、ブラジル出身。サンパウロ―日産自動車―日立/柏―本田技研-平塚―名古屋―FC東京―福岡。J1通算125試合69得点、J2通算19試合6得点。1997年に帰化し、翌98年のフランス・ワールドカップに出場した日本代表メンバーに名を連ねたストライカー。指導者に転身後は、ブラジルのクラブを中心にJ2アルビレックス新潟の監督も歴任した。

藤原清美

ふじわら・きよみ/2001年にリオデジャネイロへ拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特に、サッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のテレビ・執筆などで活躍している。ワールドカップ6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTubeチャンネル『Planeta Kiyomi』も運営中。

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